【第2章完結】最強な精霊王に転生しました。のんびりライフを送りたかったのに、問題にばかり巻き込まれるのはなんで?

山咲莉亜

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第3章 動き出す思惑

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「さぁ話は終わりだよ。大人しく俺に──」
「待て、降参する」
「……は?」

 聞き間違いだよねぇ?ここまで来て降参とかありえないんだけど。本気で言ってる?なんで?

「いや、別に驚くことでもないだろう。お前がとんでもなく強いことは分かったし、そもそも本気を見せるつもりもなかったんじゃないか?それならやられる前に降参するに決まってる。無駄に痛い思いはしたくないからな」
「……あー、そう。俺の秘密を知ったんだから殺せなくても二度と口を開けないくらいにはしようかなって、思ってたのに。残念」
「さらっと恐ろしいことを言うな。心配しなくても誰かに話すつもりはない。お前は敵だが、お前の闇を言いふらすことで俺たちが得することはないからな。契約してもいいぞ」
「そこまで言うなら良いけど。言いふらされたところで死ぬわけでもないし。でも言わないでねぇ」
「ああ」

 拍子抜けなんですけど。こっちは結構頑張って正体を探ってるのにあっさり聞くことになるんだよ?助かるけど素直に喜べないっていうか……

「俺たちの背後にいる人物……お前たちの言う黒幕の正体、それは───だ」
「…えぇ……さすがに予想外なんだけど」

 そんなことある?嘘をついているようには見えないし、そもそも契約違反になるからそれは絶対にない。でもさ、こんなの予想できないよ。
 彼はこう言った。『黒幕の正体、それは俺のだ』、と。

「黒幕が取り仕切っている感じがしてたけど、主従関係とかそういうのではなかったんだね?」
「主従関係だぞ。うちは特殊な家で一家の主になる条件に当てはまっていたのが俺の弟というだけのことだ」
「……よく分からないけど、そう軽率に敵に情報を流して大丈夫?敵である俺が心配するのもおかしな話だけど」
「正体を話した時点でいずれ知られることだろう?今日はこれで手を引いてもらえると助かるが」
「ん。今日はここまでにする。最後にひとつだけ」

 俺は過去の記憶が世界によって消されていたから恨みがあったとしても今の俺には何のことか分からない。近いうちに戻るはずだけどね。昔の俺が何をしたのかは分からないよ。だけどこうして周囲から少しずつ崩していくように……こうして手間暇かけてまで俺を殺したい理由があるんだよね、きっと。でもお願い、あらがいはするけどどうしても抵抗しきれないなら俺の命は差し出すよ。だから俺の大切な人達には……手を出さないでほしい。

 今まで敵の前だからと出来る限り表情を隠していたナギサだが、静かに扇を閉じて赤髪の男に向かって元社長令息らしい綺麗な仕草で頭を下げた。これ以上ないほど、丁寧に。

「……精霊王としてのプライドはないのか?敵に頭を下げるなんて」
「頼み事をしている立場でプライドも何もないでしょ」
「……約束はできないな。だが利用している奴も含めて、何の罪もない者を巻き込むことはしないと最初から話し合って決めている。戦闘中のは仕方ないが」
「そう、ありがと。じゃあねー」
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