【第2章完結】最強な精霊王に転生しました。のんびりライフを送りたかったのに、問題にばかり巻き込まれるのはなんで?

山咲莉亜

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番外編

セインの悩み②

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 ◇

「なんというか、ナギサ様と一緒にアリス嬢の話をしているとこれ以上ないくらい彼女を溺愛しているのが伝わってきますね」
「大好きだからねぇ」

 ナギサ様が女子生徒に告白されているところは良く見かけます。あり得ないほどに高頻度なのですよ。恐らく彼女も数えきれないくらいそのような場に遭遇してきたのではないでしょうか?
 冷たいところや残酷なところもありますが、やっぱり滲み出る心根の優しさが隠しきれていないんですよね。容姿も傾国並みにお美しいですが性格も女子生徒に人気な理由の一つなのでしょう。

「これほど愛されて、きっとアリス嬢は幸せでしょうね」
「そうだと嬉しいな」

 アリス嬢を溺愛しておられるのは火を見るよりも明らかです。以前ナギサ様が告白されているところに遭遇したアリス嬢を見かけましたが、普通なら不安になるであろう現場に遭遇しても呆れた様子を見せるだけで悲しんでいるようには見えませんでした。それは何があってもナギサ様の愛情が他へ向くことがないと信じているからなのでしょうね。僕が彼女の立場でも絶対的な信頼を寄せると思います。ナギサ様は……彼は、アリス嬢の話をされるとき無意識なのかもしれませんがいつも幸せそうに目を細めておられる。きっと彼女もそれに気付いているのでしょう。

「……で? 俺は話したよ。君はこれからどうするつもりなの?」
「ど、どうするとは……?」
「人生二周目で数百年生きてるけど恋愛はアリス一筋の俺からアドバイス。他の男に奪われる前にさっさと告白しな」

 さ、参考にしていいのか良くないのか微妙な言い方ですね……

「簡単に言いますけど、ナギサ様は緊張や不安はなかったのですか? フラれたらと想像したときの恐怖なども」
「俺はなかったよ。そんなの考えるだけ無駄だし、そんなこと言ってたら一生想いを伝えることなんて出来ないでしょ。フラれたら何度でも伝え続ければ良くない? 告白は一度だけって誰が決めたのー? ……なんてね。俺は何があろうと絶対に諦めるつもりがなかったからこんなこと言えるけど、普通はこうじゃないことくらい分かってるよ」

 ナギサ様らしいですね。自分に絶対的な自信があるんだなと思います。ナギサ様を見ていると彼のすべてが努力から来ているものだと分かるのでこの度胸にも納得です。
 僕が同じだけの努力をしてもこれだけの度胸は身につかないと思いますが。……褒めてませんよ?

「でも婚約者なら尚更告白は早い方が良いんじゃないの? 他の男に取られちゃうよー」
「それは困りますね……」
「そもそもなんだっけ、セインくんの悩み。イレーナちゃんと友人以上の関係になれないことじゃなかった?」

 そう、なんですよね……ナギサ様のおっしゃる通り、いつ候補から外れてもおかしくありません。ですが……

「………このヘタレ」
「はい!?」
「ヘタレって言ったんだよ、鈍感男が。この精霊王たる俺から恋愛事情を聞いておいて、自分はなにもしないとか絶対許さないからねぇ? 君が動かないならいっそ俺が奪っちゃおうか。その気になれば誰でも落とせるよ、俺は」

 俺には魔法という最強の武器があるからね、と言って悪い笑みを浮かべる。この悪役のような笑みを浮かべていても絵画のような美しさなのですから、そりゃあ落そうと思って落とせない相手はいないでしょう。『天は二物を与えず』という言葉をどこかで聞いたことがありますが、ナギサ様は例外なのでしょうか。

「ねぇ、全部口に出てるよ。それともわざと?」
「あ、無意識です」
「あっそ。どうするの? 無理にとは言わないけど大事なものを失いたくないなら手の届くうちに行動した方が良いよー? それとも俺に奪ってほしい? イレーナちゃん、俺は結構好きだよ」
「───ナギサ?」
「わぁっ!? ……っび、びっくり、した……アリス、用事は終わったの?」
「終わったよ。それで、何の話をしていたのかな?」

