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第一章 政略結婚

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会場に戻るとちょうどダンスが始まるところだった。みんなパートナーを誘っているところだ。

「マリナ。一曲お相手願えますか?」

「よろこんで」

ファーストダンスの曲はワルツだった。リードしながらマリナと踊る。

「マリナ、上手いな」

「ふふ。ありがとうございます。キース様をお上手ですよ」

そうして一曲踊り終わると周囲から拍手が湧き挙がる。気が付かなかったがどうやら注目されていたらしい。

「ありがとうございました」

「ああ。飲み物を取ってくる。ここで待っていてくれ」

マリナを壁際に連れていき、飲み物を取りに行く。
アルコールは飲めるだろうかと思いながら戻ると、マリナはいなかった。

どこに行ったのかと少し焦りながら探すと、男と踊っていた。さわやかな雰囲気の美形の男と楽しそうな笑顔で踊る姿はとても絵になっていた。親しそうで俺に向ける笑顔とは違った。

マリナは俺の妻だ。他の男には渡さない。

「と、思っているのがまるわかりな顔をしているぞ、キース。」

「…っ殿下!」

いつからいたんだ?

「仕事でもないんだ。いつも通りで構わない。ところでキース、男の嫉妬は醜いらしいぞ?」

「…嫉妬なんてしていない」

「嘘つけ。まさかまだ無自覚なのか?」

「無自覚?何のことだ?」

「噓だろう…本当に無自覚だな。カレンとの賭けに負けた…」

「キース、お前マリナ嬢のことが好きだろう。女性として」

…!好き?マリナのことが女性として?……たしかにそれならこれまでの感情も先程のモヤモヤとした気持ちにも説明がつく…

「好き…?マリナのことが…」

「やれやれ。やっと自覚したか?」

フランツに言うのは癪だが…

「ああ。だが何故フランツが俺の気持ちを知っている?俺自身、今自覚したのに」

「気づいていないのはお前だけだと思うぞ。感情が駄々洩れだ」

そうなのか!?ではマリナも…

「安心しろ。彼女は相当鈍感らしいからな」

「それは安心していいのか?」

「ダメだろうな。ククッ!彼女は人気があるから早くしないと他のやつにとられるぞ?」

ハッ!そういえばマリナは他の男と踊っているのだった!次の曲が始まるまでに迎えに行かなければ!

「俺はマリナのところへ行く!それでは!」

焦っていた俺には、

「こちらも無自覚だろうが彼女もお前のことが好きだろうよ。…さて、世話焼きはこれくらいにして早く戻らないと賭けに負けた罰ゲームがひどくなる。それだけはごめんだ…!」

という声は聞こえていなかった…
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