204 / 241
第3章 動き出す思惑
18
しおりを挟む
「さぁ話は終わりだよ。大人しく俺に──」
「待て、降参する」
「……は?」
聞き間違いだよねぇ?ここまで来て降参とかありえないんだけど。本気で言ってる?なんで?
「いや、別に驚くことでもないだろう。お前がとんでもなく強いことは分かったし、そもそも本気を見せるつもりもなかったんじゃないか?それならやられる前に降参するに決まってる。無駄に痛い思いはしたくないからな」
「……あー、そう。俺の秘密を知ったんだから殺せなくても二度と口を開けないくらいにはしようかなって、思ってたのに。残念」
「さらっと恐ろしいことを言うな。心配しなくても誰かに話すつもりはない。お前は敵だが、お前の闇を言いふらすことで俺たちが得することはないからな。契約してもいいぞ」
「そこまで言うなら良いけど。言いふらされたところで死ぬわけでもないし。でも言わないでねぇ」
「ああ」
拍子抜けなんですけど。こっちは結構頑張って正体を探ってるのにあっさり聞くことになるんだよ?助かるけど素直に喜べないっていうか……
「俺たちの背後にいる人物……お前たちの言う黒幕の正体、それは───だ」
「…えぇ……さすがに予想外なんだけど」
そんなことある?嘘をついているようには見えないし、そもそも契約違反になるからそれは絶対にない。でもさ、こんなの予想できないよ。
彼はこう言った。『黒幕の正体、それは俺の弟だ』、と。
「黒幕が取り仕切っている感じがしてたけど、主従関係とかそういうのではなかったんだね?」
「主従関係だぞ。うちは特殊な家で一家の主になる条件に当てはまっていたのが俺の弟というだけのことだ」
「……よく分からないけど、そう軽率に敵に情報を流して大丈夫?敵である俺が心配するのもおかしな話だけど」
「正体を話した時点でいずれ知られることだろう?今日はこれで手を引いてもらえると助かるが」
「ん。今日はここまでにする。最後にひとつだけ」
俺は過去の記憶が世界によって消されていたから恨みがあったとしても今の俺には何のことか分からない。近いうちに戻るはずだけどね。昔の俺が何をしたのかは分からないよ。だけどこうして周囲から少しずつ崩していくように……こうして手間暇かけてまで俺を殺したい理由があるんだよね、きっと。でもお願い、抗いはするけどどうしても抵抗しきれないなら俺の命は差し出すよ。だから俺の大切な人達には……手を出さないでほしい。
今まで敵の前だからと出来る限り表情を隠していたナギサだが、静かに扇を閉じて赤髪の男に向かって元社長令息らしい綺麗な仕草で頭を下げた。これ以上ないほど、丁寧に。
「……精霊王としてのプライドはないのか?敵に頭を下げるなんて」
「頼み事をしている立場でプライドも何もないでしょ」
「……約束はできないな。だが利用している奴も含めて、何の罪もない者を巻き込むことはしないと最初から話し合って決めている。戦闘中のは仕方ないが」
「そう、ありがと。じゃあねー」
「待て、降参する」
「……は?」
聞き間違いだよねぇ?ここまで来て降参とかありえないんだけど。本気で言ってる?なんで?
「いや、別に驚くことでもないだろう。お前がとんでもなく強いことは分かったし、そもそも本気を見せるつもりもなかったんじゃないか?それならやられる前に降参するに決まってる。無駄に痛い思いはしたくないからな」
「……あー、そう。俺の秘密を知ったんだから殺せなくても二度と口を開けないくらいにはしようかなって、思ってたのに。残念」
「さらっと恐ろしいことを言うな。心配しなくても誰かに話すつもりはない。お前は敵だが、お前の闇を言いふらすことで俺たちが得することはないからな。契約してもいいぞ」
「そこまで言うなら良いけど。言いふらされたところで死ぬわけでもないし。でも言わないでねぇ」
「ああ」
拍子抜けなんですけど。こっちは結構頑張って正体を探ってるのにあっさり聞くことになるんだよ?助かるけど素直に喜べないっていうか……
「俺たちの背後にいる人物……お前たちの言う黒幕の正体、それは───だ」
「…えぇ……さすがに予想外なんだけど」
そんなことある?嘘をついているようには見えないし、そもそも契約違反になるからそれは絶対にない。でもさ、こんなの予想できないよ。
彼はこう言った。『黒幕の正体、それは俺の弟だ』、と。
「黒幕が取り仕切っている感じがしてたけど、主従関係とかそういうのではなかったんだね?」
「主従関係だぞ。うちは特殊な家で一家の主になる条件に当てはまっていたのが俺の弟というだけのことだ」
「……よく分からないけど、そう軽率に敵に情報を流して大丈夫?敵である俺が心配するのもおかしな話だけど」
「正体を話した時点でいずれ知られることだろう?今日はこれで手を引いてもらえると助かるが」
「ん。今日はここまでにする。最後にひとつだけ」
俺は過去の記憶が世界によって消されていたから恨みがあったとしても今の俺には何のことか分からない。近いうちに戻るはずだけどね。昔の俺が何をしたのかは分からないよ。だけどこうして周囲から少しずつ崩していくように……こうして手間暇かけてまで俺を殺したい理由があるんだよね、きっと。でもお願い、抗いはするけどどうしても抵抗しきれないなら俺の命は差し出すよ。だから俺の大切な人達には……手を出さないでほしい。
今まで敵の前だからと出来る限り表情を隠していたナギサだが、静かに扇を閉じて赤髪の男に向かって元社長令息らしい綺麗な仕草で頭を下げた。これ以上ないほど、丁寧に。
「……精霊王としてのプライドはないのか?敵に頭を下げるなんて」
「頼み事をしている立場でプライドも何もないでしょ」
「……約束はできないな。だが利用している奴も含めて、何の罪もない者を巻き込むことはしないと最初から話し合って決めている。戦闘中のは仕方ないが」
「そう、ありがと。じゃあねー」
20
お気に入りに追加
605
あなたにおすすめの小説

