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本編
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翌日
普通科のみ土曜補習を午前中受けなければならない、ということを腹立く思いながらも、土曜日の今日も平日のように登校した。
1時間目、担任の流暢な英語を聞きながら(担任は英語教師なのである)ぼんやりと空を眺めていると……
「それでは、黄昏ていらっしゃる永冨さん、この文を英訳してみてください」
おっと。
『Theoretically,it could provide a very cheap method of vaccinating populations of developing countries and could be extended to prevention of other diseases of this kind.』
え、長くないですか……
「えっと……『理論的に、それは発展途上国の人々にワクチンを打つとても安価な方法を供給することや、この種類の他の病気の予防を広げることができる』……という感じでしょうか?」
担任は少し悔しそうに
「まあ、いいんじゃないか?これ3年生に出した問題だから、1年生にしては良くやったが、ちゃんと授業に集中しなさい。」
「はい、すみません」
大体こういう時は、きちんと答えても結局叱られるというパターンだ。
というか、3年の問題を1年(しかもつい最近まで中学生)に解かせるな!!
ーーーこの時、クラスのほとんどが雅に尊敬の眼差しを向けていたことを本人は気づいていない。
午前4コマの授業を終え、友人(取り巻き?)達とお昼ご飯を食べた。
普通科以外の1年は午前中に、普通科1年は午後にミーティングと写真部部長から昨日お達しがあったので、荷物を準備して廊下へ出た。
「永冨さーん」
急に知らない声が聞こえたので驚きつつ振り返ると、ショートカットの女子生徒がヨッと手を上げた。
「私、天草瑞希。永冨さんも写真部だったよね、一緒に行かない?」
「ええ、もちろん」
私は微笑み、天草さんの横に並んで歩き始めた。
「私のことは瑞希って呼んで。あ、“ちゃん”とか“さん”とか要らないから」
サバサバした性格のようで、好感を覚えた。
「では瑞希、私も雅と呼んで?」
「お、名前呼びOK?じゃーさ、あだ名つけちゃダメ?さっき待ってる時に考えたんだけど、『みーちゃん』とかどうよ。流石にαを呼び捨ては私が刺されそうだから」
「構わないけれど……クスッ、誰に刺されるの?」
私よりも少し背の高い彼女は、見た目だけでは陸上部のような雰囲気だ。
今まで周りにはいなかったタイプだが、同じ部活で仲良く出来そうな人が見つかって少しホッとした。
彼女は3組で、βであるということ。
景色を見るのが好きだから写真部に入ったということ。
家で黒猫を飼っていて、毎日癒されていること。
中学までは本当に陸上部員で、短距離走をしていたこと。
芸術科棟に着くまでにたくさんのことを瑞希が話してくれたおかげで、私達はすっかり打ち解けていた。
普通科のみ土曜補習を午前中受けなければならない、ということを腹立く思いながらも、土曜日の今日も平日のように登校した。
1時間目、担任の流暢な英語を聞きながら(担任は英語教師なのである)ぼんやりと空を眺めていると……
「それでは、黄昏ていらっしゃる永冨さん、この文を英訳してみてください」
おっと。
『Theoretically,it could provide a very cheap method of vaccinating populations of developing countries and could be extended to prevention of other diseases of this kind.』
え、長くないですか……
「えっと……『理論的に、それは発展途上国の人々にワクチンを打つとても安価な方法を供給することや、この種類の他の病気の予防を広げることができる』……という感じでしょうか?」
担任は少し悔しそうに
「まあ、いいんじゃないか?これ3年生に出した問題だから、1年生にしては良くやったが、ちゃんと授業に集中しなさい。」
「はい、すみません」
大体こういう時は、きちんと答えても結局叱られるというパターンだ。
というか、3年の問題を1年(しかもつい最近まで中学生)に解かせるな!!
ーーーこの時、クラスのほとんどが雅に尊敬の眼差しを向けていたことを本人は気づいていない。
午前4コマの授業を終え、友人(取り巻き?)達とお昼ご飯を食べた。
普通科以外の1年は午前中に、普通科1年は午後にミーティングと写真部部長から昨日お達しがあったので、荷物を準備して廊下へ出た。
「永冨さーん」
急に知らない声が聞こえたので驚きつつ振り返ると、ショートカットの女子生徒がヨッと手を上げた。
「私、天草瑞希。永冨さんも写真部だったよね、一緒に行かない?」
「ええ、もちろん」
私は微笑み、天草さんの横に並んで歩き始めた。
「私のことは瑞希って呼んで。あ、“ちゃん”とか“さん”とか要らないから」
サバサバした性格のようで、好感を覚えた。
「では瑞希、私も雅と呼んで?」
「お、名前呼びOK?じゃーさ、あだ名つけちゃダメ?さっき待ってる時に考えたんだけど、『みーちゃん』とかどうよ。流石にαを呼び捨ては私が刺されそうだから」
「構わないけれど……クスッ、誰に刺されるの?」
私よりも少し背の高い彼女は、見た目だけでは陸上部のような雰囲気だ。
今まで周りにはいなかったタイプだが、同じ部活で仲良く出来そうな人が見つかって少しホッとした。
彼女は3組で、βであるということ。
景色を見るのが好きだから写真部に入ったということ。
家で黒猫を飼っていて、毎日癒されていること。
中学までは本当に陸上部員で、短距離走をしていたこと。
芸術科棟に着くまでにたくさんのことを瑞希が話してくれたおかげで、私達はすっかり打ち解けていた。
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