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第3章 到達! 滴穿の戴天
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2年前、両親が亡くなって特別高速鉄道に乗ったときは慌てていた。
だからあまり電車での出来事を覚えていない。
今回は余裕があるのでじっくり観察することができる。
改めて見る、未来仕様の新幹線は格好良かった。
極圏高速鉄道のように先頭車両がまっさらでなく運転席が見える。
運転席の上あたりに耳のような出っ張り。
多分あれは風切り音を消す部位だろう。
ライトは4つついており、正面から見るとヒゲのように長い線。
まるで細目のキツネ顔。
だから俗称、白雪狐。
日本人らしい命名だと思った。
内装は極圏高速鉄道に近い。
謎樹脂の座席カバーに弾力のあるガラス窓。
床も音が響かない不思議仕様。
高級ホテルの客室かと思うくらいの雰囲気だ。
そのぶんお値段も高めで片道2万円強。
でも自販機のボトルが1.5倍の値段だからそんなに高くない、か?
インフレ率とかどうなったんだろな。
車内サービスのバリエーションも豊富。
時速400キロメートルを超えて流れていく景色も格別だ。
それだけでわくわくするし楽しい。
道中、沼津付近で富士山の雄大な姿が見えた。
笠雲が半分かかっており不可思議に見える。
レオンも感動して「これが美しさ世界一のフジヤマか」と口にしていた。
冠雪はなかったけれど、富士山のかたちは今も昔も人の心を掴んでやまない。
【白扇 倒ましに懸かる 東海の天】と俺が呟くとレオンはぽかんとしていた。
結弦がうんうんと頷いていたあたり、昔の詩も未だに理解されるようだった。
◇
東海州浜松市。
2210年現在は静岡県南部の大半を占める都市。
温暖化の水面上昇で浜松湖をはじめ天竜川河口部の平野の大部分が水没してしまった。
だが大惨事による寒冷化で、ふたたびその水没都市が姿を現した。
現在の市街地からそれらを見渡せることから、アトリット・ヤムと例えられるようになった。
結弦の実家はそんな眺望の良い丘の上にあった。
きっと大惨事前は海岸線に近い箇所だったと思われるそこは、周囲を蜜柑畑に囲まれている穏やかな土地だ。
静岡といえば茶畑、と思ったが気候の関係かあまり見つけることはできなかった。
秋も近いので色づき始めた蜜柑の黄色い実が印象的だった。
【なんだ兄貴。性懲りもなくまた皆伝の儀を受けに来たの?】
【帰りました】と玄関から呼びかける結弦に伴い、靴を脱いでお屋敷へあがったところで。
廊下にて第一声、不機嫌そうな蔑む言葉で出迎えたのは彼の弟。
結弦と同じ黒髪だが短くて坊主に近い。
高校野球選手のようにスポーツマンのような印象を受ける奴だった。
さわやかな雰囲気のはずなのにその侮蔑を含んだ表情が俺たちの心象を悪くする。
「・・・ただいま、嵐張。見てのとおり外国人の客人もいる。世界語で話してくれ」
【え? 嫌だよ苦手だし。兄貴のお利口に付き合う義理なんてない】
【・・・オレをどう言おうが構わない。彼らに失礼はするなよ】
【はいはい、相変わらず優等生な。それなら僕に相手をさせるな】
ふん、と鼻であしらうような仕草をすると、嵐張は奥へ引っ込んで行った。
結弦は仕方がないとでもいうような顔をしている。
言葉がわからないレオンもその歓迎されていない雰囲気は感じ取ったようだ。
「結弦、彼はお前の弟で嵐張というのか」
「はは、生意気でごめんなさい。折角、来てもらったのに・・・」
「この国では偏見をよく受ける。気にするな」
「・・・」
平謝りの結弦にレオンは気にしないと宥めている。
・・・あれが嵐張? 外見は一致したけど俺の知っている性格じゃねぇぞ?
ラリクエでは兄貴に好意的で協力的だったはずなんだが。
「そうだ、立たせてしまいすみません。まずは客間へ案内します」
結弦は俺たちを屋敷の奥へと先導する。
廊下はすぐに縁側となり、立派な日本庭園が視界へ飛び込んできた。
久しぶりに見たよ、とても懐かしい!
お白洲とか鹿威しとか石行灯とか。
こういうのって未来になると消えていくんだよな。
「こっちです。この離れの部屋で過ごしてください」
感動していたらすぐに客間へ到着したようだ。
障子を開けて中へ入ると畳の懐かしい匂いが鼻をついた。
うお、純和風だよ!
格天井だし、床の間があって掛け軸はあるし、砂壁だし、家紋っぽい模様が入った縁付畳だし。
下手な旅館よりも立派な部屋だ!
