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第三章 黒幕と呪い

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「心配かけちゃってごめんね、アリス。見ての通り俺は一日中眠ってたから完全に回復してるよ。それに王としての責任やアルフォンスくん──王太子殿下を大事に思う気持ちもあるから。責任はともかく、自分の大事な人くらいは守りたいよ。俺にそう思わせてくれる人は貴重だからねー。大事な人のためなら俺は命くらいいくらでも懸けられること、アリスは知ってるでしょ?」

 だから辛いのくらい我慢できる。心が壊れてしまって感情が薄い俺の、最も大きな感情が愛なんだから。愛の種類はともかく、自分の大事な人だけは絶対に裏切らないしね。

「本当に大丈夫なの?私、ナギサの『大丈夫』はあまり信用しちゃダメなものだと思っているけど」
「信じてくれて良いよー」
「そう?じゃあナギサ、また倒れちゃったら大変だし貴方は無理をする癖があるのでしばらくの間、魔法の使用禁止令を出します」
「無理はしないよ?俺から魔法を取ったら何が残るのー」

 なんとか説得できない?魔法が使えないと不便で困るんだけど。勝手に使えば良いじゃんって話だけど、すごく心配させてたのは分かってるからあまり強く出られないんだよねぇ。アリスが怒るのは珍しいから尚更。

 俺の言葉に『残るものはたくさんあるでしょう』と呆れていたアリスだけど、次に倒れる寸前まで無理をしたらアリスの言うことを聞くからと言って食い下がると、今回だけだと許してくれた。やっぱりアリスって基本的に俺に甘いよねー。

「じゃあ次、本当に心当たりはないの?恥ずかしいから私に言わせないでほしいんだけど」
「言わなくても良いよ?俺としてはその方が助かるしねぇ」
「んー!今はお触り禁止ですっ!」
「えー」

 一瞬嬉しそうにしてたのにね。別に頭を撫でるくらい良くない?

「アリス、話はちゃんと聞くから書庫に行こうよ。移動しながら話そ?」

 元々俺が火の宮に来たのは禁書室に入るための魔力を回復するため。幸い、禁書室だけはすべての宮と繋がってるからここでも調べ物は出来る。

「分かった」
「あ、アリス。今更だけど家に帰らなくて大丈夫なの?夜だよね、今の時間」

 アリスがいつからここにいたのかは分からない。アリスはどの宮でも好きな時に入れるようにしてるから。だけど俺が起きた時、アリスは七時って言ってたんだよ。
 危機管理ができる年齢ではあるけど、女の子がこの時間から一人で帰宅するのは危なくない?

「帰るなら俺が送っていくよ?話ならまた後日聞くし」
「大丈夫だよ。ナギサのところに行って来たら?って言ってくれたのはお父さん達だからね。だから多分泊まりで明日はそのまま学園に行くことになると思うって伝えておいたの」
「毎度思うけど用意周到だねぇ。俺とは大違い」

 俺がアリスの立場なら親に無断で泊まるか、そうなることが決まってから連絡入れてると思う。俺たちは結構似てるところがあるけど、こういう所は全然違うね。
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