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ご機嫌な彼女②
しおりを挟む前回の経験から瑞希に隠し事が出来なくなった為、正直に今回のゲーム製作参加の事を報告すると、彼女は大々的に喜びを表現したりしなかったけど目はキラキラと輝かせていた。
そして、簡単なパズルゲームしかプレイした事がないという彼女が俺の声を目当てに挑戦してみたいと言い出した。
『私の力が必要か?……ならば、それに見合った対価を頂こう』
俺が声を当てたのは、主人公一行と行動を共にする金にうるさい美形黒魔導師役。
『私の力が必要か?……ならば、それに見合った対価を頂こう』
パーティー編成画面でキャラをタップすると発せられるがめつい台詞からして、自信家で強欲な性質がよく表現されている。
容姿も性格も自分とは真逆のキャラクターではあるものの、我ながらキャラと自分の声がピタリと嵌まっていると自画自賛。
何より、自分が当てた台詞を発しながら動くキャラを見て感慨深いものがある。
『私の力が必要か?……ならば、それに見合った対価を頂こう』
それはそうと、さっきから同じ台詞ばかり聞いているような気がする。
『私の力が必要か?……ならば、それに見合った対価を頂こう』
「…………」
『私の力が必要か?……ならば、それに見合った対価を頂こう』
口角が引き上げ、恍惚とした表情で画面タップを繰り返す瑞希に何となく恐怖を抱いた。
『私の力が必要か?……ならば、それに見合った対価を頂こう』
「な、何回聞くつもり?」
恐る恐る問い掛けてみると、瑞希がゆっくりこちらに顔を向ける。
「ふふふ……何度聞いても最高。ずっと聞いていたい」
「そう、なんだ……」
喜んでくれているのは嬉しいけど、声の主が隣に居るというのに、この反応は何とも複雑。
やはり顔が良いのが前提なのか。
「と、とにかく、レベル上げないと次進めないよ?」
「あ、それもそうか……」
流石に同じ台詞を何回もリピートされるのはちょっと耐えられない。
自分の声だけど………いや、自分の声だからこそ恥ずかしい。
弄ばれているみたいで。
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