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第三章 黒幕と呪い

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「今のを防ぐんだねぇ。思ってたより強いみたい」

 だからといって俺が負けるとは思えないんだけどね、と呟きつつ次の攻撃の準備をする。自身を守るようにして囲ってあった鋼糸を解いた男は若干引いたような顔でナギサと同じく攻撃態勢に入った。

「攻撃の素振りが見えなかった。これが魔法か……」
「喋ってる暇があるだなんて、余裕だねー?こっちはこんなに必死だというのに俺とは大違い」
「そっくりそのまま返すぞ、その言葉。どこが必死なんだ」
「まあまあ、細かいことは気にしないでよ」

 本当に余裕なんてないんだからさ。心の余裕が、だけど。

 さっきは避けられたけど今度は逃す気はない、と避ける暇も守る余裕もないくらいに攻撃を続ける。普通の人間ならすでに死んでいてもおかしくないレベルまで来ているが、目の前の男は少々辛そうにしている程度で攻撃も受けつつ一応ナギサに攻撃を仕掛けてはいた。それが相手に届いているのかは別の話だが。

「………おい、人を殺す気で攻撃しておきながら何故そんな顔をしている?」
「うるさいよ。不快だからに決まってるでしょ」

 どうせ表情が上手く作れてないんだろうなーと思う。だってこの人、穢れがすごいからね。それも悪党のような人を貶めることばかり考えているような感じではなくて、俺に対しての明確な恨みや憎しみを持っているのが分かる。自分のことながら何をしたらここまで殺意を抱かれるのか疑問だよ。心当たりはあり過ぎるし。

「そうじゃない。何故辛そうな顔をしている?」
「辛そう、ねぇ……いや、俺の悪癖だから気にしないでよ」
「悪癖?それはお前が愛してやまない婚約者にも隠し通している過去の───」
「ふぅん……それ、どうやって知ったのかすごく気になるなぁ」

 俺が知られたくないと分かってて言ってるよねー?というかさ、誰にも言ったことがないのに。親も、友人も、精霊だって誰一人知らないはずのことを、なんでこの人が知ってるわけ?………まさかとは思うけど、ね。

「俺の一番の秘密、誰にも話した覚えはないけど…まあ、知ってしまったなら二度とそのことを話せないようにするしかないかなー」

 今まで殺気を抑えるつもりはなくとも表情や口調だけは普段通りにしていたナギサだが、男はナギサの触れられたくない闇に触れてしまったらしい。絶対零度の空気を纏ったナギサは全種族の上に立つ精霊の王らしく、今までにない雰囲気で男に近付いて行った。
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