【R18】【本編完結済】ロールキャベツ系彼女とツンデレ(後々)彼氏

米粉パン

文字の大きさ
上 下
6 / 43
本編

6

しおりを挟む


 扉を開けてボス部屋に入っても特に動きは無かった。異変が起こったのは全員が広間に入りきった頃。

 ドシンと地面が揺れた。

 次に広間の奥から巨大な四足歩行のナニカがのっしのっしと歩いてきた。初心者用ダンジョン地下五階のボスにしては禍々し過ぎるというか……。皆も同じ事を思っているのか、ピタリと動きが止まっている。

「あれは——!」
「知っているんですかっ、団長さん!?」

 甲斐先生が締め上げる前に、団長は言い放った。

「皆逃げろ! 此奴はグレータービーストッ、魔王の居城近くに生息するという上級モンスターだ! 今の我々では到底敵わない!!」

 団長のセリフが思いっきり説明セリフな所にツッコミ入れるべきなのか、これ!?

 俺も逃げ出したのだが、いかんせん『すばやさ』が皆とは一回りは違う。あっという間に最後尾になってしまった。

 ――やばい、これは死ぬ!

 焦っていたから色々な事が頭の中からから吹き飛んでいた。周りの注意すらも怠るほどに。そのせいで魔物なんかよりもよほど注意しないと行けない人物への警戒が薄れた。

「――さらばだ、旅人」

 そんな団長の囁き声が聞こえた次の瞬間には、地面とキスするハメになっていた。足を引っ掛けられて転んだのだ。

 そこで疑惑が確信に変わった。


 ——これは罠だ。『旅人』を抹殺するための。


 遠くからクラスメートたちの声と扉の閉まる音が聞こえた。





「気配遮断をモノに出来てなかったらマジでアウトだったぞ、これ」

 気付くのが遅過ぎたが、まあギリギリセーフだったので良しとする。……しっかし、閉じ込められてるのでやることがない。とりあえず魔物——団長はグレータービーストと呼んでたな、確か——でも観察するか。
 その体躯は現状、俺ではどう足掻いても勝てそうに無いとわかる凶悪ないでたち。団長も言っていたがラスダン手前辺りに生息してそうな面構えだ。悔しいが勇者である早乙女でも今は敵わないだろう。

「『旅人』を始末するにしては過剰戦力以外の何者でもねーよ……」

 どこの世界に、役立たずを始末するために勇者すら敵わない魔物をけしかける阿呆がいるのか。……ああ、この世界にいるな。ヤバいヤツ大杉であたまいたい。

 そうしてしばらく。

 扉に力一杯何度もドスンドスンと体当たりをする巨大なグレータービーストを見ていてふと思った。扉、頑丈過ぎねぇ? 開けた時は軽かったよな? 結構保つのな、まるで鍵がかかって……まさか、かんぬき常備!? 用意周到にも程があるだろぉぉぉ! どんだけ『旅人』を抹殺したかったんだよ!!

 合法的に抹殺したかったんだろうなー……ウチのクラス仲良いし。事故に見せかけないと後が大変だもんなー。うんうん、納得——

「——できるかぁぁッ!!」

 ハッと、反射でとっさに口を塞いだ。……グレータービーストさんは——素知らぬ顔で扉へのアタックを続けている。

「壊れスキルなのはありがたいが、心臓には悪いよな……気配遮断」

 俺は割と繊細なのだ。いくら持続時間が無期限と言われても、目の前でこんな凶暴な魔物がドッスンバッタンやってる側に居続けられるほど神経太くない。早くどっか行って欲しい。

 そんな願いが通じたのか——ピュィーという笛のような音が聞こえた。途端に大人しくなるグレータービースト。

「大人しくなった……?」

 まあ、俺への罠である以上コイツ野生の魔物とは違うかも……という考えも頭を掠めてた訳だが、マジか。マジでラスダン手前の魔物を飼い慣らす技術があんのか、この国……。

 ゾッとした。

 そんな国に召喚されてしまった事も恐ろしいが、そんな国のために働かせられるクラスのみんなが心配でならない。だが、今の俺にはそれを打開する術は無い。せいぜい逃げ延びて帰る方法を探すか、援軍を集めるくらいだろうか?


 俺は呆然と立ち尽くすしかなかった。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

とある高校の淫らで背徳的な日常

神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。 クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。 後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。 ノクターンとかにもある お気に入りをしてくれると喜ぶ。 感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。 してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

今日の授業は保健体育

にのみや朱乃
恋愛
(性的描写あり) 僕は家庭教師として、高校三年生のユキの家に行った。 その日はちょうどユキ以外には誰もいなかった。 ユキは勉強したくない、科目を変えようと言う。ユキが提案した科目とは。

魔性の大公の甘く淫らな執愛の檻に囚われて

アマイ
恋愛
優れた癒しの力を持つ家系に生まれながら、伯爵家当主であるクロエにはその力が発現しなかった。しかし血筋を絶やしたくない皇帝の意向により、クロエは早急に後継を作らねばならなくなった。相手を求め渋々参加した夜会で、クロエは謎めいた美貌の男・ルアと出会う。 二人は契約を交わし、割り切った体の関係を結ぶのだが――

イケメン彼氏は警察官!甘い夜に私の体は溶けていく。

すずなり。
恋愛
人数合わせで参加した合コン。 そこで私は一人の男の人と出会う。 「俺には分かる。キミはきっと俺を好きになる。」 そんな言葉をかけてきた彼。 でも私には秘密があった。 「キミ・・・目が・・?」 「気持ち悪いでしょ?ごめんなさい・・・。」 ちゃんと私のことを伝えたのに、彼は食い下がる。 「お願いだから俺を好きになって・・・。」 その言葉を聞いてお付き合いが始まる。 「やぁぁっ・・!」 「どこが『や』なんだよ・・・こんなに蜜を溢れさせて・・・。」 激しくなっていく夜の生活。 私の身はもつの!? ※お話の内容は全て想像のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※表現不足は重々承知しております。まだまだ勉強してまいりますので温かい目で見ていただけたら幸いです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 では、お楽しみください。

処理中です...