「これがニホンカオクというやつか。初めて見る」
「レオン、これ、純和風って言って伝統的なやつだ。しかも格式高いぞ、武士の時代に持て囃されたものだ」
「そうなのか。この草の匂いにも意味があるのか?」
しゃがみ込んで畳の感触を確かめるレオン。
そうだよな、外国人にとっちゃこの時代に純和風を探すほうが大変だろう。
こうした屋敷は天然記念物級になっているかもしれない。
実際、この世界で日本庭園や縁側を見たのはこれが初めてだから。
「はは、喜んでもらえて何よりです。部屋のことは武さんも詳しそうなのでお任せしますね。オレは家族に挨拶してきます」
「ああ、荷物を置いて落ち着いとくよ」
結弦が出ていくと俺は部屋の端に荷物を置き、座卓に添えられた座布団に座った。
レオンもそれに倣って荷物を置いて対面に座った。
「床に座るのだな。脚は重ねるのか」
「今は座りやすい格好で良いぞ。正式な挨拶のときは正座といって、俺みたいに座るんだ。普段はこんなふうに崩すと良い」
なんとなく正座していた脚を胡座に変える。
レオンもそれに倣って胡座にしていた。
「洋式だと靴のまま部屋に上がるけど、今も日本は靴を脱ぐのが慣習だ」
「ふむ」
「だからこの部屋の畳も寝そべっても問題ないくらい綺麗なんだよ。こんな感じでな」
俺は座布団を枕にして大の字になってみせた。
綺麗な木目の格天井がなんとも心地良さを演出している。
水墨画の掛け軸なんてよくこの時代に現存したな、と思ってしまうくらいだ。
「横になるなら柔らかいベッドの上のほうが良くないか?」
「畳は板と違って弾力があるだろ? 少し通気性もあるし心地良いんだよ」
「なるほど。・・・こんな手の込んだものを昔は手作りしていたのか。日本人の器用さは素晴らしいな」
畳のい草が編まれていることに感心するレオン。
やはりこういったものは外国人に刺さるんだな。
「ベッドといえば、お前は敷布団を知らないんだよな」
「シキブトン?」
「ジャパニーズ・トラディショナル・ベッドだよ」
俺は押入れを開けて布団を見せた。
ふわふわの敷布団と掛け布団が所狭しと収まっている。
レオンは興味深そうにそれらに触れて感触を確かめていた。
「この部屋を今はリビングルームとして使ってるけど、夜はベッドルームにするんだ」
「なるほど。狭い部屋がふた役になるわけだな」
「そうそう。こうして同じ部屋で落ち着いてもらうのが日本式」
この調子で床間や庭園についても軽く説明する。
レオンはほうほうと頷き、日本文化を味わっているようだった。
「お前は博識だな。自国の文化でも古いものは廃れてしまうものだろう」
「前にも話したけど親の影響だよ。レトロ好きだったんだ」
おっとまた不自然すぎたかな。
調子に乗って解説しすぎたと反省する俺。
久々の純和風が刺激的すぎたよ。
日本に来る外国人もこんな感じなんだろう。
「ところで武、先の嵐張のことだが」
少し落ち着いたところでレオンが切り出してきた。
「結弦は弟に嫌われているのだろうか」
「ああ、そうかもしれん。あの態度でわかるよな」
俺はレオンにさっきのやり取りの意訳を伝えた。
するとレオンは金色の眉を寄せた。
「結弦は我慢強い。俺たちに黙って無理をしていなければ良いのだが」
「レオン、お前は結弦から事情とか聞いてないか?」
「俺が彼から聞いているのは皆伝の儀を成し遂げたいという目標だけだ。家族の話は聞いていない」
「・・・そっか。なら本人に聞いてみよう」
「そうだな。俺たちで何か力になれそうなら考えよう」
また想定外に遭遇しているのだ。
今度こそ慎重にいこう。
そう自分に言い聞かせていると軽く障子を叩く音がして結弦が姿を現した。
「お待たせしました。昼過ぎ、13時から皆伝の儀を行います。おふたりには立会人をお願いします」
「思ったよりすぐにやるんだな。立会人は部外者の俺たちで良いのか?」
「ええ、同門の人間では駄目ということになっていますので」
「わかった」
レオンが返事をする。
時間を見ると11時過ぎだった。
「少し早いですがお昼にしましょうか」
◇
お屋敷だから使用人がいるのかと思ったが、一般的な家庭と同じ暮らしをしているそうだ。
だから自動調理機でできる料理となり、結弦が好きな蕎麦となった。
使っている蕎麦粉が良いのかとても美味しかった。
曰く「天竜川の綺麗な水が美味しいんです」と。
人口が減ったぶん、自然の恵みも良くなってきたわけだ。
食後、腹ごなしをするというので軽く散歩へ出た。
青空が透きとおって気持ちいい。
遠くに薄暗い雲が見えるけどほぼ快晴だ。
お屋敷のまわりの蜜柑畑を縫って散歩道があるのでそこを歩いていた。
「来るときも思ったけど良い眺めだよな。こんな開放感がある場所で過ごしたら学園の狭い部屋が我慢できなくなりそうだ」
「学園の寮はちょっと窮屈です」
「そう、あの部屋はおかしい。日本人はどうしてあんな狭い場所で平気なのだ」
「・・・狭い家に住んでる人が多いんだよ、狭い国だから」
「普段から過酷な環境に慣れさせるということか」
過酷・・・だと?
