その声は媚薬.2

江上蒼羽

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お食事会アフター①side:瑞希

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お食事会の翌日は、上條さん勝沼さん共に元気がなかった。

上條さんの取り巻きになりつつあるおばさま社員達も気に掛けているけれど、彼はぎこちなく笑うだけ。

上條さんについては私の発言が傷付けてしまったようだけれど、勝沼さんの方は恐らく島津さんと上手くいかなかったからだと思われる。


「なーんか、二人っきりになった瞬間からグイグイがっつき出して怖かったんですよ。伊原さんも上條さんも全然戻って来ないし……」   


島津さんがあっけらかんと言う。


「私、かなりの面食いだから上條さんクラスじゃないとってはっきり言わせて貰っちゃいました。いやぁ、こういう時同じ職場だと気まずいですねー」


なんてケラケラ笑う島津さんを見て、強いなと思った。

結果、上條さんと勝沼さんには何の収穫もなかったようだ。





それから1週間後、私はカフェで久世さんとお茶を楽しんでいた。


「出張から戻って来た上條さんの様子がおかしいんだよね」


そう切り出した後、コーヒーを美味しそうに啜る久世さんは、数週間前とは別人のように変化していた。


「上條さん、凄く自信に満ち溢れた人だったのに、元気がなくて……」


声を聞けるだけで良いと言っておきながら、上條さんとの一件から無性に久世さんに会いたくなってしまい自らデートを提案してみたのだ。

そこへ現れたのは、少し前までの野暮ったくて冴えない姿が嘘みたいな、爽やかな好青年。

厚め前髪のもっさりヘアだったのがバッサリ切られてスッキリとした印象になり、半分程隠れていた目元が露になった。

荒れ気味だった肌は、丁寧なスキンケアでもしたのか、艶やかでキレイになっている。

だれた印象のフェイスラインも以前より引き締まった感じがする。

何より初めて見た私服姿がまた新鮮で。

私が知っている久世さんとは違う人みたいでドキドキさせられている。


「心なしか口数が減ったような気も―――…」
「格好良い………」


久世さんの話を遮る形で呟いた私に、彼が「え……?」と目を丸くした。


 「上條さんの話は本気でどうでもいい………それよか久世さん、凄く格好良くなりましたね」

「え、えっと……」


私が舐めるようにジロジロ見ると、それに照れたらしい久世さんが顔を背けた。


「髪型、そっちの方が断然良いです。似合ってる。凄い好き」

「あ、ありがと……」


それとやっぱり声が良い。

話している内容は癪に障るけれど、相変わらず声は素晴らしい。

聞いているだけで気分が高揚する。

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