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第2話
羽素未世と佐坂智也 その2
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午後の授業は、古典と英語だった。どちらも座学で、お昼の後だとかなりきつい。教室を見回しても、寝ている人が数名いた。
特に古典がきつかった。初老の男性の先生のゆったりした話し方が眠気を誘うのか、ちんぷんかんぷんな内容が思考力を奪うのかわからないが、とにかく眠たかった。午後の古典はどうして壊滅的に眠たくなるんだろうという疑問を、この一年で何度浮かべたかわからない。うつらうつらと飛びそうになる意識を何とかつなぎ止めながら、私はなんとか午後の授業を終えた。
荷物をまとめて帰ろうとすると携帯電話が鳴った。見ると智也くんからのメールだった。
『ごめん。急に用事ができたので先に帰ってて』
「どうしたんだろ」
急な用事が入ることは初めてだったので不思議に思う。しかし、そういうこともあるのだろうとすぐに納得する。
一人で帰ろうと思い、私は鞄を持って昇降口へ向かった。智也くんと付き合うまでは一人で帰ることも多かったので、昔に戻ったと思えば気にならない。一緒に帰れないことが残念でないと言えば嘘になるけれど。
下駄箱からローファーを取り出し、スリッパをしまって履き替える。すると、背後から声を掛けられた。
「未世ちゃん」
振り返ると、そこには赤いアンダーリムの眼鏡をかけた小柄な少女が手提げ鞄を持って立っていた。鞄には小さなテディベアのぬいぐるみのキーホルダーがついている。
「鈴恵。どうしたの?」
彼女が草川鈴恵。智也くんと付き合うためにいろいろ助けてもらった、私にとっては命の恩人といっても過言ではない大切な存在だった。
「今日は一人なの?」
「うん。鈴恵も?」
「うん。文くんはバイトで先に帰っちゃった。智也は?」
文くんとは鈴恵の彼氏の時岸帆文(ときぎしほぶみ)くんのことだ。中学生の頃から付き合っているらしい。
「用事ができたから先に帰っててだって」
「そうなんだ。珍しいね」
「じゃあ、久しぶりに一緒に帰ろっか」
鈴恵の提案に私は頷く。鈴恵とは智也くんのことを相談していた時に何度か一緒に帰ったことがあった。
「最近、智也とはどう?付き合ってもうすぐ一ヶ月でしょ」
歩き始めてすぐに鈴恵が尋ねてくる。彼女の目は輝いていた。
「どうって……」
そう言われて私は返事に困った。こういう時にどう答えていいのかわからない。
楽しい。嬉しい。どちらもなんだかちょっと違う気がした。しばらく考えていると、私の口からぽつりと言葉が漏れた。
「なんだか安心する」
それは質問の答えとしてはちぐはぐなものだったが、鈴恵は納得してくれたらしい。
「そっか」
私の答えを聞いて鈴恵はニコニコと笑っている。一方、私は外の空気は冷たいのに顔が熱くなっていた。きっと赤くなっているだろう。恥ずかしさから私は俯いた。
智也くんと一緒にいる時は心が安らぐのは事実だった。しかし、同時に心の奥底では別の思いも浮かんでいる。
私はこれから殺さなければいけない人に何を感じているんだろう。
わき上がってくる暗い気持ちにふたをする。この話題は良くなかった。きっと堂々巡って暗い気持ちがわき起こる。だから、どうにか話題を変えようと私は思考をフル回転させ、当たり障りのない別の話題を探す。
「そういえば、もうすぐテストだね」
三週間後には期末テストがあった。少し早い気もするが仕方ない。暗い気持ちから逃れるために、なりふり構ってはいられなかった。
「鈴恵は前のテストどうだったの?」
「二〇位くらいだったかな」
私の学年は二八〇人いるから、その中で二〇位というのはすごい。ちなみに、私は一〇四位だった。
「すごい。やっぱり鈴恵は賢いんだね」
「そんなことないよ。文くんの方が上だし」
「えっ、そうなの」
時岸くんには失礼だが意外だった。鈴恵と時岸くんを比べたらどちらかというと鈴恵のほうが賢いイメージがあったからだ。なぜかと言われると根拠はないのだが、がっしりした体つきでスポーツが得意そうな時岸くんと眼鏡をかけて本が好きな鈴恵という、二人の見た目から勝手にそう判断していた。
