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第二章

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「安心しろ、俺も恥ずかしい」
「えっ!リュード様の中にもそんな感情あったのですね?あ、いえ、そうではなくて。なんでリュード様があんなに嬉しそうだったのですか?」

失礼だな。それは俺の台詞だし。俺の方がリリアにも羞恥という感情が少しでもあったんだなと言いたい。
それに戸惑っているリリアも新鮮で可愛いな。

「俺は結婚当初、リリアのことを冷たく突き放した。だがそんなことを気にも留めずに楽しそうに過ごすリリアを見て、罪悪感が湧いたんだ」
「……」
「今まで俺にとっての女と言うのは、媚びへつらい、擦り寄り、権力しか見ていない奴だった。幼いころのある日、リュマベル城で侍女をやっていた者が夜になって下着姿で押し倒してきた。すぐに逃げたし解雇になったがそれもあってか女性は嫌いだった」

まだまともに成長もしていない俺を襲おうとした女のことは、今となってはもうどんな奴だったかも忘れた。だがそれでも幼かった俺が女性嫌いになるのは十分すぎる理由だったと思う。

「……私も、わたくしも昔、あなたと同じようなことがありました。まだ向こうで暮らしていた時のことで、それをきっかけに使用人は必要最低限しか雇わなくなりましたが。……それがどれだけ不快なことかはわたくしにもよく分かりますわ」

リリアもなのか。リリアは贔屓目とかなく誰から見ても可愛いのは分かるので、言われてみれば想像もついてしまう。男である俺よりリリアの方が怖かっただろう。

「……解雇される前に再起不能にしてやりましたが」

……前も思ったが度胸があるというか肝が据わっているな。きっと遠慮なくやったのだろう。同情する気はないが。
続きをどうぞと目で促されたので再び話し始める。

「それでまあ女が嫌いだったし、今も大体の人は無理だ。だがリリアがそういう人間ではないのはすぐに分かった。それからは機会を伺っていたが中々謝る機会が訪れず…許してもらおうとも思っていなかった」
「だから、大帝国でリリアに謝罪し、それが受け入れてもらえて親しくなれたのがとても嬉しかった。リリアの感情や加護などの事情について聞いた時は驚いたが、リリアが気にしているわけでもなさそうだったのでそれでいいかと思ったんだ」

だが違った。感情が人より薄いこと。それを誰より気にしていたのはリリアだと思う。感情が薄いというか、それがどういった感情なのかが分からない、何かの感情なのだと気づくことができないというのもあるのだろう。
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