その声は媚薬.2

江上蒼羽

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未来の為に③

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週末

現在、お洒落なカフェでほんのり苦味の効いたラテとフルーツとアイスクリームがふんだんに盛り付けられた豪華なワッフルとにらめっこしている。


「遠慮しないで食べて」


向かい側の席にはニコニコと微笑む彼の姿があり、フォークを握ったまま固まる私に早く食べろと優しい圧力をかけてきている。


「……いただきます」

「チェックインにはまだ早いから、少しこの辺り散策してから旅館に向かおうか」

「…………」


どうしてこうなったのかさっぱり分からないのだけれど、何故か私は竜生と県を二つ跨いだ先の温泉が有名な観光地にいる。

竜生の部屋でまったりのんびり過ごしてそのままお泊まりの予定でいたから、今のこの状況を全く理解出来ずにいて、冷静ではあるものの、頭の中は【?】だらけだ。


「瑞希と旅行……来てみたかったんだ」


頬を染めて嬉しそうに言う彼は、前回の電話で私が言った事と自分が真逆の事をしている自覚は無さそうだ。


「………私、そこまで甘いの好きじゃないから竜生も少し食べてくれる?」

「あ、そうだっけ?ごめん!半分こしよっか」


私、仕事が決まるまで節約したいって言ったよね?

こんな1000円以上もするワッフル食べてる余裕ないんだけど……と言いたげに彼を睨んで見ても、やや鈍感な所がある竜生には伝わらない。


「あー……これ、後でもたれる系かも」

「結構………というか、かなり甘いね。私半分も食べ切る自信ないよ」

「え……ハーフサイズにしとくんだった」


情けなく「しくじった」と頭を抱える彼は相変わらずイケボで、朝からずっと聞いていても飽きない処か、このままひっきりなしに喋り続けて欲しいくらいだ。

電話で聞く声もいいけれど、機械を通さずに直に耳に入る声は最高で正気を保つのがやっとな程。

早く周りの雑音から逃れて彼の声を独り占めしたいとか、やらしい事を考えている私は本当に変態だと思う。

いやいやそれよりも、何故今温泉なのか。

知りたいのに、聞いてもやんわりとかわされるだけでずっとムラムr……いやモヤモヤしてる。

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