「意外だった?」
鈴恵は私を見てイタズラっぽく微笑んだ。私は図星をつかれ、あわてて首を振る。
「そんなことないよ……」
「ふふふ。よく言われるからいいよ。実は文くんはすごいんだ」
嬉しそうに鈴恵は語る。これも一種ののろけなんだろうか。
「でも、きっと眼鏡成分が足りないんだね」
ついでによくわからないことも言って一人で笑っている。鈴恵は時々、訳がわからないことを言う。
「ごめんね。なんだかのろけちゃったかな」
「そんなことないよ」
「ふふふ。じゃあ、今度は未世ちゃんにのろけてもらおっかな」
「え?」
鈴恵の言葉に私は驚く。そもそも、どうやってのろけていいのかわからない。
「未世ちゃんは智也とデートしてどうだった?」
そう言われて私は間の抜けた声を上げてしまう。
「へ?」
鈴恵はおそらくこの前ようやく初めてデートをした話を聞きたいのだろう。付き合って一ヶ月経ってようやく初めてデートするのは遅い気もするが、お互いなかなか予定が合わなかったり、デートって何をするのかわからなくてなかなか踏み出せなかったりと、色々な理由があって時間がかかってしまった。
デートの内容はというと、一緒に映画を見に行って、買い物をするという、ごく普通のものだったと思う。
「智也から聞いたよ。この前、映画を見に行ったって」
「うん。見たけど」
「今話題のあれを見たんだよね。面白かった?」
一緒に見たのは恋愛映画だ。高校生の男の子が同じクラスの女の子の秘密を知ってしまい、そこから関係を深めていくというよくある物語だった。その秘密も重い病気に冒されていて余命半年だというもので、これもよくある話だ。でも、雨が降る中、雨宿りをしていた高架の下で抱き合い、キスするシーンはとてもきれいだった。そんな風に私たちもしたいと思えるくらいに印象的で、美しかったことを覚えている。残念ながら、そのデートの時は何もなかったけど。
「それなら面白かったけど」
「いいなぁ。じゃあ、デートも楽しかった?」
そう言われて、私は口をつぐむ。楽しかったと言えば、本当だ。智也くんとデートをするのは楽しかった。心が温かくなって、自然と笑えて、現実から目をそらせることができて、不思議な気分だった。
「楽しかった……」
私はぽつりと本音をつぶやく。でも、心の中では別の思いが浮かんでいた。
いずれ殺さなければならない相手に、そんな気持ちを抱くのは異常なのかな。
ヘドロのようなどろっとした感情はぐるぐると心の中で滞留していく。
「未世ちゃん、どうかした?」
そう言われて私ははっと気づいた。
「ごっ、ごめん。ちょっとぼーとしていた」
「デートの時を思い出していたの?」
「えっ?ああ……うん。そんなところ」
全く違うが、話がややこしくなるだけなので私は頷くことにする。
「来週からテスト前だから遊びに行けないし、デートするなら今週だね」
テスト週間でも遊びに行く人は行くんじゃと思ったがあえて口には出さない。きっとそういう時に、生真面目に勉強に励むのが鈴恵なのだろう。
「鈴恵はデートするの?」
「どうかな。土日はバイトがあるから予定はしてないけど、もしかしたら夜に会うかも」
夜に会って何をするんだろうと思うが、私はあえて口には出さない。油断するとすぐのろけだすのが鈴恵の悪い癖だった。
「未世ちゃんは?」
「まだ何も予定してないけど」
「そうなんだ。じゃあ、誘ってみたら」
それもよい思う。でも、どう誘ったらよいのか、どうデートしたら良いのかよくわからない。前回のデートは全て智也くんが計画してくれていた。彼に喜んでもらうため、鈴恵に聞いてみることにする。
「そういえば、鈴恵はデートに誘う時って、どうしてるの?」
「うーん、遊びに行こう、とか」
なんだか友だちみたいだなと思う。きっと二人は長く付き合っているからそうやって気楽に言えるのだろう。
「あと、行きたい店があるから一緒に来て、とか」
これは私でも言えそう。
「デートしよう、とか」
シンプルな誘い方もあるんだ。
「へい、彼氏。今、暇?とか」
どんなキャラなんだろう。
「今すぐ会いたいのとか、かなぁ」
急にしおらしくなったし。
