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本編
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「そうだ、瑞希、ID交換しましょう」
家まで送るといって聞かない瑞希に折れた私は、瑞希と共に高級住宅街を歩いている。
「お、いいね。QRコードでいいかな?」
某メッセージアプリを起動して、カメラモードで瑞希のQRコードを読み込むと、『mizuki』と黒猫の写真が表示された。
「あら、これが瑞希の家ネコさん?」
「そーだよ。シロ。」
黒なのに……と思ったのは心に留めた。
「もう少しで着くわ。あちらの青い屋根の家よ」
「やっとかぁ……ここ一軒一軒がバカデカいからなーって、家じゃなくて“屋敷”でしょ、あの規模」
そうかしら、と首を傾げた私を見て、瑞希は苦笑した。
飾りのついた黒い鉄柵に囲まれた敷地の中は、大きな屋敷の前に噴水と、それを囲んだロータリーがある。
屋敷の屋根は青、壁は白で、気分は某夢の国だ。
門の前に到着したので、私はインターホン(?)を鳴らしてロックを解除してもらった。
「瑞希、家まで車で送ってもらうからどうぞ入って」
「いや、私はランニングがてら走って帰るから大丈夫!今日はカフェに付き合ってくれて本当にありがと!」
「そう……?分かったわ。こちらこそありがとう!気をつけて帰ってね」
「うん、じゃーねー」
手をブンブン振りながら瑞希は走って来た道を引き返していった。
瑞希が見えなくなってから、自宅の門をくぐった。
カメラを無事取り寄せ、神崎先輩との将来を妄想することに費やした日曜日を終えて、月曜日になった。
芸術科棟に行ける部活の時間を楽しみにしつつ、昼休みと放課後はきっちり普通科棟分館での図書委員の仕事をこなした。
先週の金曜日に神崎先輩が部長に話をつけてくださっていたので、堂々と一時間遅れで部室(パソコン室)に入った。
ーーーしかし、そこは戦場だった。
東軍は角野部長率いる写真部。
西軍は丸山部長率いる美術部。
あ、神崎先輩……すごい険しい顔をしていらっしゃるけれど。
先に口を開いたのは角野部長。
「美術部の皆さん、ここは写真部の活動拠点として許可を得ているのです。パソコンは学校の備品なので、もちろんどなたでも利用可能です。しかし、長期間・長時間・大人数で使われるとなると、見ての通りパソコン室は広いとは言えませんので、写真部の居場所が無くなるのです」
反論して丸山部長。
「ええ、そちらの事情も重々承知でわざわざ下手に出てお願いしているのですよ。何しろ次回のコンテストはデジタル部門に参加予定なのでね、パソコン室を是非とも使わせて頂きたいわけなのですよ。」
バチバチと両者の間で火花が散っている。
「どう思う、永冨さん?」
いきなりとばっちりが来た。この状況で意見を求めるという無茶ぶりをしてくださったのは角野部長。
「え……ええ!?えっと……美術部の部室を使わせて頂くというのは……」
「嫌だ。俺を含め5人はキャンバス一筋、別に3人は彫刻一筋だから、常時部室を使っている状況だ。」
答えたのは神崎先輩。
それによって火に油が注がれた。
「本っ当に美術部はあれもやだこれもやだって……!!」
「なっ、写真部だって!!」
まずい、ヒートアップしている!
「あ、あの!私が理事長に掛け合ってみますからっ!!」
ピタッと言い合いが止んだ。
「実現可能かは置いておいて……新しい写真部の部室……とか?」
「さぁ、理事長室へ行きましょう」
私が提案した途端、角野部長は私の腕と丸山部長の腕を引っ掴んで、理事長室のある中央棟へ引き摺った。
ーーーー作者からーーーーー
昨日は18時の更新が出来ずすみませんm(_ _)m
新学期準備ってバタバタしますよね(言い訳)
次回、じじバカ登場です。
家まで送るといって聞かない瑞希に折れた私は、瑞希と共に高級住宅街を歩いている。
「お、いいね。QRコードでいいかな?」
某メッセージアプリを起動して、カメラモードで瑞希のQRコードを読み込むと、『mizuki』と黒猫の写真が表示された。
「あら、これが瑞希の家ネコさん?」
「そーだよ。シロ。」
黒なのに……と思ったのは心に留めた。
「もう少しで着くわ。あちらの青い屋根の家よ」
「やっとかぁ……ここ一軒一軒がバカデカいからなーって、家じゃなくて“屋敷”でしょ、あの規模」
そうかしら、と首を傾げた私を見て、瑞希は苦笑した。
飾りのついた黒い鉄柵に囲まれた敷地の中は、大きな屋敷の前に噴水と、それを囲んだロータリーがある。
屋敷の屋根は青、壁は白で、気分は某夢の国だ。
門の前に到着したので、私はインターホン(?)を鳴らしてロックを解除してもらった。
「瑞希、家まで車で送ってもらうからどうぞ入って」
「いや、私はランニングがてら走って帰るから大丈夫!今日はカフェに付き合ってくれて本当にありがと!」
「そう……?分かったわ。こちらこそありがとう!気をつけて帰ってね」
「うん、じゃーねー」
手をブンブン振りながら瑞希は走って来た道を引き返していった。
瑞希が見えなくなってから、自宅の門をくぐった。
カメラを無事取り寄せ、神崎先輩との将来を妄想することに費やした日曜日を終えて、月曜日になった。
芸術科棟に行ける部活の時間を楽しみにしつつ、昼休みと放課後はきっちり普通科棟分館での図書委員の仕事をこなした。
先週の金曜日に神崎先輩が部長に話をつけてくださっていたので、堂々と一時間遅れで部室(パソコン室)に入った。
ーーーしかし、そこは戦場だった。
東軍は角野部長率いる写真部。
西軍は丸山部長率いる美術部。
あ、神崎先輩……すごい険しい顔をしていらっしゃるけれど。
先に口を開いたのは角野部長。
「美術部の皆さん、ここは写真部の活動拠点として許可を得ているのです。パソコンは学校の備品なので、もちろんどなたでも利用可能です。しかし、長期間・長時間・大人数で使われるとなると、見ての通りパソコン室は広いとは言えませんので、写真部の居場所が無くなるのです」
反論して丸山部長。
「ええ、そちらの事情も重々承知でわざわざ下手に出てお願いしているのですよ。何しろ次回のコンテストはデジタル部門に参加予定なのでね、パソコン室を是非とも使わせて頂きたいわけなのですよ。」
バチバチと両者の間で火花が散っている。
「どう思う、永冨さん?」
いきなりとばっちりが来た。この状況で意見を求めるという無茶ぶりをしてくださったのは角野部長。
「え……ええ!?えっと……美術部の部室を使わせて頂くというのは……」
「嫌だ。俺を含め5人はキャンバス一筋、別に3人は彫刻一筋だから、常時部室を使っている状況だ。」
答えたのは神崎先輩。
それによって火に油が注がれた。
「本っ当に美術部はあれもやだこれもやだって……!!」
「なっ、写真部だって!!」
まずい、ヒートアップしている!
「あ、あの!私が理事長に掛け合ってみますからっ!!」
ピタッと言い合いが止んだ。
「実現可能かは置いておいて……新しい写真部の部室……とか?」
「さぁ、理事長室へ行きましょう」
私が提案した途端、角野部長は私の腕と丸山部長の腕を引っ掴んで、理事長室のある中央棟へ引き摺った。
ーーーー作者からーーーーー
昨日は18時の更新が出来ずすみませんm(_ _)m
新学期準備ってバタバタしますよね(言い訳)
次回、じじバカ登場です。
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