それが軍隊式の訓練だって?
そもそも君たちやさくら、ソフィア嬢は育った環境が良すぎるんだよ。
一般人のジャンヌやリアム君なんて文句ひとつ言わない。
俺みたいに小市民だったら3食寝床付きというだけで大歓迎だというのに。
掘り下げてもすれ違う気がしたのでスルーすることにした。
「ところで結弦。皆伝の儀ってどういうものなんだ?」
「うちの道場が代々伝えている天然理心流の極意を含めた習得を見るものです。天然理心流は幕末の近藤家が創設したもので、剣術と居合術、柔術と小具足術、棒術の大きくわけて3種の系統にわかれます」
「幅広いんだな」
「オレはそのうち剣術、特に居合術の相伝を目指しています。これから受けるのは剣術の儀式、ということになりますね」
「てことは、柔術や棒術の師範もいて、それぞれに相伝しているってことか?」
「はい。オレの父が剣術を、その兄弟子が柔術と棒術を、それぞれ師範として教えています」
「強者が周りにいる環境で育ったのだな。お前が強いのも納得だ」
レオンが感心している。
周囲にいる人間のレベルが自分の基準となるわけで、結弦が相当に高いレベルを基本としているのは想像に易い。
「その儀式は具体的に何をすんだ?」
「まずはすべての技法を身につけているか、師と技を結び合います」
「技が劣っていればそこで落第となるわけか」
「そうです」
『技』とはラリクエでも特技として使用できた『型』のことだろう。
俺がこれまでこの世界で見たのは二の型、四の型。
ラリクエでは八の型まであった。
それぞれ彼の基礎能力に含まれる特技となる。
結弦が免許皆伝すると奥義も使えるようになる。
今回はそれが覚えられるかどうかの試験だ。
「その次に死合です。模擬刀でどちらかが倒れるまで打ち合います」
「木刀とはいえど、倒れるまでとなると壮絶な儀式だな」
「はい。完全に師を超えるまで免許皆伝とはなりませんので」
そこまで言うと先頭を歩いていた結弦は立ち止まった。
俺とレオンも足を止める。
その背中が止まったままだった。
どうした、と俺とレオンは顔を見合わせた。
少しの間があった。
「実は少し・・・いえ、かなり怖いです」
「怖い? 何があった?」
結弦は絞り出すような声を出していた。
「オレ、この儀を受けるのは3度目なんです。これまで2度、失敗しています」
「・・・!?」
「去年の今ごろ、オレと弟の嵐張が同時に皆伝の儀を受けたんです」
「ほう、彼も受けたのか」
「ええ、俺と互角の実力がありましたから」
ちょ、お前、2回も落ちてるのかよ!?
それに嵐張はお前のスペックと互角とか!?
ラリクエじゃ終始、結弦のほうが嵐張より優れていたはずだ。
皆伝の儀も父親から「受けて良い」と言われていなかったので弟に先越されただけ。
高天原で修練して帰省し、父親に是と言われ、皆伝の儀に臨むという流れのはずだ。
てっきり俺はその流れになっていたのかと思っていた。
だから帰省直後に嵐張にああやって言われてたのか・・・。
またも想定外の衝撃で俺は言葉を失っていた。
「ですがあいつだけが免許皆伝となりました。オレは技の結び合いで失敗し、半年後に2度目の挑戦をしましたが、それも同じところで失敗しました」
「それでもういちど失敗するのが怖い、ということか」
「・・・はい。笑ってください、ここまで来て震えが出てるんですよ」
見れば脚が僅かに震えている。
あのいつも沈着冷静な結弦の言葉とは思えないほどだ。
ずっと前を向いたままなので彼がどういう表情をしているのかはわからない。
「嵐張は跡継ぎのはずのオレが免許皆伝していないことを快く思っていません。自分のほうが優れているのにどうしてオレが跡継ぎなのだ、と何度も言われています」
「・・・」
「お恥ずかしい話です。父にも今回の挑戦で最後だと告げられました。これで失敗すれば、俺は跡継ぎにはなれないようです」
なんてことだ。
結弦の目的は免許皆伝をして跡継ぎになることだ。
ラリクエでは学園で修練を重ね、免許皆伝を経て、世界のために戦う自信と力をつけていく。
でも今の状況で失敗したらクリアが難しくなるどころか結弦が自信喪失しちまうんじゃねぇか?