鈴恵の言葉を聞いていると何とも言えない気持ちになる。とりあず、後半は参考にならないことだけはわかった。鈴恵なりの冗談だろう。冗談にしても意味不明だがきっとそうだ。
とりあえず、話題を変える。
「そうなんだ。じゃあ、デートするとしたらどこに行くの?」
「私は図書館とか本屋が多いかな。二人とも本好きだし。あまりお金がかからないし」
「図書館で何するの?」
「え?本を読むんだけど」
鈴恵は当たり前のように答える。それはわかる。確かに鈴恵と時岸くんが図書館で背中合わせに本を読んでいる姿を想像すると意外と絵になった。けれど、私たちがそれをしてもうまくいく気がしなかった。なによりデートらしくない気がする。デートらしいものがなんなのかは、よくわからないけれど。
「図書館以外だと、どこに行くの?」
「うーん、あとは一緒に散歩したり、家でまったりしたりするかな」
なんだか熟年夫婦みたいな答えが返ってきた。言われてみると鈴恵と時岸君は熟年夫婦みたいな雰囲気を感じる。無言で通じ合っていそうなところとか、なんでもあれで通じそうなところとか、お互いのことをよくわかっていそうなところとか、のろけても平気なところとか挙げればきりがない。そのくせ時折、初々しく恥ずかしがったりするのだから手に負えない。
「未世ちゃん。どうしたの?」
突然。鈴恵に声を掛けられ私は気を取り戻す。
「ごめん、いろいろ考えてた」
「智也とどうデートするか考えてたの?」
全然違うが、とりあえずそういうことにしておく。
「ねぇ、智也くんに楽しんでもらえるにはどうしたらいいと思う?」
その問いに鈴恵はなぜか一瞬驚いたような表情を浮かべた。
「え?突然どうしたの?何か上手くいってないの?」
「あ、いや、そういうわけじゃないんだけど、私なんかといて智也くん楽しいのかなって不安で」
とってつけたような言い訳を口にする。不安という言葉を口にしてようやく私は今の自分の気持ちの正体がわかった。結局のところ、私はつまらない自分が嫌われないか不安だったのだ。
「そっか、不安かあ」
鈴恵は頷くと、少し考えるように宙を見てから口を開く。
「未世ちゃんといる時の智也は楽しくなさそうなの?」
智也くんといる時のことを想像して、私は首を振った。そんな気配は感じない。最も、彼が演技をしているのなら話は別だが、見た目からはそうは思えない。
「未世ちゃんは楽しくないの?」
「そんなことない」
私はすぐに首を振る。彼といる時はとても楽しい。これだけはなんと言われようと断言できた。
「じゃあ、どうして不安なの?」
鈴恵は真っ直ぐに私を見つめると、不思議そうに首をかしげた。その理由を私は答えられない。
私は私は智也くんに嫌われてはいけない。だから、私は彼に楽しんでもらわなければならない。
そんなこと言えるはず無かった。
しばらくの間、沈黙が流れる。その沈黙を破ったのは、鈴恵だった。
「未世ちゃんは智也のことが本当に好きなんだね」
「え」
あっさり言われた言葉に私は顔が赤くなる。いざ面と向かって言われると恥ずかしくなって私は俯くことしかできない。
「好きだからこその不安ってあるよね。私もそういう時期があったから。うんうん、青春だねぇ」
そんな私を気にせずに鈴恵は嬉しそうに何度も頷く。
私はあんたも絶賛青春中でしょと思うが、あえて口にはださない。口に出したらきっと泥沼化することが目に見えていた。こういう時に大人の対応ができるってすばらしいと思う。
「いいから、話を戻すよ」
憮然とした表情で私が言うと、鈴恵は笑いながら話題を戻した。
「ごめん、ごめん。智也に楽しんでもらう方法だね」
「うん」
「例えば、智也の好きなことをするとかどう」
「好きなこと?」
智也くんの好きなことを思い浮かべる。すぐに思い浮かんだのは料理だった。
「料理?」
「そう。例えば、智也にお弁当を作ってきてもらうとかどう。きっと喜ぶよ」
その言葉に私は今日のお昼に智也くんとした約束を思い出した。
「あ……明日お弁当を作ってきてもらう約束したんだ」
「おお、智也もやるね」
「そうなのかな。私はもらう側だし」
これだと私は智也くんに何もあげていない。もらってばかりだ。
「なら、代わりに何かを返したらいいんだよ」
