押しかけ贄は白蛇様を一途に愛す

阿合イオ

文字の大きさ
上 下
28 / 46
第三章

28 ※

しおりを挟む
 白蛇に手を引かれるがまま、旭は白蛇の腕の中に収まった。
 横抱きに膝の上に乗せられ、白蛇の腕が旭を囲う。
 これほど近くに寄るのは、倒れた日以来だ。

「……あ、」

 首筋に鼻を埋めるように擦りつけられ、旭は声を漏らす。
 衿を開けば、白蛇のさらりとした髪が肩を撫でた。

(白蛇さまの、心臓の音がする……)

 人の姿を取っているだけで、機能があるのか旭には分らない。
 それでも、規則正しい音を感じて、旭は安堵する。
 背中を支える白蛇の手に、腰のあたりからこみ上げるものがあった。

「ぅ、あ、」

 ふいに、首筋を舌が這った。ぬるりと舐められ、旭は肩を震わせる。
 舐めたところに、今度は唇が当てられた。ぢゅ、と音がするほど強く吸われて、旭は腰から力が抜ける。

「ん、……っ」

 ひり、とした痛みがあった。

「……痛むか?」

 耳元で問われ、旭は「ひ、」と小さく息を飲む。
 甘い痺れが体を駆け巡って、耳がじわりと熱を持った。

「い、え……大丈夫です、っ」

 ゆるゆると首を横に振ると、再び首筋に唇が寄せられる。
 二度、三度と強く吸われ、吸われたところがじくじくと熱い。

(もっと、色んなところを、触ってほしい……)

 はしたない、願いだった。
 今すぐ全てを曝け出してしまいたい。全てに触れてほしい。
 ぎゅっと白蛇の衣服に縋りつく。
 その願いが、ばれてしまったのだろうか。
 背中に這わされていた手が、つう、と上に上がってきた。

 肩を掴まれ、ぐっと押される。
 されるがまま、旭は倒れた。

 頬を滑る白蛇の手に、旭は恍惚の表情を浮かべる。
 衿が、白蛇によって開かれた。
 あらわになった鎖骨に、白蛇がまた唇を寄せる。

「ぁ、う……、」

 するりと手が差し入れられて、旭の上半身を確かめるように触っていく。
 以前、井戸で全裸をうっかり見られてしまった時のように、肋骨のあたりに触れる。

「やはり、少し肉付きが良くなったな」
「あっ、あ……ッ」

 すり、と親指が胸の突起を掠めて、旭はびくんと跳ねた。

(白蛇さまが触れたところが……あつい、)

 一度触られただけなのに、尖りきったそこにまた触れてほしくなってしまう。
 そこに唇が寄せられるのを想像しただけで、皮膚の下にじわりと気持ちよさが広がった。
 なのに、白蛇は再び尖りには触れてくれず、腕や、肩に触れる。

(どうして……っ)

 もっと、もっと。
 触って、舐めて、弄ってほしい。
 そう願って、旭は気づく。自分が、白蛇に欲情しているということに。

(そうか……おれ、白蛇さまに、)

 自覚すると、もうだめだった。

「あ、し、しろへび、さま……っ」
「……なんだ」
「お、おれ……、ご、ごめんなさい……っ」

 すり、と腿を擦り合わせた動きに気づいたらしい白蛇が、少し起き上がって旭の下腹部に視線を落とした。

「――ああ。兆していたのか」

 言葉にされて、旭はかっと頬を赤くした。

「ご、ごめんなさい、おれ……。白蛇さまに、匂いをつけてもらってただけなのに……っ」
「…………そうだったな」

 苦虫を噛み潰したような顔をした白蛇を見て、旭は瞳にじわりと涙を貯めた。

(どうしよう……、さすがに嫌われたかも……!!)