「・・・結弦。お前はずっと俺たちと修練に励んだだろう。技を磨いたことが無駄になろうはずがない。お前はそれだけのことをやってみせたのだ」
「・・・はい」
「自信を持て。俺の大剣を弾いたお前の腕は本物だ。並の者ができないことをやっている。お前が積み重ねた修練で届かないはずがない」
レオンが語っている。
彼の言葉どおり結弦は皆とずっと修練を重ねていた。
それこそレオンと結弦だけなら4月からずっとだ。
優れた者同士の積み重ねた努力が結果を生まぬはずがない。
レオンの言葉は高天原での結弦の軌跡を思い出させるものだった。
「俺はその集大成を見に来た。俺たちと積み重ねた成果を見せてくれ」
「・・・はい!」
うん、これはあれだ。
レオンで皆伝イベントに来た時の激励セリフ。
前提条件とか状況は違うけどイベント進行してるよ。
セリフに聞き覚えがある。
結弦に自信をつけさせてるシーン。
結弦も憂いがなさそうな表情になり、前向きな声で返事をしている。
このままいってくれれば上手くいく・・・か?
蚊帳の外に置かれてすっかり傍観者の俺。
でもここから俺が手を出して軌道修正できる要素が思いつかない。
割り込む必要もないように思う。
大人しくレオンの攻略に期待して成り行きを見守るしかなかった。
「・・・うん? 観光客か。この蜜柑畑は美しいからな」
「ほんとうですね。日本家屋も観たかったのかもしれません」
このまま儀式かな、と思っていたら。
ふたりが向こうを見ていた。
俺も釣られてそちらを見やる。
「ぶっ!?」
変な音を立てちまったじゃねぇか!
何だ、とレオンと結弦の怪訝な視線が痛い。
俺の視線の先には女性がふたり。
深々と白いクロッシェ帽を被った色白の女性。
グレーのシャツにジーンズのパンツ。
眩しくもないのにサングラスをしていて見るからに怪しい。
もうひとりも赤いクロッシェ帽を被った女性。
グレーのシャツにジーンズのパンツ。
もちろんサングラス。
ペアルックか。
つーかさ、銀髪と金髪でさ。
俺の見覚えのある格好してたら誰かわかる。
そもそもここ、町外れで観光客が来るところじゃねぇよ。
「・・・」
つかつかとそのふたりに近づく俺。
ふたりは動揺した様子だったが、観念したのか逃げなかった。
「なにしてんの、さくら、ソフィア」
「な、なぜわかりましたの!?」
「ソフィアさん、だから近づきすぎだと・・・」
・・・なんだかなぁ。
君たち2回目だよ、しかも同じ変装してりゃわかるって。
結弦の大事な儀式なんだけどな。
来たいなら堂々と言えばよかったのに。
「さ、さくら様が結弦様のことを心配されていらしたので、仕方なく同行させていただきましたのよ! 決して、武様が気になって仕方がないということではありませんことよ!」
「ソ、ソフィアさん!?」
・・・これ、なんてポンコツ?
さくらも罪をなすりつけられて動揺してんぞ。
「ソフィアさん! さくらさんも!」
「お前たちだったのか!」
・・・え?
レオンも結弦も今気付いたの?
特徴的な髪が見えててわかりやすい変装してんのに。
でもこいつら観光客判定してたし・・・実はお前らもポンコツ候補?