「何か?」
「うん。してほしいことをしてあげたり、好きなものをあげたり」
「……してほしいこと?」
考えてみても想像できない。私が困っていると鈴恵が口を開いた。
「聞いてみたら?好きな人のことを知るのは楽しいよ」
愛らしく鈴恵は笑う。
「うん、そっか」
私の中に何かがすとんと落ちる。そこで、住宅街と繁華街に分かれる十字路に着いた。鈴恵とはここから帰り道が違った。
「じゃあ、私こっちだから。色々教えてくれてありがとう」
「どうしたしまして」
そこで鈴恵は何かを考えるように一瞬、間を開けると、おずおずと口を開いた。
「二人はよく似ているから、お似合いだと思うの」
「どうしたの?突然」
鈴恵の言葉に私はとまどう。似ているという意味がよくわからなかった。
私と智也くんの似ている所ってんなにかあったっけと思うが、思い浮かばない。
「ちょっとそう思っただけ。だから、応援してるよ」
いたずらっぽく鈴恵は笑っている。真っ直ぐに向けられる言葉はくすぐったい。そんな真っ直ぐな言葉にどう返していいかわからず、とりあえずお礼を言った。
「……ありがとう」
「じゃあ、また明日」
そう言って私たちは手を振って別れた。そして、ホテルへ向かった。
途中で、コンビ二に寄って夕食を買う。いつもは何も食べられない日が続くが、今回はそうも言っていられない。明日は智也くんがお弁当を作ってきてくれる。今の状態でも彼のお弁当を食べられるように、少しでも食べる練習しておきたかった。
食事するのに練習するって変なのと自虐的に心の中で自分をあざ笑う。そうでもしないと、狂った自分を享受できなかった。
夕食はおにぎりを二つ買った。味はおかかと鮭だ。もちろん一緒にお茶を買うのも忘れない。
ホテルに戻ると、備え付けのサイドテーブルにおにぎりを置いて手を洗う。そして、イスに座ると目の前のおにぎりを見た。
食べ物を見るのが苦痛になったのはいつからだっけと考えるが、今となってはもうわからない。ただ、この一年間でたくさんのことが変わった。生活も、人間関係も、私自身も。元々、どんな風だったか思い出せないくらい変わってしまった。
それでも、智也くんと出会えたことだけはよかったと思えた。彼のために何かをする時だけは、心が温かくなった。だから、彼に喜んでもらうために、明日作ってきてくれるお弁当はおいしそうに食べないといけないと思えた。
まずは、おかかから手に取る。緊張しながらおにぎりを口に運んで、一口食べる。米をかむが、味がしない。まるでゴムを噛んでいるようだ。それでも何度か咀嚼し、なんとか飲み込む。
よかった。食べられる。
そう思った瞬間だった。急に気持ち悪くなってきた。吐き出さないようにお茶を飲む。
「はぁ……はぁ……はぁ……」
大丈夫。食べられる。食べられるから大丈夫と言い聞かせるように心の中で何度もつぶやく。そして、二口目を食べた。よくかんで飲み込む。
大丈夫。私は食べられる。食べられる。そう呪文のように心の中で唱える。
今度は気持ち悪くならない。内心ほっととしながら三口目を口に運ぶ。しかし、口に入れた瞬間、また気持ち悪くなった。慌ててお茶を飲む。お茶で流し込みながら、四口目を食べる。そうやって少しずつ食べていった。
時計を見ると、おにぎりを一個食べるのに三十分かかっていた。
無理矢理お茶で吐き気を抑えているから最悪の気分だった。それでも、食べられたことが今は嬉しい。
これなら明日もきっと大丈夫と自分に言い聞かす。言い聞かせながら心の底ではわかっていた。こんな状態でお弁当を食べられるわけがないということを。
「大丈夫。きっと大丈夫。絶対大丈夫……」
今度は言葉に出して、自分に言い聞かせる。
智也くんのために明日は絶対お弁当をおいしそうに食べよう。
その考えがどれだけおかしいことなのか自分でもわかっている。でも、そうするしかなかった。
私は彼が嬉しいと思ってくれることをしないといけない。そう自分に言い聞かせる。
いつか私は智也くんを殺さなければならないのだから。
期限はあと一ヶ月。
時間は嫌でも迫ってくる。ならせめて、それまでは彼に幸せでいてほしかった。
それが私にできるせめてもの罪滅ぼし。
