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ご機嫌な彼女④
しおりを挟む攻撃が効かなくて意地になっているのか、瑞希は一向に黒魔導師を後退させない。
『ぅあっ……!』
『ぐっ……』
ゲームの中での事といえ、敵からの攻撃に懸命に耐えている黒魔導師がどんどん可哀想になってくる。
「瑞希……何だかリンチみたいで可哀想じゃない?」
見かねて口を出すと瑞希は画面から視線を離さずに「そう?」とだけ返してきた。
「そもそも魔導師系は後方から支援するのが役割だし、前線にガンガン出ていくタイプじゃないと思うんだけど……」
瑞希には瑞希なりの考えがあるのかもしれないが、自分が担当したキャラが痛め付けられているのを見るのは心が痛む。
「その調子だと、ステージクリアまで相当時間がかかるんじゃないかな?」
「…………うん……そう、なんだけどね……」
歯切れ悪く答える瑞希は、一応俺の言いたい事を理解してくれているらしい。
が、聞き入れる気は更々ないようで、集団リンチからキャラを救う素振りを見せない。
『ぅあっ……!』
もう好きにしてくれ………とアドバイスするのを諦めた時、瑞希が注視していた画面から視線を外してこちらに顔を向ける。
「………攻撃を喰らってる時の声、すっごい色っぽくて堪らないの」
突拍子もない言葉を受け、思わず「えぇ?」と聞き返す。
「特に今の声………不意打ちで乳首攻めした時に久世さんが漏らす声みたいでエロ過ぎる……」
「んなっ……」
満面の笑みでそう語る瑞希だけど、俺は言葉を失って口をあんぐり。
「もうゾクゾクが止まらない……ふふ…」
俺も今違う意味でゾクゾクしている。
瑞希の発言内容とその過激さに。
もっと別の例えがあったと思うのに、よりによって乳首攻めとか。
しかもそれを女性が恥ずかしげもなく口にするなんて。
そしてそして、俺って瑞希の前でこんな情けない声出してたんだ……と、ショックが幾重にも重なって、目眩さえ覚えた。
「だからわざと痛め付けてるんだ」
「そ、そっか……はは……」
返す言葉もなく、ただ笑うしかない。
「気になるようならイヤホンしながらプレイするね」
「あ………いや…」
「いつも持ち歩いてるんだ」
瑞希はバッグから取り出したイヤホンを耳に装着してゲームを再開する。
「あ………ダイレクトにイケボが耳に届く……最初から付けとけば良かった。あー最高!」
「……………」
ご機嫌で携帯を操作する瑞希の隣で俺は、声の録り直し出来ないかな……なんて考えながら静かに項垂れるしかなかった。
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