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第三章 黒幕と呪い

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「久し振りだね。元気にしていたようで良かった」
「今日はナイジェルとして来られたのですね」
「ええ、新鮮でしょう?「俺」はあまり堂々と来るわけにもいかないかなと思いまして、今日はこの姿で。このような時間に訪問してしまって申し訳ありません。ご協力感謝いたします」

 シーラン男爵家を訪れると、クレアちゃんだけかと思っていたのにミシェルさんまで出迎えてくれた。時間帯は悪いしそうじゃなくても忙しいだろうに、ほんとに申し訳ない。
 それと相変わらずランはクレアちゃんとずっと一緒にいるみたいで、俺が部屋に入ると手を振られた。可愛いんだけど娘に彼氏ができた父親のような複雑な心境になる。父親になったことはないからイメージだけど。クレアちゃんは既婚者だしランもそんなつもりはないんだろうけどさ。

「ナギ……ナイジェルに敬語で話されると何度でも変な感じがするね」
「それは私の中身を知っているからでしょう。知らない人からすれば違和感など感じないはずです。感じられると困りますけど」
「それはそうだね。学園祭でも思ったけどその演技力は精霊王だからなのかい?」
「違いますよ。私はこういうことが得意ですからね。世間話はここまでにしてそろそろ本題に入りましょうか」

 俺の演技力は前世の影響だし、精霊王には関係ないでしょー。俺が誰かと話すと絶対一度は話が逸れるんだよね、なぜか。時間がないってずっと言ってるのにねぇ。

「クレア様は王宮魔法師なのですよね?王宮魔法師の機密情報を保管している書庫に入れて頂きたいのです」
「……突っ込みどころ満載だね。順番に聞かせてもらおうか。まず、何故ナイジェルが機密情報のことを知っている?そのようなものがあること自体、普通は知らないはずだよ。魔法師団は精霊の力を借りて成り立っている仕事だから隠し事なしと言われているが」
「機密なんてどんな職業でも存在するものでしょう。すべてを明かしていては足元をすくわれますし」

 色々とルールなんかもあるだろうしね。その辺りは前世と同じだろうと思ってる。俺は大企業の次期トップだったんだから会社経営についてだとか、そういうことには詳しいよー?まあこの程度のこと、俺じゃなくてもわかっている人はいくらでもいるだろうねぇ。先入観があるならまた別の話だけど。

「たしかにそうだね。ナイジェルが知っていておかしいことでもないか。だけどあたしには勝手に許可を出せる権限などないよ。団長に聞くのが妥当じゃないかい?」
「団長さんには他のことを頼んでいるんですよ」
「あたしは勝手に許可を出して後で処罰されたくはない。悪いけど他を当たっておくれ」
「クレア様」
「……なんだい?」

 ねぇ、そんな顔しないでよ。完全に引いてるじゃん。「どうせまた禄でもないことを言い出す」とか思ってそうだねー。まあ当たってるんだけど。
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