人を疑うってことを知らねえのかな。
「ゆ、結弦様! 大切な試験を受けられるのですわよね! 微力ながら応援に参りましてよ!」
「ええと・・・結弦さん、わたしも応援で参りました。皆でがんばったのですから自信をもって臨んでください」
「ははは、ありがとうございます」
応援団の増員が意外で思わず笑いが漏れてしまっている結弦。
いい感じで緊張が取れたのではないかと思う。
ひとりよりふたり、ふたりより4人。
うん、多いほうがきっと良い結果になる。
そう信じて皆に手伝ってもらったわけだから、この応援もきっとそうだ。
いつもの調子でじゃれ合うように談笑する4人を見て、俺はそう思った。
生暖かい風が俺の頬を撫でる。
遠くに見えていた雲が少し広がって来ていた。
だからあまり電車での出来事を覚えていない。
今回は余裕があるのでじっくり観察することができる。
改めて見る、未来仕様の新幹線は格好良かった。
極圏高速鉄道のように先頭車両がまっさらでなく運転席が見える。
運転席の上あたりに耳のような出っ張り。
多分あれは風切り音を消す部位だろう。
ライトは4つついており、正面から見るとヒゲのように長い線。
まるで細目のキツネ顔。
だから俗称、白雪狐。
日本人らしい命名だと思った。
内装は極圏高速鉄道に近い。
謎樹脂の座席カバーに弾力のあるガラス窓。
床も音が響かない不思議仕様。
高級ホテルの客室かと思うくらいの雰囲気だ。
そのぶんお値段も高めで片道2万円強。
でも自販機のボトルが1.5倍の値段だからそんなに高くない、か?
インフレ率とかどうなったんだろな。
車内サービスのバリエーションも豊富。
時速400キロメートルを超えて流れていく景色も格別だ。
それだけでわくわくするし楽しい。
道中、沼津付近で富士山の雄大な姿が見えた。
笠雲が半分かかっており不可思議に見える。
レオンも感動して「これが美しさ世界一のフジヤマか」と口にしていた。
冠雪はなかったけれど、富士山のかたちは今も昔も人の心を掴んでやまない。
【白扇 倒ましに懸かる 東海の天】と俺が呟くとレオンはぽかんとしていた。
結弦がうんうんと頷いていたあたり、昔の詩も未だに理解されるようだった。
◇
東海州浜松市。
2210年現在は静岡県南部の大半を占める都市。
温暖化の水面上昇で浜松湖をはじめ天竜川河口部の平野の大部分が水没してしまった。
だが大惨事による寒冷化で、ふたたびその水没都市が姿を現した。
現在の市街地からそれらを見渡せることから、アトリット・ヤムと例えられるようになった。
結弦の実家はそんな眺望の良い丘の上にあった。
きっと大惨事前は海岸線に近い箇所だったと思われるそこは、周囲を蜜柑畑に囲まれている穏やかな土地だ。
静岡といえば茶畑、と思ったが気候の関係かあまり見つけることはできなかった。
秋も近いので色づき始めた蜜柑の黄色い実が印象的だった。
【なんだ兄貴。性懲りもなくまた皆伝の儀を受けに来たの?】
【帰りました】と玄関から呼びかける結弦に伴い、靴を脱いでお屋敷へあがったところで。
廊下にて第一声、不機嫌そうな蔑む言葉で出迎えたのは彼の弟。
結弦と同じ黒髪だが短くて坊主に近い。
高校野球選手のようにスポーツマンのような印象を受ける奴だった。
さわやかな雰囲気のはずなのにその侮蔑を含んだ表情が俺たちの心象を悪くする。
「・・・ただいま、嵐張。見てのとおり外国人の客人もいる。世界語で話してくれ」
【え? 嫌だよ苦手だし。兄貴のお利口に付き合う義理なんてない】
【・・・オレをどう言おうが構わない。彼らに失礼はするなよ】
【はいはい、相変わらず優等生な。それなら僕に相手をさせるな】
ふん、と鼻であしらうような仕草をすると、嵐張は奥へ引っ込んで行った。
結弦は仕方がないとでもいうような顔をしている。
言葉がわからないレオンもその歓迎されていない雰囲気は感じ取ったようだ。
「結弦、彼はお前の弟で嵐張というのか」
「はは、生意気でごめんなさい。折角、来てもらったのに・・・」
「この国では偏見をよく受ける。気にするな」
「・・・」
平謝りの結弦にレオンは気にしないと宥めている。
・・・あれが嵐張? 外見は一致したけど俺の知っている性格じゃねぇぞ?
ラリクエでは兄貴に好意的で協力的だったはずなんだが。
「そうだ、立たせてしまいすみません。まずは客間へ案内します」
結弦は俺たちを屋敷の奥へと先導する。
廊下はすぐに縁側となり、立派な日本庭園が視界へ飛び込んできた。
久しぶりに見たよ、とても懐かしい!
お白洲とか鹿威しとか石行灯とか。
こういうのって未来になると消えていくんだよな。
「こっちです。この離れの部屋で過ごしてください」
感動していたらすぐに客間へ到着したようだ。
障子を開けて中へ入ると畳の懐かしい匂いが鼻をついた。
うお、純和風だよ!
格天井だし、床の間があって掛け軸はあるし、砂壁だし、家紋っぽい模様が入った縁付畳だし。
下手な旅館よりも立派な部屋だ!
