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第三章 黒幕と呪い

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「お久し振りですー」
「こんにちは。先日お会いしたばかりですので久し振りではありませんが」
「細かいことは気にしないでよ。例の件、順調?」
「順調と言いますか、軽い確認のようなものでしたから少し調べた程度ですよ」
「良いんだよ、それで。俺の記憶も戻り始めたけど重要なことは何度でも確認しておきたいし」

 王城、大精霊であるノームの祝福を受けている唯一の存在、王弟殿下ことジェフリーさんの執務室にて。俺は不審者の如く侵入したんだけど彼は驚くこともなく冷静に返答してきた。よろしくないことなんだけどね、正面から入ろうと思っても護衛がいるだろうし、書庫のついでに寄っただけだからこっそり侵入するくらいがちょうど良いんじゃないかなーって。

「まあナギサ様が把握しておられたことが全てでしたよ。もっと深く調べましょうか?」
「んーそうだね……いや、良いよ。ありがとう」
「いえ。私にも利はありましたのでお気になさらず」
「ノームは何も言ってなかったけどどうなの?上手くいった?」

 俺が彼に頼んだことは大したことではない。だけど各種族の成人済みである王族と精霊以外には存在さえ知られていない内容ではある。それについて確認をしてほしいと頼んだ時、その対価として教えてあげたのがノームの情報。この人、ノームのこと好きだからね。

 情報と言っても単純に最近好きなこと?を聞いてあげただけなんだけど。一緒に遊びに行きたいからって言ってた。

「ええ。ナギサ様がアリス様とデートする日があるからその日なら構わないと言ってくれましたので」
「え、じゃあ昨日?」
「そうですよ。お二人のデートを見たいと言われて一緒に尾行していたのですが気付きませんでした?」
「あのねぇ、いろんな人に尾行されすぎて気付けなかったんだよ」

 だからちょっと煽るように言わないでくれる?ほとんど精霊だけど大勢に尾行されてたら分からないでしょ。しかも全員出来る限り気配消してるから尚更。

 この人、普段は国民に慕われるような人柄のくせに俺にだけ少し態度悪いのなんなのかなー?絶対初対面の名残だよね。
 まあ別に良いんだけどさ。俺だって礼儀正しいわけじゃないし。

「じゃ、俺はもう行くよ。もし何か分かったことがあったら教えてね」
「はい」
「俺は人の恋愛に口を出すつもりはないよ。付き合うも結婚でも好きなようにしな。だけどノームを悲しませないでねー」

 何度アリスを悲しませたか分からない俺が言えたことでもないんだけどね。
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