そう思うと、彼のために何だってできる気がした。
「智也くんのために頑張ろう」
言葉にした覚悟は、どこかに届くわけでもなくただ空中に消えた。
特に古典がきつかった。初老の男性の先生のゆったりした話し方が眠気を誘うのか、ちんぷんかんぷんな内容が思考力を奪うのかわからないが、とにかく眠たかった。午後の古典はどうして壊滅的に眠たくなるんだろうという疑問を、この一年で何度浮かべたかわからない。うつらうつらと飛びそうになる意識を何とかつなぎ止めながら、私はなんとか午後の授業を終えた。
荷物をまとめて帰ろうとすると携帯電話が鳴った。見ると智也くんからのメールだった。
『ごめん。急に用事ができたので先に帰ってて』
「どうしたんだろ」
急な用事が入ることは初めてだったので不思議に思う。しかし、そういうこともあるのだろうとすぐに納得する。
一人で帰ろうと思い、私は鞄を持って昇降口へ向かった。智也くんと付き合うまでは一人で帰ることも多かったので、昔に戻ったと思えば気にならない。一緒に帰れないことが残念でないと言えば嘘になるけれど。
下駄箱からローファーを取り出し、スリッパをしまって履き替える。すると、背後から声を掛けられた。
「未世ちゃん」
振り返ると、そこには赤いアンダーリムの眼鏡をかけた小柄な少女が手提げ鞄を持って立っていた。鞄には小さなテディベアのぬいぐるみのキーホルダーがついている。
「鈴恵。どうしたの?」
彼女が草川鈴恵。智也くんと付き合うためにいろいろ助けてもらった、私にとっては命の恩人といっても過言ではない大切な存在だった。
「今日は一人なの?」
「うん。鈴恵も?」
「うん。文くんはバイトで先に帰っちゃった。智也は?」
文くんとは鈴恵の彼氏の時岸帆文(ときぎしほぶみ)くんのことだ。中学生の頃から付き合っているらしい。
「用事ができたから先に帰っててだって」
「そうなんだ。珍しいね」
「じゃあ、久しぶりに一緒に帰ろっか」
鈴恵の提案に私は頷く。鈴恵とは智也くんのことを相談していた時に何度か一緒に帰ったことがあった。
「最近、智也とはどう?付き合ってもうすぐ一ヶ月でしょ」
歩き始めてすぐに鈴恵が尋ねてくる。彼女の目は輝いていた。
「どうって……」
そう言われて私は返事に困った。こういう時にどう答えていいのかわからない。
楽しい。嬉しい。どちらもなんだかちょっと違う気がした。しばらく考えていると、私の口からぽつりと言葉が漏れた。
「なんだか安心する」
それは質問の答えとしてはちぐはぐなものだったが、鈴恵は納得してくれたらしい。
「そっか」
私の答えを聞いて鈴恵はニコニコと笑っている。一方、私は外の空気は冷たいのに顔が熱くなっていた。きっと赤くなっているだろう。恥ずかしさから私は俯いた。
智也くんと一緒にいる時は心が安らぐのは事実だった。しかし、同時に心の奥底では別の思いも浮かんでいる。
私はこれから殺さなければいけない人に何を感じているんだろう。
わき上がってくる暗い気持ちにふたをする。この話題は良くなかった。きっと堂々巡って暗い気持ちがわき起こる。だから、どうにか話題を変えようと私は思考をフル回転させ、当たり障りのない別の話題を探す。
「そういえば、もうすぐテストだね」
三週間後には期末テストがあった。少し早い気もするが仕方ない。暗い気持ちから逃れるために、なりふり構ってはいられなかった。
「鈴恵は前のテストどうだったの?」
「二〇位くらいだったかな」
私の学年は二八〇人いるから、その中で二〇位というのはすごい。ちなみに、私は一〇四位だった。
「すごい。やっぱり鈴恵は賢いんだね」
「そんなことないよ。文くんの方が上だし」
「えっ、そうなの」
時岸くんには失礼だが意外だった。鈴恵と時岸くんを比べたらどちらかというと鈴恵のほうが賢いイメージがあったからだ。なぜかと言われると根拠はないのだが、がっしりした体つきでスポーツが得意そうな時岸くんと眼鏡をかけて本が好きな鈴恵という、二人の見た目から勝手にそう判断していた。
「意外だった?」
鈴恵は私を見てイタズラっぽく微笑んだ。私は図星をつかれ、あわてて首を振る。
「そんなことないよ……」
「ふふふ。よく言われるからいいよ。実は文くんはすごいんだ」