「これがニホンカオクというやつか。初めて見る」
「レオン、これ、純和風って言って伝統的なやつだ。しかも格式高いぞ、武士の時代に持て囃されたものだ」
「そうなのか。この草の匂いにも意味があるのか?」
しゃがみ込んで畳の感触を確かめるレオン。
そうだよな、外国人にとっちゃこの時代に純和風を探すほうが大変だろう。
こうした屋敷は天然記念物級になっているかもしれない。
実際、この世界で日本庭園や縁側を見たのはこれが初めてだから。
「はは、喜んでもらえて何よりです。部屋のことは武さんも詳しそうなのでお任せしますね。オレは家族に挨拶してきます」
「ああ、荷物を置いて落ち着いとくよ」
結弦が出ていくと俺は部屋の端に荷物を置き、座卓に添えられた座布団に座った。
レオンもそれに倣って荷物を置いて対面に座った。
「床に座るのだな。脚は重ねるのか」
「今は座りやすい格好で良いぞ。正式な挨拶のときは正座といって、俺みたいに座るんだ。普段はこんなふうに崩すと良い」
なんとなく正座していた脚を胡座に変える。
レオンもそれに倣って胡座にしていた。
「洋式だと靴のまま部屋に上がるけど、今も日本は靴を脱ぐのが慣習だ」
「ふむ」
「だからこの部屋の畳も寝そべっても問題ないくらい綺麗なんだよ。こんな感じでな」
俺は座布団を枕にして大の字になってみせた。
綺麗な木目の格天井がなんとも心地良さを演出している。
水墨画の掛け軸なんてよくこの時代に現存したな、と思ってしまうくらいだ。
「横になるなら柔らかいベッドの上のほうが良くないか?」
「畳は板と違って弾力があるだろ? 少し通気性もあるし心地良いんだよ」
「なるほど。・・・こんな手の込んだものを昔は手作りしていたのか。日本人の器用さは素晴らしいな」
畳のい草が編まれていることに感心するレオン。
やはりこういったものは外国人に刺さるんだな。
「ベッドといえば、お前は敷布団を知らないんだよな」
「シキブトン?」
「ジャパニーズ・トラディショナル・ベッドだよ」
俺は押入れを開けて布団を見せた。
ふわふわの敷布団と掛け布団が所狭しと収まっている。
レオンは興味深そうにそれらに触れて感触を確かめていた。
「この部屋を今はリビングルームとして使ってるけど、夜はベッドルームにするんだ」
「なるほど。狭い部屋がふた役になるわけだな」
「そうそう。こうして同じ部屋で落ち着いてもらうのが日本式」
この調子で床間や庭園についても軽く説明する。
レオンはほうほうと頷き、日本文化を味わっているようだった。
「お前は博識だな。自国の文化でも古いものは廃れてしまうものだろう」
「前にも話したけど親の影響だよ。レトロ好きだったんだ」
おっとまた不自然すぎたかな。
調子に乗って解説しすぎたと反省する俺。
久々の純和風が刺激的すぎたよ。
日本に来る外国人もこんな感じなんだろう。
「ところで武、先の嵐張のことだが」
少し落ち着いたところでレオンが切り出してきた。
「結弦は弟に嫌われているのだろうか」
「ああ、そうかもしれん。あの態度でわかるよな」
俺はレオンにさっきのやり取りの意訳を伝えた。
するとレオンは金色の眉を寄せた。
「結弦は我慢強い。俺たちに黙って無理をしていなければ良いのだが」
「レオン、お前は結弦から事情とか聞いてないか?」
「俺が彼から聞いているのは皆伝の儀を成し遂げたいという目標だけだ。家族の話は聞いていない」
「・・・そっか。なら本人に聞いてみよう」
「そうだな。俺たちで何か力になれそうなら考えよう」
また想定外に遭遇しているのだ。
今度こそ慎重にいこう。
そう自分に言い聞かせていると軽く障子を叩く音がして結弦が姿を現した。
「お待たせしました。昼過ぎ、13時から皆伝の儀を行います。おふたりには立会人をお願いします」
「思ったよりすぐにやるんだな。立会人は部外者の俺たちで良いのか?」
「ええ、同門の人間では駄目ということになっていますので」
「わかった」
レオンが返事をする。
時間を見ると11時過ぎだった。
「少し早いですがお昼にしましょうか」
◇
お屋敷だから使用人がいるのかと思ったが、一般的な家庭と同じ暮らしをしているそうだ。
だから自動調理機でできる料理となり、結弦が好きな蕎麦となった。
使っている蕎麦粉が良いのかとても美味しかった。
曰く「天竜川の綺麗な水が美味しいんです」と。
人口が減ったぶん、自然の恵みも良くなってきたわけだ。
食後、腹ごなしをするというので軽く散歩へ出た。
青空が透きとおって気持ちいい。
遠くに薄暗い雲が見えるけどほぼ快晴だ。
お屋敷のまわりの蜜柑畑を縫って散歩道があるのでそこを歩いていた。
「来るときも思ったけど良い眺めだよな。こんな開放感がある場所で過ごしたら学園の狭い部屋が我慢できなくなりそうだ」
「学園の寮はちょっと窮屈です」
「そう、あの部屋はおかしい。日本人はどうしてあんな狭い場所で平気なのだ」
「・・・狭い家に住んでる人が多いんだよ、狭い国だから」
「普段から過酷な環境に慣れさせるということか」
過酷・・・だと?