「……生理現象だろう。気にするな」
「えっ、あ、……ひぅっ!」

 再び覆いかぶさった白蛇が、旭の片足を掴んで広げた。
 旭が状況を把握する前に、下着越しにそこを撫でられ、旭は悲鳴に近い短い声を上げる。

「あ、だめ、だ、め……っ」

 すり、すり、と擦られ、旭は頭を振った。
 びくびくと内腿が震える。

「楽にしてやろう」
「ぁあッ」

 下着を緩められ、下着の中で窮屈そうにしていたそれが飛び出す。
 ――自身の陰茎が、憧れの神様に握られている。
 旭はその事実に、気絶しそうになった。

「だめ、き、汚い……っ」
「風呂に入っただろう」
「そ、うです、けど……っ!そうじゃな、あっ、ぅっ」

 くぷりと零れる先走りを全体に擦りつけるように上下され、旭の抵抗はあえなく失敗に終わる。

(だってこんな、き、きもちいい……っ)

 欲情している相手本人に触られて、本気で嫌なわけがない。
 ただ、神様という存在に触れられていることが、よくないことをしている気分にさせる。

(村ではずっと、であることを、強いられてきたのに……)
 
 男女が交わってはいけない。清らかでいなければならない。
 そうやって育ってきた旭にとって、性欲の処理というものは事務的なものでしかなかった。
 ずっと溜めておくと病気になるからという理由で、特に何かに欲情することもなく、ただ病気にならないためだけの処理。
 そのはず、だったのに。

「も、もう、出ちゃ、だめっ、あ、ああっ」
「ああ、出せ」

 せり上がってくるものを耐える術など知らない。
 白蛇の声に呼応するようにあっさりと精を吐き出した旭は、ぐったりと体の力を抜いた。

「……は、ぁ……は、」

 胸を大きく上下させて深く呼吸をして、旭は白蛇をぼんやりと視界に入れた。
 白蛇は袂から手拭いを取り出して、手を拭いている。

(手を……拭いて……)

「――あああっ!!」

 旭は大きな声を出して、勢いよく飛び起きた。

「うそ、白蛇さまの、手に……っ!!」
「言っただろう、気にするな、と」
「だめ、だめです!ちゃんと手を洗いましょう!おれ、桶を……っあ、」

 立ち上がろうとして、旭はへたりとその場に座り込んだ。

「腰が抜けて立てなくなったか?」

 白蛇が愉快そうに口角をあげる。

「~~~~~~っ!!」

 旭はその場にうずくまり、声にならない悲鳴を上げた。


しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。

カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。 今年のメインイベントは受験、 あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。 だがそんな彼は飛行機が苦手だった。 電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?! あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな? 急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。 さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?! 変なレアスキルや神具、 八百万(やおよろず)の神の加護。 レアチート盛りだくさん?! 半ばあたりシリアス 後半ざまぁ。 訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前 お腹がすいた時に食べたい食べ物など 思いついた名前とかをもじり、 なんとか、名前決めてます。     *** お名前使用してもいいよ💕っていう 心優しい方、教えて下さい🥺 悪役には使わないようにします、たぶん。 ちょっとオネェだったり、 アレ…だったりする程度です😁 すでに、使用オッケーしてくださった心優しい 皆様ありがとうございます😘 読んでくださる方や応援してくださる全てに めっちゃ感謝を込めて💕 ありがとうございます💞

国を救った英雄と一つ屋根の下とか聞いてない!

古森きり
BL
第8回BL小説大賞、奨励賞ありがとうございます! 7/15よりレンタル切り替えとなります。 紙書籍版もよろしくお願いします! 妾の子であり、『Ω型』として生まれてきて風当たりが強く、居心地の悪い思いをして生きてきた第五王子のシオン。 成人年齢である十八歳の誕生日に王位継承権を破棄して、王都で念願の冒険者酒場宿を開店させた! これからはお城に呼び出されていびられる事もない、幸せな生活が待っている……はずだった。 「なんで国の英雄と一緒に酒場宿をやらなきゃいけないの!」 「それはもちろん『Ω型』のシオン様お一人で生活出来るはずもない、と国王陛下よりお世話を仰せつかったからです」 「んもおおおっ!」 どうなる、俺の一人暮らし! いや、従業員もいるから元々一人暮らしじゃないけど! ※読み直しナッシング書き溜め。 ※飛び飛びで書いてるから矛盾点とか出ても見逃して欲しい。  

