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おまけエピソード3―③side:帯刀
しおりを挟む「どちらに………って、凪に言われた通りsourireって店の前まで迎えに…」
真央と名乗った女が『えっ……』と声を出す。
『何でそんな所にいるんですか?ていうか、どこですか?それ…』
今度はこっちが「えっ?」と声を出す番で…
「どこですか………って、二次会の会場になってる店でしょ?」
『いや、違いますよ。確かそんな名前じゃなかった筈…』
「………えぇ?」
どうやら凪が間違えたらしい。
時々やらかす凪のうっかりに、しょうがねぇなぁ……と思いながら「で、今どこに居るの?」と問えば、繁華街のカラオケ店にいるとの事。
『あの、凪なんですけど……』
言いにくそうに切り出した凪の友達。
その歯切れの悪さに不安を覚える。
「…………凪がどうしたの?」
『……私達が知らない間に結構な量飲んだみたいで…』
聞けばかなりの泥酔状態との事。
『普段のあの子は、自分の適量を弁えてるから飲み過ぎるって事はないんです。なのに今日はどうしてだか……もう呂律は回ってないし、一人じゃ歩けないような状態で…』
凪の友達が早口で状況説明をする。
『見かねた一人の男の子が家が同じ方面だからって、タクシー相乗りで送ってくれようとしたんだけど………』
「………え…」
それを聞いて血の気が引く。
「何そいつ………凪を持ち帰ろうとしたわけ?」
『いや、親切心か下心かは………ちょっと分からないです』
凪の友達は『けど…』と続ける。
『その男の子が凪を気に入ってるっぽい事は確かです』
「…………」
俺にはどう考えてもそいつに下心があるとしか思えない。
「で、凪は?今一緒に居るんだよね?」
念の為確認すると『はい』と答えが返ってきた。
少しだけ安心した。
『タクシーに乗せようとしたら、凪が遼くんが迎えに来るから……って、乗るのを拒否して道路に座り込んじゃったんです』
「……それで?」
『その場で一人で待たせる訳にもいかなかったんで、一緒に三次会のカラオケ店まで……迎えに来てやってくれませんか?』
言われなくてもそうする。
「これから急いで向かうよ」
『お願いします』
「こっちからもお願い……凪から目を離さないでくれる?」
『それは勿論。お待ちしてます』
通話を終えてからすぐにギアを入れ替えた。
無人の店の駐車場でUターンした後、アクセルを踏み込み、速度を上げる。
今までこんな急いだ事あったっけ?なんて、自分でも驚く程酷く焦ってた。
凪が泥酔状態。
そんな状態の彼女を狙っている男がいるってだけで、心中穏やかでいられない。
危うくその変な男の手に落ちる所だったってのが余計に腹立たしい。
真央とかいう凪の友達が目を光らせてくれているとはいえ、彼女の無事な姿を見るまでは完全に安心出来ない。
「……くそっ、またかよ」
急いでいる時に限って赤信号が行く手を阻む。
青に変わったら変わったで、悠長に横断している奴が左折の邪魔をする。
気ばかり急っても仕方がないのに、苛立ちは募る一方。
一方通行の標識に狭い道での迷惑な路駐、使えないカーナビ……
見るもの全てが敵に思えてしまう程、気持ちに余裕がなくなっていた。
凪の友達から聞いたカラオケ店は、土曜の夜とあって、結構な客入りだった。
そんな時にレジの店員がネームタグに若葉マークの付いたおばさんの見習い店員だとは、何という間の悪さだろう。
カウンター前で数組が案内を待っている。
今かなりテンパってるんだろうな……等と思いながらもたつく店員を冷ややかに見詰める。
「すみません、人を迎えに来たんですけど、団体が利用してる部屋ってどこですか?」
凪がどこにいるか聞こうと声を掛けると「え、えぇ?」と、更にテンパる店員。
「しょ、少々お待ち下さいぃ…」
他の客は若干迷惑顔。
そんな時だった。
「斗真の奴、よっぽど凪って子の事気に入ってんのな」
「だな。傍から離れねーもん。まだテイクアウト狙ってんだろ?」
不意に彼女の名が耳に入ってきた。
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