それが軍隊式の訓練だって?
そもそも君たちやさくら、ソフィア嬢は育った環境が良すぎるんだよ。
一般人のジャンヌやリアム君なんて文句ひとつ言わない。
俺みたいに小市民だったら3食寝床付きというだけで大歓迎だというのに。
掘り下げてもすれ違う気がしたのでスルーすることにした。
「ところで結弦。皆伝の儀ってどういうものなんだ?」
「うちの道場が代々伝えている天然理心流の極意を含めた習得を見るものです。天然理心流は幕末の近藤家が創設したもので、剣術と居合術、柔術と小具足術、棒術の大きくわけて3種の系統にわかれます」
「幅広いんだな」
「オレはそのうち剣術、特に居合術の相伝を目指しています。これから受けるのは剣術の儀式、ということになりますね」
「てことは、柔術や棒術の師範もいて、それぞれに相伝しているってことか?」
「はい。オレの父が剣術を、その兄弟子が柔術と棒術を、それぞれ師範として教えています」
「強者が周りにいる環境で育ったのだな。お前が強いのも納得だ」
レオンが感心している。
周囲にいる人間のレベルが自分の基準となるわけで、結弦が相当に高いレベルを基本としているのは想像に易い。
「その儀式は具体的に何をすんだ?」
「まずはすべての技法を身につけているか、師と技を結び合います」
「技が劣っていればそこで落第となるわけか」
「そうです」
『技』とはラリクエでも特技として使用できた『型』のことだろう。
俺がこれまでこの世界で見たのは二の型、四の型。
ラリクエでは八の型まであった。
それぞれ彼の基礎能力に含まれる特技となる。
結弦が免許皆伝すると奥義も使えるようになる。
今回はそれが覚えられるかどうかの試験だ。
「その次に死合です。模擬刀でどちらかが倒れるまで打ち合います」
「木刀とはいえど、倒れるまでとなると壮絶な儀式だな」
「はい。完全に師を超えるまで免許皆伝とはなりませんので」
そこまで言うと先頭を歩いていた結弦は立ち止まった。
俺とレオンも足を止める。
その背中が止まったままだった。
どうした、と俺とレオンは顔を見合わせた。
少しの間があった。
「実は少し・・・いえ、かなり怖いです」
「怖い? 何があった?」
結弦は絞り出すような声を出していた。
「オレ、この儀を受けるのは3度目なんです。これまで2度、失敗しています」
「・・・!?」
「去年の今ごろ、オレと弟の嵐張が同時に皆伝の儀を受けたんです」
「ほう、彼も受けたのか」
「ええ、俺と互角の実力がありましたから」
ちょ、お前、2回も落ちてるのかよ!?
それに嵐張はお前のスペックと互角とか!?
ラリクエじゃ終始、結弦のほうが嵐張より優れていたはずだ。
皆伝の儀も父親から「受けて良い」と言われていなかったので弟に先越されただけ。
高天原で修練して帰省し、父親に是と言われ、皆伝の儀に臨むという流れのはずだ。
てっきり俺はその流れになっていたのかと思っていた。
だから帰省直後に嵐張にああやって言われてたのか・・・。
またも想定外の衝撃で俺は言葉を失っていた。
「ですがあいつだけが免許皆伝となりました。オレは技の結び合いで失敗し、半年後に2度目の挑戦をしましたが、それも同じところで失敗しました」
「それでもういちど失敗するのが怖い、ということか」
「・・・はい。笑ってください、ここまで来て震えが出てるんですよ」
見れば脚が僅かに震えている。
あのいつも沈着冷静な結弦の言葉とは思えないほどだ。
ずっと前を向いたままなので彼がどういう表情をしているのかはわからない。
「嵐張は跡継ぎのはずのオレが免許皆伝していないことを快く思っていません。自分のほうが優れているのにどうしてオレが跡継ぎなのだ、と何度も言われています」
「・・・」
「お恥ずかしい話です。父にも今回の挑戦で最後だと告げられました。これで失敗すれば、俺は跡継ぎにはなれないようです」
なんてことだ。
結弦の目的は免許皆伝をして跡継ぎになることだ。
ラリクエでは学園で修練を重ね、免許皆伝を経て、世界のために戦う自信と力をつけていく。
でも今の状況で失敗したらクリアが難しくなるどころか結弦が自信喪失しちまうんじゃねぇか?