嬉しそうに鈴恵は語る。これも一種ののろけなんだろうか。
「でも、きっと眼鏡成分が足りないんだね」
ついでによくわからないことも言って一人で笑っている。鈴恵は時々、訳がわからないことを言う。
「ごめんね。なんだかのろけちゃったかな」
「そんなことないよ」
「ふふふ。じゃあ、今度は未世ちゃんにのろけてもらおっかな」
「え?」
鈴恵の言葉に私は驚く。そもそも、どうやってのろけていいのかわからない。
「未世ちゃんは智也とデートしてどうだった?」
そう言われて私は間の抜けた声を上げてしまう。
「へ?」
鈴恵はおそらくこの前ようやく初めてデートをした話を聞きたいのだろう。付き合って一ヶ月経ってようやく初めてデートするのは遅い気もするが、お互いなかなか予定が合わなかったり、デートって何をするのかわからなくてなかなか踏み出せなかったりと、色々な理由があって時間がかかってしまった。
デートの内容はというと、一緒に映画を見に行って、買い物をするという、ごく普通のものだったと思う。
「智也から聞いたよ。この前、映画を見に行ったって」
「うん。見たけど」
「今話題のあれを見たんだよね。面白かった?」
一緒に見たのは恋愛映画だ。高校生の男の子が同じクラスの女の子の秘密を知ってしまい、そこから関係を深めていくというよくある物語だった。その秘密も重い病気に冒されていて余命半年だというもので、これもよくある話だ。でも、雨が降る中、雨宿りをしていた高架の下で抱き合い、キスするシーンはとてもきれいだった。そんな風に私たちもしたいと思えるくらいに印象的で、美しかったことを覚えている。残念ながら、そのデートの時は何もなかったけど。
「それなら面白かったけど」
「いいなぁ。じゃあ、デートも楽しかった?」
そう言われて、私は口をつぐむ。楽しかったと言えば、本当だ。智也くんとデートをするのは楽しかった。心が温かくなって、自然と笑えて、現実から目をそらせることができて、不思議な気分だった。
「楽しかった……」
私はぽつりと本音をつぶやく。でも、心の中では別の思いが浮かんでいた。
いずれ殺さなければならない相手に、そんな気持ちを抱くのは異常なのかな。
ヘドロのようなどろっとした感情はぐるぐると心の中で滞留していく。
「未世ちゃん、どうかした?」
そう言われて私ははっと気づいた。
「ごっ、ごめん。ちょっとぼーとしていた」
「デートの時を思い出していたの?」
「えっ?ああ……うん。そんなところ」
全く違うが、話がややこしくなるだけなので私は頷くことにする。
「来週からテスト前だから遊びに行けないし、デートするなら今週だね」
テスト週間でも遊びに行く人は行くんじゃと思ったがあえて口には出さない。きっとそういう時に、生真面目に勉強に励むのが鈴恵なのだろう。
「鈴恵はデートするの?」
「どうかな。土日はバイトがあるから予定はしてないけど、もしかしたら夜に会うかも」
夜に会って何をするんだろうと思うが、私はあえて口には出さない。油断するとすぐのろけだすのが鈴恵の悪い癖だった。
「未世ちゃんは?」
「まだ何も予定してないけど」
「そうなんだ。じゃあ、誘ってみたら」
それもよい思う。でも、どう誘ったらよいのか、どうデートしたら良いのかよくわからない。前回のデートは全て智也くんが計画してくれていた。彼に喜んでもらうため、鈴恵に聞いてみることにする。
「そういえば、鈴恵はデートに誘う時って、どうしてるの?」
「うーん、遊びに行こう、とか」
なんだか友だちみたいだなと思う。きっと二人は長く付き合っているからそうやって気楽に言えるのだろう。
「あと、行きたい店があるから一緒に来て、とか」
これは私でも言えそう。
「デートしよう、とか」
シンプルな誘い方もあるんだ。
「へい、彼氏。今、暇?とか」
どんなキャラなんだろう。
「今すぐ会いたいのとか、かなぁ」
急にしおらしくなったし。
鈴恵の言葉を聞いていると何とも言えない気持ちになる。とりあず、後半は参考にならないことだけはわかった。鈴恵なりの冗談だろう。冗談にしても意味不明だがきっとそうだ。
とりあえず、話題を変える。
「そうなんだ。じゃあ、デートするとしたらどこに行くの?」
