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番外編

覚醒前のナギサの話

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『……今回は極端に魔力が少ない、か。この子も消滅させるしかな……っ!』
「───へぇ……魔法ってこんな感じなんだ」
『魔力量が、跳ね上がった……?そなた、一体何をした?』

 我は精霊王を生む時、必ず全員同じ魔力量にする。それでも実体を持った時に魔力が減ることがほとんど。そのため、一定以上の魔力を保有していない精霊王はすぐに消滅させる。例外なく生まれた時点での魔力が増えることはない。増えるとすれば数百年単位でやっと少量増やすことが出来るくらい。

 だと言うのにこの子は……我が消そうとした瞬間に魔力を暴走させることで抵抗した。暴走させる直前にあり得ないスピードで魔力が増えた。そもそも、暴走させられるだけの魔力など普通は持っていない。

 どうやら我は……とんでもない子を生み出してしまったようだね。

「何をしたって……魔力を暴走させただけですけどー?それくらい聞くまでもなく分かっているんじゃないですか?」
『そう、だね。そなた、自分の魔力量が分かっているのか?数秒前までは過去一少なかったと言うのに、今では我を上回りそうなほどに増えているよ』
「そのようですねぇ」

 性格も過去一のんびりしているみたいだね。それに見たことがない程に美しい容姿だ。この髪色も……この世界に黒髪なんてほとんどいない。これは何かありそうだね。転生者と言われるものかな?この子自身にその自覚はまだないようだけど……今までは転生者が記憶を取り戻すまで我もその者が転生者だと言うことは分からなかった。だけど今回は分かった。何故だろうね。すでに色々とイレギュラーだからかな。

『そなたの名前は……』
「ナギサ。ナギサが良いです」
『良いよ。それではナギサ、精霊を生んでみてくれるか?』
「こんな感じですかねぇ」

 …………やっぱり、ナギサは普通じゃないね。魔力量が我を上回りそうなくらい増えたのは分かったけど、まだ魔力を扱うことに慣れていないはずなのに。精霊を生めば当然魔力を消費する。それが強い精霊であればあるほど消費量も多い。

 キラキラとした粒子、ナギサの魔力を纏って次々と精霊が生み出されていく。

 ナギサは一度に五人の精霊を生んだ。大精霊四人と中位精霊一人。

『そなたはすごいな……名前を付けてあげて』
「んー……じゃあ地の大精霊ノーム、水の大精霊ウンディーネ、火の大精霊サラマンダー、風の大精霊シルフ。それから水の中位精霊ルー」
『早いね。どうやって決めた?』
「大精霊四人はこの名前が思い浮かんだので。ルーはなんとなく似合いそうだと思ったので。みんな、ナギサだよ。これからよろしくー」

 今までにない名前ばかりだね。おもしろい。我が子としての愛とは別に、ナギサは見ていて飽きないから好きになったよ。まだ生んで数分しか経過していないのにこの数分で色々ありすぎだ。

 でも、これからどんなことが起きるのか。どんなことをしてくれるのか。今から楽しみだよ。
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