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

【完結】愛執 ~愛されたい子供を拾って溺愛したのは邪神でした~

綾雅(ヤンデレ攻略対象、電子書籍化)
BL
「なんだ、お前。鎖で繋がれてるのかよ! ひでぇな」  洞窟の神殿に鎖で繋がれた子供は、愛情も温もりも知らずに育った。 子供が欲しかったのは、自分を抱き締めてくれる腕――誰も与えてくれない温もりをくれたのは、人間ではなくて邪神。人間に害をなすとされた破壊神は、純粋な子供に絆され、子供に名をつけて溺愛し始める。  人のフリを長く続けたが愛情を理解できなかった破壊神と、初めての愛情を貪欲に欲しがる物知らぬ子供。愛を知らぬ者同士が徐々に惹かれ合う、ひたすら甘くて切ない恋物語。 「僕ね、セティのこと大好きだよ」   【注意事項】BL、R15、性的描写あり(※印) 【重複投稿】アルファポリス、カクヨム、小説家になろう、エブリスタ 【完結】2021/9/13 ※2020/11/01  エブリスタ BLカテゴリー6位 ※2021/09/09  エブリスタ、BLカテゴリー2位

Switch!〜僕とイケメンな地獄の裁判官様の溺愛異世界冒険記〜

天咲 琴葉
BL
幼い頃から精霊や神々の姿が見えていた悠理。 彼は美しい神社で、家族や仲間達に愛され、幸せに暮らしていた。 しかし、ある日、『燃える様な真紅の瞳』をした男と出逢ったことで、彼の運命は大きく変化していく。 幾重にも襲い掛かる運命の荒波の果て、悠理は一度解けてしまった絆を結び直せるのか――。 運命に翻弄されても尚、出逢い続ける――宿命と絆の和風ファンタジー。

悪役令息の七日間

リラックス@ピロー
BL
唐突に前世を思い出した俺、ユリシーズ=アディンソンは自分がスマホ配信アプリ"王宮の花〜神子は7色のバラに抱かれる〜"に登場する悪役だと気付く。しかし思い出すのが遅過ぎて、断罪イベントまで7日間しか残っていない。 気づいた時にはもう遅い、それでも足掻く悪役令息の話。【お知らせ:2024年1月18日書籍発売!】

【BL】どうやら精霊術師として召喚されたようですが5分でクビになりましたので、最高級クラスの精霊獣と駆け落ちしようと思います。

riy
BL
風呂でまったりしている時に突如異世界へ召喚された千颯(ちはや)。 召喚されたのはいいが、本物の聖女が現れたからもう必要ないと5分も経たない内にお役御免になってしまう。 しかも元の世界へも帰れず、あろう事か風呂のお湯で流されてしまった魔法陣を描ける人物を探して直せと無茶振りされる始末。 別邸へと通されたのはいいが、いかにも出そうな趣のありすぎる館であまりの待遇の悪さに愕然とする。 そんな時に一匹のホワイトタイガーが現れ? 最高級クラスの精霊獣(人型にもなれる)×精霊術師(本人は凡人だと思ってる) ※コメディよりのラブコメ。時にシリアス。

【完結】お前らの目は節穴か?BLゲーム主人公の従者になりました!

MEIKO
BL
第12回BL大賞奨励賞いただきました!ありがとうございます。僕、エリオット・アノーは伯爵家嫡男の身分を隠して、公爵家令息のジュリアス・エドモアの従者をしている。事の発端は十歳の時…我慢の限界で田舎の領地から家出をして来た。もう戻る事はないと己の身分を捨て、心機一転王都へやって来たものの、現実は厳しく死にかける僕。薄汚い格好でフラフラと彷徨っている所を救ってくれたのが我らが坊ちゃま…ジュリアス様だ!坊ちゃまと初めて会った時、不思議な感覚を覚えた。そして突然閃く「ここって…もしかして、BLゲームの世界じゃない?おまけにジュリアス様が主人公だ!」 知らぬ間にBLゲームの中の名も無き登場人物に転生してしまっていた僕は、命の恩人である坊ちゃまを幸せにしようと奔走する。だけど何で?全然シナリオ通りじゃないんですけど? お気に入り&いいね&感想をいただけると嬉しいです!孤独な作業なので(笑)励みになります。 ※貴族的表現を使っていますが、別の世界です。ですのでそれにのっとっていない事がありますがご了承下さい。

処理中です...