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第3章 動き出す思惑
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「……ん?ナギサ様?」
「さっきぶりだね。今度の会合のために準備をしようと思って禁書室に向かったんだけど、俺も禁書室に入れるだけの魔力はないことを思い出したから少し休みに来た」
「そうか!それなら明日アリス様に心配されないためにもゆっくり休んだ方が良いぞ!」
「そうだねー」
火の宮は久しぶりに訪れた。地の宮は蔵書が豊富で水の宮は水属性の魔法に治癒があるから疲れが癒える。風の宮は常に浄化魔法が掛かっているから落ち着く。気分と用途に合わせて滞在することが多いんだけど、火の宮はあまり来ないんだよねぇ。
火の宮は炎のエネルギーで溢れているため魔力が一番回復しやすい。だけど俺がここに来なければならないほど魔力が枯渇することはよっぽどの事でもない限りあり得ないから。だからあまり来ない。
「……ちゃんと寝るの、久しぶりかもしれない………」
私室に移動して寝台に横になる。ちゃんと寝るのもだけど、こんなに静かなのもいつぶりか分からない。なんだかんだ言ってずっと忙しかったから。
ゆっくり眠れるかな。そう思って目を閉じてみるけど彼と、名前は知らない黒幕のお兄さんとあんな話をした後だからか───
「あー……」
普通に嫌なんだけど。昔のことを思い出してしまう。ほんと、誰が思うだろうねぇ……この世界で最も強いであろう精霊王の俺が、心はここまで弱いだなんて。あの事件以降心が壊れちゃってるから気分が落ち込みやすいんだよねー。ヒビの入ったガラスは少し雑に扱うだけで割れてしまう。俺の精神はそんな感じ。
トラウマらしいものは暗くて狭い所が無理ってことくらいだけど、心が壊されたのはまた別の話だから。今の俺に恐怖感はないんだよ?だけど昔の俺が怖がってる。あの時の記憶は鮮明過ぎるほどに残っているからさ。
「いっそのこと、殺してくれた方が楽だったのにね。体の傷は治っても心の傷だけは簡単に癒えないんだよ……」
というか、生まれてこなければ良かったのに。誰か、俺のことを殺してくれたら良いのに。………なんてねー。
「こんな何も持たない俺にたくさんのものをくれたんだから。アリスの、自分が愛した人の幸せを見届けるまでは……今度こそ死んだらダメだよねぇ」
それに、こんな風に弱ってる姿は誰にも見せたくない。みんなの前では強い俺でありたい。弱い姿を人に見せるなんて俺らしくもないから。
「さっきぶりだね。今度の会合のために準備をしようと思って禁書室に向かったんだけど、俺も禁書室に入れるだけの魔力はないことを思い出したから少し休みに来た」
「そうか!それなら明日アリス様に心配されないためにもゆっくり休んだ方が良いぞ!」
「そうだねー」
火の宮は久しぶりに訪れた。地の宮は蔵書が豊富で水の宮は水属性の魔法に治癒があるから疲れが癒える。風の宮は常に浄化魔法が掛かっているから落ち着く。気分と用途に合わせて滞在することが多いんだけど、火の宮はあまり来ないんだよねぇ。
火の宮は炎のエネルギーで溢れているため魔力が一番回復しやすい。だけど俺がここに来なければならないほど魔力が枯渇することはよっぽどの事でもない限りあり得ないから。だからあまり来ない。
「……ちゃんと寝るの、久しぶりかもしれない………」
私室に移動して寝台に横になる。ちゃんと寝るのもだけど、こんなに静かなのもいつぶりか分からない。なんだかんだ言ってずっと忙しかったから。
ゆっくり眠れるかな。そう思って目を閉じてみるけど彼と、名前は知らない黒幕のお兄さんとあんな話をした後だからか───
「あー……」
普通に嫌なんだけど。昔のことを思い出してしまう。ほんと、誰が思うだろうねぇ……この世界で最も強いであろう精霊王の俺が、心はここまで弱いだなんて。あの事件以降心が壊れちゃってるから気分が落ち込みやすいんだよねー。ヒビの入ったガラスは少し雑に扱うだけで割れてしまう。俺の精神はそんな感じ。
トラウマらしいものは暗くて狭い所が無理ってことくらいだけど、心が壊されたのはまた別の話だから。今の俺に恐怖感はないんだよ?だけど昔の俺が怖がってる。あの時の記憶は鮮明過ぎるほどに残っているからさ。
「いっそのこと、殺してくれた方が楽だったのにね。体の傷は治っても心の傷だけは簡単に癒えないんだよ……」
というか、生まれてこなければ良かったのに。誰か、俺のことを殺してくれたら良いのに。………なんてねー。
「こんな何も持たない俺にたくさんのものをくれたんだから。アリスの、自分が愛した人の幸せを見届けるまでは……今度こそ死んだらダメだよねぇ」
それに、こんな風に弱ってる姿は誰にも見せたくない。みんなの前では強い俺でありたい。弱い姿を人に見せるなんて俺らしくもないから。
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