 叫び声と共にナギサ様の姿が消えたかと思えば、頭上から声が聞こえたので見上げると空中に逃げていたらしく、珍しく本気で驚いた顔をしていました。

 背後から忍び寄ってきた影がアリス嬢やランスロット達だと確認すると、心を落ち着かせようとしているのか胸もとに手を当てたまますぐに降りてこられました。

「……ん? 何のことか分かんなーい」
「『イレーナちゃん、俺は結構好きだよ』」
「ごめん。ごめんなさい。申し訳ございませんでした。……恋愛感情じゃないから許してください。俺が愛してるのは永遠にアリスだけだよ?」
「……謝るのが早すぎて何も言えないんですけど。ただの冗談。最初から疑ってないから気にしないで」

 アリス嬢の言葉を聞いたナギサ様の謝罪まで一秒もありませんでしたね。万が一にでも疑われたくないという気持ちがひしひしと伝わってきます。
 ……と、それはともかく…………

「それは良かった。みんなお疲れ様ね。それとイレーナちゃんも一緒だったんだ。もしかして俺たちの話を聞いてた?」
「いえ、お二人がお話ししているのは見えましたけれど、私はアリスほど耳が良いわけではありませんので内容までは聞こえませんでしたよ」
「そっか。セインくん、聞かれてなくて良かったね」
「本当に」

 アリス嬢の隣に立っていたイレーナ嬢。こんな形で恋心を知られることになったらどうしようかと思いました。

「まあセインくん、真面目にアドバイスすると今の関係を終わらせたいとか自分の気持ちを伝えたいと思うのなら、自分のタイミングで良いから後悔のないようにね。もし悪い結果になったら、その後何度でもチャレンジできるように俺が心を鍛えてあげる」
「……はい。ありがとうございます」
「何の話だ?」
「みや……エリオットくんは黙ってな」
「ひどいな。こいつに恨みでもあるのか?」
「ランスロットくんもうるさい」

 理不尽ですね。少し恥ずかしそうに目を逸らしておられますし、真面目な話は自分らしくないとでも思っているのでしょうか。

 僕はそんなことないと思いますけどね。こうして相談に乗ってくださったり、茶化しつつ最後はまともな意見をくださるのですから。

「セイン様、何の話をしておられましたの?」
「そうですね……近いうちに教えて差し上げますよ」
「そうですか? 楽しみにしていますね!」
「ええ」


ーーー
お久しぶりです、山咲莉亜です。番外編『セインの悩み』を読んでくださりありがとうございました!

このお話は少し前に書いていたのですが、ずっと公開するタイミングを窺っていたんです。本当は今日公開する予定はなかったのですが実は今日、12月9日は『山咲莉亜』の誕生日だったことが分かりまして。つまり、私が小説を書き始めてちょうど一年になるわけです。

この一年、楽しんでいただける小説を書こうと頑張ってきました。まだまだ成長することのできる未熟者ですが、次の一年も読者の皆様に楽しんでいただくことができる、そして私も楽しみながら小説を書けるよう頑張りたいと思います。ちなみに山咲莉亜一年目ではランキング一桁を取ることが出来ましたので、二年目はランキングで一位を取ることを目標にします! これからも精一杯『楽しい』をお届けできるよう頑張りますので、今後ともよろしくお願い致します。  山咲莉亜
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感想 28

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みんなの感想(28件)

真希ひろい
2024.09.24 真希ひろい

X(旧Twitter)のツイートから来ました。
主人公の口調が優しく、ポンポンと展開が進んでいくので、ストレス無く読み進めることが出来ました! 応援しております!

2024.09.24 山咲莉亜

真希ひろい様

感想ありがとうございます!そう言っていただけて嬉しいです(^^)

解除
二位関りをん

はじめまして。作品読まさせて頂きました。
読んでいて楽しさを感じるのと、続きが気になってワクワクします…!
今後も執筆活動頑張ってください!

2024.09.16 山咲莉亜

二位関りをん様

はじめまして。嬉しい感想ありがとうございます!二位関りをん様も応援しています!

解除
牧嶋 駿
2024.09.11 牧嶋 駿
ネタバレ含む
2024.09.11 山咲莉亜

牧嶋 駿様

感想ありがとうございます!個人的に拘っているところなのでそう言って頂けて嬉しいです!

解除

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