ヒロインになりたい!!

江上蒼羽

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にゃんてこった!!⑦

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すかさず高瀬さんが「友達です」と訂正する。


「そうなんですね、失礼しました。お二人が良い雰囲気だったからつい…」


笑いながら逃げるようにその場を離れる店主。

更に余計な事言い残して行かないでよ!と怒りに震える。


「テルにゃんは可愛いなぁ~…」


微妙な空気を堪え忍ぶように、ひたすらテル子に夢中なフリ。


「まぁ、男女ペアで来店してる時点でそう見えちゃうだろうね」


高瀬さんのぼやきに「確かに」と返す。


「でも嫌じゃないんですか?私が高瀬さんの彼女に間違われるの」


心の中で、私は嫌だけどな……と呟く。

高瀬さんは「別に?」とあっけらかんと笑う。


「逆に輝子ちゃん位が一番丁度良いし」

「…………は?」


丁度良いって何が?

意味分かんないんだけど………と理解に苦しんでいると、バッグの中からけたたましい着信音が鳴る。

もしかして……と恐る恐る携帯を拾い上げる。


「あー……だよねぇ…」


もしかしなくてもな相手に恐怖を覚えながら、通話表示をタップした。


「はい、もしもーーー…」
『今どこ?!どこなの?!どこに居んのよー?!!』


思わず「ヒィッ」と携帯を耳から遠ざけた。


『信じらんないあの男!!輝子達と後で合流するとか何とか嘯いて、甘ったるい恋愛映画を観せようとしやがって!!』


凛ちゃんが怖い、怖過ぎる……


『どうせ観るならアクション映画の方が良いわよ!』

「えっ………凛ちゃんそこ?」

『しかもしかも、隙あらば手を握ろうとしたり、肩を抱こうとしてきやがったのよ、あのゲス野郎!図々しい!』


あのイケメンのカズさんをゲス野郎呼ばわり出来るなんて、凛ちゃんはある意味格好良い。

私だったら喜んで手でも肩でも貸し出すのに。

いやいっそ、この清い体ごと差し出しても良いんだけど。


『どういうつもりなのか問い詰めて白状させたら、随分と卑怯な真似してくれちゃってさ。ねぇ、もしかして高瀬と一緒?』


ギクッとした。

いや、罠に嵌めたのは男性陣だし、私は悪くない。

だから正直に「う、うん……」と肯定すると、凛ちゃんの声にならない、叫びにも似たような声が耳をつんざく。


「今、高瀬さんがどうしても行きたいからと申されたので、猫カフェにおりまして……」

『アンタ馬鹿なの?ねぇ、馬鹿でしょ?!』

「あの、その………成り行きで…」

『人の好きな人とデートしてんじゃねぇぇぇ!!』


怒りで凛ちゃんがぶっ壊れてる。


「デ、デートだなんて、滅相もございませんぜ、旦那ぁ」


時代劇に出て来る調子こきの若造風に言って茶化そうとしてみたけど……


『ざけんな!ゴラァ!!』


ヤンキー張りのドスの利いた声に歯がカチカチ鳴った。


『男女が二人で猫カフェでドリンク飲みながら、猫と戯れる………立派なデート!しかも、相手は高瀬!最高のデートシチュエーションじゃないの!!』

「わ、私はそんなつもりなぞ一切ごじゃりませぬが……」

『ど~の口が言ってんの~?羨ましいったらないわ!私、猫嫌いだけど!』


猫嫌いなら良いじゃん……と思ったけど、口にするのは止めといた。

というか、デートじゃないし。

高瀬さんが相手なら尚更そう思いたくない。


『本っ当、腹立つ!』


私が凛ちゃんからの叱責を受けている間、高瀬さんは我関せずといった態度で猫をじゃらして遊んでいる。


「や、だからさ、凛ちゃん……」


高瀬さんが一緒に来て欲しいって言うからただついて来ただけなのに、何故私がここまで怒られなきゃならないのか分からない。

当の本人は呑気に猫と遊んでるから、もの凄く腹立たしい。

大体何で私が高瀬さんとデートしてる扱いになる訳?

しかも、男の人とデートした事すらない私にとっての初デートの相手がこの冴えない人なんて認めたくないっての。

ヒロインの初めてのデートの相手は、誰もが振り返る華やかなイケメンでなきゃ駄目なのに。


初めてのデートで何を着たら良いのか悩みに悩んで、つい気合いの入り過ぎた格好で登場したヒロイン。

その格好を見て、イケメンの彼は一瞬戸惑うも、いつもと違うギャップに萌え、惚れ直すって算段だ。

デートが初めてなら、手を繋ぐのも初めてで、手が触れただけで照れてしまうヒロインのウブさが彼をメロメロにさせる。

ドキドキ、キュンキュンの甘酸っぱさがデートには必要不可欠。

今の私はドキドキ、キュンキュンしてるか?

否、私の心はウンともスンともだ。

よって、結論から言うと、私と高瀬さんのこれはただの外出。

デートではないという事が説明出来る。

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