「私は図書館とか本屋が多いかな。二人とも本好きだし。あまりお金がかからないし」
「図書館で何するの?」
「え?本を読むんだけど」
鈴恵は当たり前のように答える。それはわかる。確かに鈴恵と時岸くんが図書館で背中合わせに本を読んでいる姿を想像すると意外と絵になった。けれど、私たちがそれをしてもうまくいく気がしなかった。なによりデートらしくない気がする。デートらしいものがなんなのかは、よくわからないけれど。
「図書館以外だと、どこに行くの?」
「うーん、あとは一緒に散歩したり、家でまったりしたりするかな」
なんだか熟年夫婦みたいな答えが返ってきた。言われてみると鈴恵と時岸君は熟年夫婦みたいな雰囲気を感じる。無言で通じ合っていそうなところとか、なんでもあれで通じそうなところとか、お互いのことをよくわかっていそうなところとか、のろけても平気なところとか挙げればきりがない。そのくせ時折、初々しく恥ずかしがったりするのだから手に負えない。
「未世ちゃん。どうしたの?」
突然。鈴恵に声を掛けられ私は気を取り戻す。
「ごめん、いろいろ考えてた」
「智也とどうデートするか考えてたの?」
全然違うが、とりあえずそういうことにしておく。
「ねぇ、智也くんに楽しんでもらえるにはどうしたらいいと思う?」
その問いに鈴恵はなぜか一瞬驚いたような表情を浮かべた。
「え?突然どうしたの?何か上手くいってないの?」
「あ、いや、そういうわけじゃないんだけど、私なんかといて智也くん楽しいのかなって不安で」
とってつけたような言い訳を口にする。不安という言葉を口にしてようやく私は今の自分の気持ちの正体がわかった。結局のところ、私はつまらない自分が嫌われないか不安だったのだ。
「そっか、不安かあ」
鈴恵は頷くと、少し考えるように宙を見てから口を開く。
「未世ちゃんといる時の智也は楽しくなさそうなの?」
智也くんといる時のことを想像して、私は首を振った。そんな気配は感じない。最も、彼が演技をしているのなら話は別だが、見た目からはそうは思えない。
「未世ちゃんは楽しくないの?」
「そんなことない」
私はすぐに首を振る。彼といる時はとても楽しい。これだけはなんと言われようと断言できた。
「じゃあ、どうして不安なの?」
鈴恵は真っ直ぐに私を見つめると、不思議そうに首をかしげた。その理由を私は答えられない。
私は私は智也くんに嫌われてはいけない。だから、私は彼に楽しんでもらわなければならない。
そんなこと言えるはず無かった。
しばらくの間、沈黙が流れる。その沈黙を破ったのは、鈴恵だった。
「未世ちゃんは智也のことが本当に好きなんだね」
「え」
あっさり言われた言葉に私は顔が赤くなる。いざ面と向かって言われると恥ずかしくなって私は俯くことしかできない。
「好きだからこその不安ってあるよね。私もそういう時期があったから。うんうん、青春だねぇ」
そんな私を気にせずに鈴恵は嬉しそうに何度も頷く。
私はあんたも絶賛青春中でしょと思うが、あえて口にはださない。口に出したらきっと泥沼化することが目に見えていた。こういう時に大人の対応ができるってすばらしいと思う。
「いいから、話を戻すよ」
憮然とした表情で私が言うと、鈴恵は笑いながら話題を戻した。
「ごめん、ごめん。智也に楽しんでもらう方法だね」
「うん」
「例えば、智也の好きなことをするとかどう」
「好きなこと?」
智也くんの好きなことを思い浮かべる。すぐに思い浮かんだのは料理だった。
「料理?」
「そう。例えば、智也にお弁当を作ってきてもらうとかどう。きっと喜ぶよ」
その言葉に私は今日のお昼に智也くんとした約束を思い出した。
「あ……明日お弁当を作ってきてもらう約束したんだ」
「おお、智也もやるね」
「そうなのかな。私はもらう側だし」
これだと私は智也くんに何もあげていない。もらってばかりだ。
「なら、代わりに何かを返したらいいんだよ」
「何か?」
「うん。してほしいことをしてあげたり、好きなものをあげたり」
「……してほしいこと?」
考えてみても想像できない。私が困っていると鈴恵が口を開いた。
「聞いてみたら?好きな人のことを知るのは楽しいよ」
