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憧れの王子と急接近?!②
しおりを挟む約束の時間ピッタリになった。
まだ王子は現れない。
青柳のお兄さん、時間間違えて教えてないよな?なんて不安に思いながら、グラスの中身を減らしていく。
と、少し離れた席に座る同じ年頃の女の子達が入り口付近を眺めながらヒソヒソ話しているのが目に入った。
不思議に思って彼女等の視線を追うと、その先に居たのは、キョロキョロと店内を見回す王子の姿。
来た………!!
思わず、大きな音を立てて椅子から立ち上がる。
「こ、ここです」
沢山の視線を集めながら王子に向かって手を振る。
私に気付いた王子は、蕩けるような甘い笑顔を浮かべた。
もう、卒倒レベルの極上スマイル。
周りの女の子達もざわついている。
王子ファッションやマントの代わりにキレイめカジュアルな服を纏った王子がゆったりとした足取りで私の方に向かってくる。
周りの女の子達の羨望の眼差しが心地好い。
髪型もバイト先で見る時よりラフに崩してある感じ。
スーツの時も超絶格好良いけど、私服姿もヤバい、マジで。
「えっと………すあ、ちゃん?だっけ?」
「は、はいっ!!」
ニコニコと悩殺スマイルを披露する王子が私の向かい側に座る。
「すみません、無理言っちゃって………ありがとうございます」
王子登場に感激しながらメニュー表を彼に差し出す。
「何か飲みますか?あ、私一足先にレモンティー頂いてます」
メニュー表を受け取った彼は、何故かそれを元の位置に戻した。
えっ?と思っていると、彼は笑顔のまま言う。
「んーん、すぐに帰るからいらない」
「へ……」
………すぐに帰る?
王子の発言にポカーンとしていると、突然彼の顔から笑顔が消えた。
「あのねぇ、キミが俺に何を期待してんのか分かんないけど、取り敢えず前もって言わせて貰うね」
そう言って彼は、左手の甲を私に向かって掲げる。
その手の薬指には、シンプルなリングがピタリと嵌まっていた。
「………凄く、大切に想ってる女性がいるんだよねぇ」
「え……」
結婚指輪じゃなくて、ただのペアリングだと思いたい。
だけど、彼は間延びした喋りで残酷な事を言う。
「俺さぁ、精神的になよいから、ずっとその子に支えて貰ってたの。で、つい最近、その子が俺の子供を身籠ってる事が分かって………今度は俺が彼女の支えになる番なのよねぇ」
「………あ…」
目の前が真っ暗だ。
青柳のお兄さんが何度も彼は駄目だから……って困ったように言っていた理由が漸く分かった。
LINEで彼は結婚してるんだよって伝えてきたのも、嘘なんかじゃなくて事実だった。
「今日彼女の誕生日で、これから一緒にプレゼント買いに行く予定なのよ」
瞬きを忘れるくらい、王子の指に嵌められた指輪をガン見していた私の視界から、その対象が消える。
代わりに、今度はニッコリ微笑んだ王子と視線が絡む。
大好きなレイくんの大人バージョンの甘い微笑み。
だけど、目は全く笑ってない。
「だからさぁ、どこぞのクソガキと戯れてる暇はないわけよ」
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