異世界転生~目指せ!内乱を防いで、みんな幸せ♪
紅子
ファンタジー
いつの間にかこの国の王子に転生していた俺。物語の世界にいるなんて、想定外だ。このままでは、この国は近い未来に内乱の末、乗っ取られてしまう。俺、まだ4歳。誰がこんな途方もない話を信じてくれるだろうか?既に物語と差異が発生しちゃってるし。俺自身もバグり始めてる。
4歳から始まる俺の奮闘記?物語に逆らって、みんな幸せを目指してみよう♪
毎日00:00に更新します。
完結済み
R15は、念のため。
自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)
【第1章完結】王位を捨てた元王子、冒険者として新たな人生を歩む
凪木桜
ファンタジー
かつて王国の次期国王候補と期待されながらも、自ら王位を捨てた元王子レオン。彼は自由を求め、名もなき冒険者として歩み始める。しかし、貴族社会で培った知識と騎士団で鍛えた剣技は、新たな世界で否応なく彼を際立たせる。ギルドでの成長、仲間との出会い、そして迫り来る王国の影——。過去と向き合いながらも、自らの道を切り開くレオンの冒険譚が今、幕を開ける!
魔境育ちの全能冒険者は異世界で好き勝手生きる‼︎ 追い出したクセに戻ってこいだと?そんなの知るか‼︎
アノマロカリス
ファンタジー
15歳になり成人を迎えたリュカは、念願の冒険者ギルドに登録して冒険者になった。
そこで、そこそこ名の知れた冒険者Dランクのチームの【烈火の羽ばたき】に誘われる。
そこでの生活は主に雑用ばかりで、冒険に行く時でも荷物持ちと管理しかさせて貰えなかった。
それに雑用だけならと給料も安く、何度申請しても値段が上がる事はなかった。
ある時、お前より役に立つ奴が加入すると言われて、チームを追い出される事になった。
散々こき使われたにも関わらず、退職金さえ貰えなかった。
そしてリュカは、ギルドの依頼をこなして行き…
【烈火の羽ばたき】より早くランクを上げる事になるのだが…?
このリュカという少年は、チームで戦わせてもらえなかったけど…
魔女の祖母から魔法を習っていて、全属性の魔法が使え…
剣聖の祖父から剣術を習い、同時に鍛治を学んで武具が作れ…
研究者の父親から錬金術を学び、薬学や回復薬など自作出来て…
元料理人の母親から、全ての料理のレシピを叩き込まれ…
更に、母方の祖父がトレジャーハンターでダンジョンの知識を習い…
母方の祖母が魔道具製作者で魔道具製作を伝授された。
努力の先に掴んだチート能力…
リュカは自らのに能力を駆使して冒険に旅立つ!
リュカの活躍を乞うご期待!
HOTランキングで1位になりました!
更に【ファンタジー・SF】でも1位です!
皆様の応援のお陰です!
本当にありがとうございます!
HOTランキングに入った作品は幾つか有りましたが、いつも2桁で1桁は今回初です。
しかも…1位になれるなんて…夢じゃ無いかな?…と信じられない気持ちでいっぱいです。

知らない異世界を生き抜く方法
明日葉
ファンタジー
異世界転生、とか、異世界召喚、とか。そんなジャンルの小説や漫画は好きで読んでいたけれど。よく元ネタになるようなゲームはやったことがない。
なんの情報もない異世界で、当然自分の立ち位置もわからなければ立ち回りもわからない。
そんな状況で生き抜く方法は?
能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?
火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…?
24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

こちらの異世界で頑張ります
kotaro
ファンタジー
原 雪は、初出勤で事故にあい死亡する。神様に第二の人生を授かり幼女の姿で
魔の森に降り立つ 其処で獣魔となるフェンリルと出合い後の保護者となる冒険者と出合う。
様々の事が起こり解決していく

転生したらスキル転生って・・・!?
ノトア
ファンタジー
世界に危機が訪れて転生することに・・・。
〜あれ?ここは何処?〜
転生した場所は森の中・・・右も左も分からない状態ですが、天然?な女神にサポートされながらも何とか生きて行きます。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
初めて書くので、誤字脱字や違和感はご了承ください。
異世界で俺だけレベルが上がらない! だけど努力したら最強になれるらしいです?
澤檸檬
ファンタジー
旧題 努力=結果
異世界の神の勝手によって異世界に転移することになった倉野。
実際に異世界で確認した常識と自分に与えられた能力が全く違うことに少しずつ気付く。
異世界の住人はレベルアップによってステータスが上がっていくようだったが、倉野にだけレベルが存在せず、行動を繰り返すことによってスキルを習得するシステムが採用されていた。
そのスキル習得システムと異世界の常識の差が倉野を最強の人間へと押し上げていく。
だが、倉野はその能力を活かして英雄になろうだとか、悪用しようだとかそういった上昇志向を見せるわけでもなく、第二の人生と割り切ってファンタジーな世界を旅することにした。
最強を隠して異世界を巡る倉野。各地での出会いと別れ、冒険と楽しみ。元居た世界にはない刺激が倉野の第二の人生を彩っていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる