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【13】
しおりを挟む業務終了後、待ち構えていたように久世さんが現れ、押し込まれる形で車に乗せられた。
向かった先は全席個室が売りの洋食レストラン。
席に着いた途端に久世さんが私にメニューを差し出しながら言う。
「ここは自分が持たせて頂きますので、お好きな物を好きなだけ頼んで下さい」
久世さんからの圧を感じながら「自分の分は自分で払います」と伝えると彼の表情が曇る。
「………そうは行きません。俺に出させて下さい。この国産和牛のステーキセットはどうですか?」
「………値段見て言ってます?」
「値段は気になさらないで下さい。アルコールも頼みますか?このワインとか……」
「いやいやいや、値段凄いですから!」
久世さんはかなり高額なメニューを私に推してくる。
その時点で彼の目的は分かっていた。
料理の注文を終えると、そこから長い長い沈黙が訪れた。
時折個室の外から足音と話し声が聞こえるだけで、あとはずっと無音。
チラリ……と向かい側に居る久世さんの様子を窺うと、彼は俯いたままテーブルの端を一点見詰めしている。
お通夜みたいな雰囲気に耐え切れず「………あの」と口を開くと、久世さんが大きく身じろいだ。
「私、誰かに言ったりするつもりないですから」
久世さんは顔を上げずに「……何を?」と聞き返してきた。
その声は僅かに震えていて、恐る恐る出している感じだ。
いつも聞いているリュークの自信満々な声とはまるで正反対。
「久世さんがリュークだって事……」
弾かれたように久世さんが顔を上げる。
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