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第一章

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「姫、お待たせ致しました!」
「そんなに待っていないから大丈夫よ」
「…レイ、ユースゼルクに来ていたのね。姫に調査を命じられていなかった?」

調査とは、ジュリアス様の生誕パーティーの帰りの襲撃のことだ。たしかに言われて見れば何故いるのだろう。少し離れた所にある第二訓練場へ向かいながら話す。

「あっ、報告するの忘れてた……申し訳ございません、姫」
「それは良いけれど…報告って?」
「姫を襲撃するように命じた犯人の目星はつきました。後は動き出したら証拠を取るだけですが、姫が王国に戻るまでは何も動くつもりはないようなので、取り敢えずここへ戻って来ました」
「そう。…それで犯人は誰だったの?」
「ロック伯爵令嬢とソーティク侯爵です。すでに接触して信頼を得ましたので、姫が戻るまで動くつもりはないのは本当かと。一応俺の記憶を通して"鑑定"して頂けますか?」

"鑑定"は基本加護の一つである。現在皇族ではシモンとシュナが持っている。

「"鑑定"」

レイの記憶の中に確かに彼らの姿がある。わたくしが戻るまで動かないのは本当のようだ。

「真実ね。ありがとうレイ」
「お役に立てたようで何よりです」
「それにしても姫さん、なんで俺達に命じなかったんだ?」
「おい、姫に失礼だぞ」
「レイ、気にしなくていいわ。話し方なんて気にしないもの」
「それで?」
「そうね……だってライは喧嘩っ早いじゃないの」
「ぐっ…」
「それにレイ以外は他の仕事を任せていたもの。ライだってそうでしょう?」
「……」

珍しくライが不満そうにしている。口は良いのか悪いのか良く分からないが、普段はあまり不満を言わない筈なのに。

「それでも呼べば行ったんだけど?」
「でも、その場で目立った行動をされても困るし、レイが適任かな~と」
「…」
「リー姫。良くあることとはいえ、ライは許せないんでしょうよ。ツンデレな所がありますけど、リー姫第一ですしね。実際『姫さんに手を出した奴は誰だ?マジで許せねぇ~!俺が直々に殺ってやる!』とか言ってましたし」
「ちょっとセイっ!余計なことを言わないでくれる!?」

…セイの言っていることは本当だろうか?あのライがそんなこと言っていたようには思えない。

「それは本当?ライ」

少し首を傾げて聞くと、ライは顔を真っ赤にしながら叫んだ。

「~~!っ、ああそうだよ!俺達の大事な姫さんを殺そうとするとか本当信じられねぇっ!悪い!?」
「あ、ライくんがデレた!」
「うるせぇ、アイっ!」
「…ライ」
「…はい」
「心配してくれてありがとう。わたくしはそんなに弱くないから心配しなくて大丈夫よ?」

正直、とても嬉しかった。心配してくれたことが。なんだかんだいって優しいライのことをわたくしも大切に思っている。
そんな思いを込めて言うと、ライはガックリとうなだれ、他の五人は残念なものを見るようにわたくしに目を向けてきた。

(貴方達の方がよっぽど失礼な気がするわ)
(ライも報われないな…)
(ここまで言ってこの反応なの?あれ得なくない?)
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