前向き時々後ろ向き

江上蒼羽

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突然の入院①

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病院からの電話に応対した旦那。

密かに聞き耳を立てていると、旦那の声は固くて緊張が汲み取れた。

抑揚のない声で淡々と電話の主に相槌を打つ旦那の様子から、子供達は不安げに私の顔色を窺ってきた。

かといって状況が分からないのにテキトーに「大丈夫だよ」なんて言える筈もなく、その場に立ち尽くしたまま、旦那が通話を終えるのをじっと待った。


「何か、明日から入院しろって」


不機嫌そうに旦那が言った。

「え、入院?」と聞き返す私に、旦那が「よく意味分かってないけど」と前置きした上で説明してくれた。

9月26日の検査で、何かの項目で陽性が出たので、もう少し詳しく検査しながら治療しましょうとの内容。

通院だと難しい治療だから入院して欲しいそうな。

入院期間はおおよそ、2週間~最長で1ヶ月。

長いし、入院なんかしたくないと旦那はむくれてた。

子供達の表情は曇り、私は私で旦那に何て声を掛けるべきか分からなかった。




翌日、30日の月曜日。

職場のリーダーに事情を話し、休みを取らせて貰った。

旦那と一緒に病院へ行き、入院を勧めた医師から話を聞く事に。

ところが旦那は私を待合室に残して1人で診察室へと入っていった。

いつも旦那から医師から言われた内容を又聞きする形だったので、直接医師と話がしたかった私は置いて行かれて腑に落ちなかった。

ネットで色々調べたけど生存率とはどういう事か、本当に治らないのか?等、聞きたい事が沢山あった。

旦那としては、医師から直接話を聞く事で、私が泣いたり取り乱したりするんじゃないかと懸念しての心遣いだったらしい。

まぁ多分、旦那の心配通り、泣いてたと思うけど。

入院に際しての書類を受け取り、荷物を取りに一旦帰宅。

入院の手引きを見ながら必要な物を用意し、大荷物抱えて病院へと舞い戻った。

通された部屋が4人部屋である事に旦那は不満を漏らしていた。

それ以上に怒っていたのは、2週間~1ヶ月と聞いていた入院が最低でも1ヶ月、長くて2ヶ月と伸びてしまった事。

娘LOVEな旦那に1ヶ月以上の娘断ちは精神的にキツいだろうな……と思う。  

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