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おまけエピソード3―④side:帯刀

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見るからに結婚式二次会から流れて来たってのが分かるフォーマルを纏っている男二人がトイレ前の壁に凭れながら話し込んでいる。


「そんなに可愛いかぁ?」

「まぁ、すんげー可愛いって訳じゃないけど、可愛いんじゃない?俺的には全然有りっちゃ有り」

「俺的にも有りだけど、どっちかと言えば、凛香って子のがタイプ」

「バカ、凛香ちゃんはカズの女だろ。手ぇ出したら後が怖いだろーが。俺は真央ちゃんだなぁ…」


話の中に凪と真央という名が出てきた事で、男達が凪等と同席している連中だと確証を得た。

あわあわしている店員に「もういいです、彼等に聞いた方が早い」と見切りをつけ、カウンターから離れる。


「凪って子も悪くねーけど、狙うならそっちだよな。なのに斗真の奴、端から凪って子狙いじゃん」

「オレンジジュースをスクリュードライバーにすり替えて飲ませてたっぽいよ。しかもウォッカ多めの」

「マジかよ……ヤベーじゃん……そこまでするか?てか、ジュースと酒の違いに気付かないもん?」

「さぁ……」


今の発言が本当なら、凪の泥酔状態に納得がいく。

随分と悪どい真似をしてくれたもんだ。

一歩間違えれば犯罪だろ。


「斗真の奴、女にかなり飢えてるもんな」

「あーいう地味で大人しめな子が一番落とし易そうだからな。そりゃ血眼になって落としに掛かる訳だ」


様子を窺いながらそっと彼等に近付く。


「けど、あの子男居るらしいじゃん?」

「つっても、あーいう子の男なんかどうせ大した男じゃねーだろ。寝取っちまえば簡単に靡いちゃうんじゃねーか?」


どうして酔っ払いってのは、こんなにも声がデカいものなのか。

お陰でゲスい会話の内容も、汚い遣り口も全て把握する事が出来た。


「こ~んばんは~」


何一つ可笑しい事なんかない。

寧ろ、怒りで気が狂いそうになっている上、腸が煮えくり返っている。

にも拘わらず、それを表面に出さずに愛想良く笑って男達の前に立った。


「……は?」


男達は怪訝そうな顔をする。

そりゃそうだ。

いきなり見知らぬ男に馴れ馴れしく声を掛けられれば誰だって警戒する。

そんな奴等にわざとらしい笑顔を貼り付けて言ってやる。


「悪いねぇ、大した男じゃなくって」


俺の言葉に驚いたように目を見開く、小汚ない面した男達。

はっきり言って、こんな奴等に大した男じゃないとか言われる筋合いはない。


「ねぇ、俺の可愛い凪はどこ?案内してくれない?」




常日頃から思ってる。

何度か注意したにも拘わらず、凪は本当に危機感がなさ過ぎる。

隙だらけで無防備で………危なっかしいにも程がある。

そんなんだから、悪い男に付け入る隙を与えてしまうんだ。

酔い潰れているのをいい事にホテル連れ込まれて、好き勝手されて……

最悪ハメ撮りとかされた挙げ句、それをネタに脅迫される事だってあるかもしれない。

最終的に傷付くのは自分だってちゃんと分かってない。

気心知れた仲ならともかく、初対面のよく知らない男達と飲むんだったら、しっかり警戒しといてくれないと。

これは説教必至な案件だ。

下手すりゃまた泣かせちゃうかもしれないけど、そんな事気にしてられない。

キツいお灸を据えてやるのも彼女の為だし、俺の気が済まない。



……取り敢えず、斗真とかいうゲス野郎は数発殴っとくのがベストか。

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