愛らしく鈴恵は笑う。
「うん、そっか」
私の中に何かがすとんと落ちる。そこで、住宅街と繁華街に分かれる十字路に着いた。鈴恵とはここから帰り道が違った。
「じゃあ、私こっちだから。色々教えてくれてありがとう」
「どうしたしまして」
そこで鈴恵は何かを考えるように一瞬、間を開けると、おずおずと口を開いた。
「二人はよく似ているから、お似合いだと思うの」
「どうしたの?突然」
鈴恵の言葉に私はとまどう。似ているという意味がよくわからなかった。
私と智也くんの似ている所ってんなにかあったっけと思うが、思い浮かばない。
「ちょっとそう思っただけ。だから、応援してるよ」
いたずらっぽく鈴恵は笑っている。真っ直ぐに向けられる言葉はくすぐったい。そんな真っ直ぐな言葉にどう返していいかわからず、とりあえずお礼を言った。
「……ありがとう」
「じゃあ、また明日」
そう言って私たちは手を振って別れた。そして、ホテルへ向かった。
途中で、コンビ二に寄って夕食を買う。いつもは何も食べられない日が続くが、今回はそうも言っていられない。明日は智也くんがお弁当を作ってきてくれる。今の状態でも彼のお弁当を食べられるように、少しでも食べる練習しておきたかった。
食事するのに練習するって変なのと自虐的に心の中で自分をあざ笑う。そうでもしないと、狂った自分を享受できなかった。
夕食はおにぎりを二つ買った。味はおかかと鮭だ。もちろん一緒にお茶を買うのも忘れない。
ホテルに戻ると、備え付けのサイドテーブルにおにぎりを置いて手を洗う。そして、イスに座ると目の前のおにぎりを見た。
食べ物を見るのが苦痛になったのはいつからだっけと考えるが、今となってはもうわからない。ただ、この一年間でたくさんのことが変わった。生活も、人間関係も、私自身も。元々、どんな風だったか思い出せないくらい変わってしまった。
それでも、智也くんと出会えたことだけはよかったと思えた。彼のために何かをする時だけは、心が温かくなった。だから、彼に喜んでもらうために、明日作ってきてくれるお弁当はおいしそうに食べないといけないと思えた。
まずは、おかかから手に取る。緊張しながらおにぎりを口に運んで、一口食べる。米をかむが、味がしない。まるでゴムを噛んでいるようだ。それでも何度か咀嚼し、なんとか飲み込む。
よかった。食べられる。
そう思った瞬間だった。急に気持ち悪くなってきた。吐き出さないようにお茶を飲む。
「はぁ……はぁ……はぁ……」
大丈夫。食べられる。食べられるから大丈夫と言い聞かせるように心の中で何度もつぶやく。そして、二口目を食べた。よくかんで飲み込む。
大丈夫。私は食べられる。食べられる。そう呪文のように心の中で唱える。
今度は気持ち悪くならない。内心ほっととしながら三口目を口に運ぶ。しかし、口に入れた瞬間、また気持ち悪くなった。慌ててお茶を飲む。お茶で流し込みながら、四口目を食べる。そうやって少しずつ食べていった。
時計を見ると、おにぎりを一個食べるのに三十分かかっていた。
無理矢理お茶で吐き気を抑えているから最悪の気分だった。それでも、食べられたことが今は嬉しい。
これなら明日もきっと大丈夫と自分に言い聞かす。言い聞かせながら心の底ではわかっていた。こんな状態でお弁当を食べられるわけがないということを。
「大丈夫。きっと大丈夫。絶対大丈夫……」
今度は言葉に出して、自分に言い聞かせる。
智也くんのために明日は絶対お弁当をおいしそうに食べよう。
その考えがどれだけおかしいことなのか自分でもわかっている。でも、そうするしかなかった。
私は彼が嬉しいと思ってくれることをしないといけない。そう自分に言い聞かせる。
いつか私は智也くんを殺さなければならないのだから。
期限はあと一ヶ月。
時間は嫌でも迫ってくる。ならせめて、それまでは彼に幸せでいてほしかった。
それが私にできるせめてもの罪滅ぼし。
そう思うと、彼のために何だってできる気がした。
「智也くんのために頑張ろう」
言葉にした覚悟は、どこかに届くわけでもなくただ空中に消えた。
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