「・・・結弦。お前はずっと俺たちと修練に励んだだろう。技を磨いたことが無駄になろうはずがない。お前はそれだけのことをやってみせたのだ」
「・・・はい」
「自信を持て。俺の大剣を弾いたお前の腕は本物だ。並の者ができないことをやっている。お前が積み重ねた修練で届かないはずがない」
レオンが語っている。
彼の言葉どおり結弦は皆とずっと修練を重ねていた。
それこそレオンと結弦だけなら4月からずっとだ。
優れた者同士の積み重ねた努力が結果を生まぬはずがない。
レオンの言葉は高天原での結弦の軌跡を思い出させるものだった。
「俺はその集大成を見に来た。俺たちと積み重ねた成果を見せてくれ」
「・・・はい!」
うん、これはあれだ。
レオンで皆伝イベントに来た時の激励セリフ。
前提条件とか状況は違うけどイベント進行してるよ。
セリフに聞き覚えがある。
結弦に自信をつけさせてるシーン。
結弦も憂いがなさそうな表情になり、前向きな声で返事をしている。
このままいってくれれば上手くいく・・・か?
蚊帳の外に置かれてすっかり傍観者の俺。
でもここから俺が手を出して軌道修正できる要素が思いつかない。
割り込む必要もないように思う。
大人しくレオンの攻略に期待して成り行きを見守るしかなかった。
「・・・うん? 観光客か。この蜜柑畑は美しいからな」
「ほんとうですね。日本家屋も観たかったのかもしれません」
このまま儀式かな、と思っていたら。
ふたりが向こうを見ていた。
俺も釣られてそちらを見やる。
「ぶっ!?」
変な音を立てちまったじゃねぇか!
何だ、とレオンと結弦の怪訝な視線が痛い。
俺の視線の先には女性がふたり。
深々と白いクロッシェ帽を被った色白の女性。
グレーのシャツにジーンズのパンツ。
眩しくもないのにサングラスをしていて見るからに怪しい。
もうひとりも赤いクロッシェ帽を被った女性。
グレーのシャツにジーンズのパンツ。
もちろんサングラス。
ペアルックか。
つーかさ、銀髪と金髪でさ。
俺の見覚えのある格好してたら誰かわかる。
そもそもここ、町外れで観光客が来るところじゃねぇよ。
「・・・」
つかつかとそのふたりに近づく俺。
ふたりは動揺した様子だったが、観念したのか逃げなかった。
「なにしてんの、さくら、ソフィア」
「な、なぜわかりましたの!?」
「ソフィアさん、だから近づきすぎだと・・・」
・・・なんだかなぁ。
君たち2回目だよ、しかも同じ変装してりゃわかるって。
結弦の大事な儀式なんだけどな。
来たいなら堂々と言えばよかったのに。
「さ、さくら様が結弦様のことを心配されていらしたので、仕方なく同行させていただきましたのよ! 決して、武様が気になって仕方がないということではありませんことよ!」
「ソ、ソフィアさん!?」
・・・これ、なんてポンコツ?
さくらも罪をなすりつけられて動揺してんぞ。
「ソフィアさん! さくらさんも!」
「お前たちだったのか!」
・・・え?
レオンも結弦も今気付いたの?
特徴的な髪が見えててわかりやすい変装してんのに。
でもこいつら観光客判定してたし・・・実はお前らもポンコツ候補?
人を疑うってことを知らねえのかな。
「ゆ、結弦様! 大切な試験を受けられるのですわよね! 微力ながら応援に参りましてよ!」
「ええと・・・結弦さん、わたしも応援で参りました。皆でがんばったのですから自信をもって臨んでください」
「ははは、ありがとうございます」
応援団の増員が意外で思わず笑いが漏れてしまっている結弦。
いい感じで緊張が取れたのではないかと思う。
ひとりよりふたり、ふたりより4人。
うん、多いほうがきっと良い結果になる。
そう信じて皆に手伝ってもらったわけだから、この応援もきっとそうだ。
いつもの調子でじゃれ合うように談笑する4人を見て、俺はそう思った。
生暖かい風が俺の頬を撫でる。
遠くに見えていた雲が少し広がって来ていた。
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