私は彼の恋愛対象外。

江上蒼羽

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子供以上大人未満④

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それから何回か真樹さんから着信があったけれど、とてもじゃないが、出る気分になれなかった。

彼女としては、理由もなく突然切られ、腑に落ちない思いなのだろう。

しかし、それ以上に俺の方が腑に落ちていない。

何故あの場で、同僚の砂川の名が出てくるのか…




「おい、青柳」


出社早々、神妙な面持ちの砂川の待ち伏せにあった。

奴が俺に何を言おうとしているのかは分かっていた。

だから先回りして言ってやる。


「お前の手付きの女なんか紹介するなよ」


砂川の目が大きく見開いた。


「最中に別の男の名前を呼ばれたら一気に萎える」


ばつの悪そうな顔で首の後ろ辺りを掻く砂川を置いて、大股で歩みを進める。

と、砂川が少し慌てた様子で追い掛けてきた。


「いや、手は出してねーよ。一度も。ただ、大学時代から一方的に慕われてて…」

「へぇ…」


砂川の言い訳を軽く流してエレベーターに乗り込む。

エレベーターは、出社時間とあって、すし詰め状態。

そんな中で流石に女の話等出来なかったのか、砂川は静かだった。




自分の勤める部署があるフロアに降り立った途端から、また奴の弁解が始まる。


「アイツとは本当に何もなくて。昔一度気紛れでピアスを買ってやったら勘違いして彼女面されたけど……けど、マジで何も」

「……それって、ピンクゴールドでパールが付いている?」

「んあ……確か、そんなやつ、だっけか…」

「なるほど」


彼女が頻りに触れていたピアスは、砂川からのプレゼントだった訳か。

きっと触れる度に砂川を感じていたのだろう。


「とにかく俺は、アイツの事、妹みたいにしか見てないから」

「…………」

「俺、結婚したい女いるし」


ここで全てに合点がいった。

砂川が俺に真樹さんを宛がった理由は、自分に想いを寄せている女の厄介払い。

失恋を引き摺っている男に引き合わせて上手くいけば誰も傷付かず、自分も安心して他の女と幸せになれる。

全てが丸く収まる……という目論見か。


「悪いが、彼女とはもう会うつもりはないよ」

「青柳考え直せよ。可愛い女だろ?お前にピッタリだと思うんだよ。一度の粗相くらい水に流してさ」

「いや、もう結構。いついかなる時もお前の顔がちらつくのはごめんだよ」

「ガキみたいな事言ってないで大人になれよ」


砂川の言葉を無視して、自分の席に着く。

そこで人知れず深い溜め息を吐いた。

時計を見ると、業務開始時間までまだ幾分猶予がある。

着いたばかりの席から立ち上がり、いつも息抜きをしている場所へと向かった。

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