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面会拒否、とな……?⑤
しおりを挟むすぐに女性の後を追った。
「あのっ」
玄関で折れそうな程高いヒールの靴を履いた彼女は、私の方へ振り返ると口角をきゅっと引き上げる。
「私、タツの従姉妹です。お互いの母親が姉妹で。誤解しないでくださいね」
「そう、なんですか」
私が今ホッとしたのを見逃さなかった彼女は盛大に吹き出す。
「あ、やっぱり勘違いしてた系です?ずっと表情に出てたから、絶対誤解されてる、やだなぁーって思ってたんですよ」
「………そんなに出てました?」
「出てた出てた。眉間にシワ寄せて目つり上がってました。今と全然表情違うすっごい怖い顔してました」
自分では全く意識していなかったのに、思いっきり顔に出ていたとは。
「……………すみません」
謝る私に女性は「いいですよー」と、明るく言う。
「叔母に頼まれて、勤務先が近いから仕事帰りにタツの様子見に来てただけなんですよ」
だったら最初にそう言ってよ………という言葉はすぐさま飲み込んだ。
「今の今まで、私二股かけられてるの?とか、誰よこの女!とか心配してたんじゃないですか?」
「いや別に……」
否定はしたけれど、内心がっつり思っていた。
「いいのいいの否定しないでも。そもそもヘタレなタツに二股出来る程の器用さは備わってませんから安心していいですよ」
久世さんを擁護しつつも、何気に失礼な言葉を吐く女性。
身内贔屓もあるのかもしれないけれど、昔から彼を知っている人が言うならば、その言葉には信憑性がある。
彼が不誠実な人じゃなくて良かった。
久世さんの従姉妹の女性は、私の顔をまじまじ眺めてくる。
「あの顔で面食いとかウケる。じゃ、タツの事頼みますね」
「え?あぁ……はい…」
玄関のドアが閉まるのを見送って久世さんの元に戻ると、彼は布団に潜り込んでいた。
「久世さん」
「…………」
蛹のような状態の彼は一言も発しない。
「勝手に押し掛けてごめんなさい」
「…………」
それどころか微動だにせず。
「……風邪どう?」
「…………」
「熱どれくらい?」
「…………」
「ここに来るまでちょっと迷っちゃって……はは」
「…………」
「それにしても、あんな素敵な従姉妹の方がいるなんて驚いちゃった」
「…………」
テキトーに話題を探して話し掛けてみたものの、全く反応がなく、どうしたものかと暫し悩む。
やはり、突然の訪問は彼にとって迷惑だったのだろう。
「………私そろそろ帰るからゆっくり休んで。差し入れ良かったら食べてね」
持っていたコンビニの袋をテーブルの上に置こうとした瞬間
「ま”っ……か”え”ら”な”い”で”っ!!」
酷く嗄れた声が私を引き留める。
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