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第二章 再会

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 ついに僕たち二年一組の出し物、「光の王子と小さなガラスの靴」の演劇が始まりました。

 『ナギサと一緒に演じるなら、舞台役者になれるくらいの演技力がないと物語が成り立ちませんよ。ナギサ一人で舞台に立っているように見えるでしょうから』

 ………彼女の言う通りでしたね。まさかナギサ様がこれほど演技がお上手だとは思ってもみませんでした。まず物語が始まった瞬間に別人になったのかと錯覚するくらい雰囲気が変わりました。光の王子に相応しい輝きですが、所々滲み出る言動に腹黒さを感じます。本来、光の王子に腹黒さなんてありませんでしたがこちらの方が人間味が出て物語に合っている気がします。

 ライトが付いた瞬間、いえ、ナギサ様が舞台に立った瞬間に間違いなく会場中の視線をナギサ様が奪っていきました。先程の練習の時もすごいとは思いましたがちゃんとした舞台に立ったナギサ様は王子役ではなくても主役だったでしょうね。

 声の出し方がお上手で体の動かし方一つ、息継ぎのタイミング一つが言葉で言い表せないくらいに完璧。本当に。以前、アリスさんからお聞きした時は正直半信半疑でしたが声も表情もまさに変幻自在。

 どの角度から見ても恐ろしいほどに完璧な演技。舞台役者や演技に詳しくない僕でもそう思うほど、とにかく完璧としか言いようがありません。
 ナギサ様は……前世、で役者でもしておられたのでしょうか。プロと並んでも見劣りしないどころか、この場と同じように全ての人の視線を持って行くでしょうね。

 同じような言葉しか出てこない。すごい、完璧。とにかくそればっかりで。

『そうですか……あなたにならきっと出来ると思いますよ』
「──っ!」

 ゾッとした。自分の夢を語るヒロインにたった一言、それだけでヒロインの心を愛で満たす。ナギサ様が仰っていた通りほとんど台本通り、今の台詞も台本通りの台詞なのに心に染み渡るような声と表情。

 いったい、一体どれだけ練習すればここまで人の心を掴む演技が出来るのでしょうか……

「さくら………なぎ。さくらい、なぎさ……?」

 僕の隣で演劇を観ていた方の言葉が不意に耳に入って来ました。サクラ……なんと言ったのかは良く分かりませんでしたが、これでもかと言う程に目を見開いて口を手で覆っているのは───エリオットでした。
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