上 下
142 / 230
第二章 再会

69

しおりを挟む
「おー……いっぱい集まってきたね」
「たぶんお父さんたちも紛れ込んでるよ。お父さんは変装するって言ってたかな」
「大精霊だとバレたら困るもんね。たのし、み………始まるまであと三十分くらいかー」
「それがどうかしたの?」
「んー?」
「もう……誤魔化さなくても分かるから。ナギサなら三十分あれば十分でしょう?早く言っておいでよ」
「ありがと」

 俺の好きな子は誤魔化されてくれないらしい。精霊の血を引くから、純血の精霊ほどではないにしろ、色々と勘が良い。だから俺が感じた気配にも気付いたんだろうねぇ。

「こーんにーちは!」
「うわっ!なんだお前!」
「なんだって言われてもね。いやーな、不快な気配を感じたから様子を見に来たんだよ?……と言うのは建前で、そろそろ尻尾を出してくれないかなって期待して罠を仕掛けておいたら、見事に引っ掛かってくれたようだから始末しに来たんだけどね!」

 貴族と平民、人間もエルフも魔族も関係なく全部で十人ほどの男たち。

「ちょっと王様!今回の功労者であるわたしを無視するなんてひどくない!?」
「あーごめんごめん。助かったよ、ありがとね。ミサ」
「アリス様は?」
「危ないかもしれないから置いてきた。ちゃんと護衛もつけてるから心配無用だよー」
「それなら良いけど……」

 完全に放置状態の男たちはとっくに拘束済み。校舎裏だから誰に見られることもなく静かに事を進められそうだよ。もちろん騒がれては面倒だから声を出せないようにしてるよ?その辺りはご心配なく、なんてね。

「んー………残念。やっぱり洗脳されてるから何の情報も持ってないね。だけどそれはさほど問題ではない、かな」
「どうする?」
「どうしよっか。取り敢えず、風の宮に連れて行ってあとのことはシルフに任せようかな。洗脳は浄化魔法でなんとかなる……?ならなければ始末させて、洗脳を解くことが出来たなら駒にでも使わせてもらお。明日までは水の宮において、明日になったら風の宮に移動。ミサ、これでおねがいね」
「うん、分かった。でもなんで明日?」
「特に理由はないよ」
「そう…?ではうん、御意に」

 シルフはエルサちゃんたち家族と一緒にいたいだろうし、久し振りに会えてすぐ仕事だから戻れって言うのは流石に可哀想だからね。
 家族を大切に思う気持ちも、一緒にいたいって気持ちもよく分かるからこれくらいの配慮はしないと。大切に思う人ほど早くいなくなってしまったりするからさ。あれこれ仕事をさせている立場の俺が言えたことではないんだけどねー。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

初夜に「君を愛するつもりはない」と夫から言われた妻のその後

澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
結婚式の日の夜。夫のイアンは妻のケイトに向かって「お前を愛するつもりはない」と言い放つ。 ケイトは知っていた。イアンには他に好きな女性がいるのだ。この結婚は家のため。そうわかっていたはずなのに――。 ※短いお話です。 ※恋愛要素が薄いのでファンタジーです。おまけ程度です。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

記憶喪失の転生幼女、ギルドで保護されたら最強冒険者に溺愛される

マー子
ファンタジー
ある日魔の森で異常が見られ、調査に来ていた冒険者ルーク。 そこで木の影で眠る幼女を見つけた。 自分の名前しか記憶がなく、両親やこの国の事も知らないというアイリは、冒険者ギルドで保護されることに。 実はある事情で記憶を失って転生した幼女だけど、異世界で最強冒険者に溺愛されて、第二の人生楽しんでいきます。 ・初のファンタジー物です ・ある程度内容纏まってからの更新になる為、進みは遅めになると思います ・長編予定ですが、最後まで気力が持たない場合は短編になるかもしれません⋯ どうか温かく見守ってください♪ ☆感謝☆ HOTランキング1位になりました。偏にご覧下さる皆様のお陰です。この場を借りて、感謝の気持ちを⋯ そしてなんと、人気ランキングの方にもちゃっかり載っておりました。 本当にありがとうございます!

幼女に転生したらイケメン冒険者パーティーに保護&溺愛されています

ひなた
ファンタジー
死んだと思ったら 目の前に神様がいて、 剣と魔法のファンタジー異世界に転生することに! 魔法のチート能力をもらったものの、 いざ転生したら10歳の幼女だし、草原にぼっちだし、いきなり魔物でるし、 魔力はあって魔法適正もあるのに肝心の使い方はわからないし で転生早々大ピンチ! そんなピンチを救ってくれたのは イケメン冒険者3人組。 その3人に保護されつつパーティーメンバーとして冒険者登録することに! 日々の疲労の癒しとしてイケメン3人に可愛いがられる毎日が、始まりました。

好きでした、さようなら

豆狸
恋愛
「……すまない」 初夜の床で、彼は言いました。 「君ではない。私が欲しかった辺境伯令嬢のアンリエット殿は君ではなかったんだ」 悲しげに俯く姿を見て、私の心は二度目の死を迎えたのです。 なろう様でも公開中です。

愚かな父にサヨナラと《完結》

アーエル
ファンタジー
「フラン。お前の方が年上なのだから、妹のために我慢しなさい」 父の言葉は最後の一線を越えてしまった。 その言葉が、続く悲劇を招く結果となったけど・・・ 悲劇の本当の始まりはもっと昔から。 言えることはただひとつ 私の幸せに貴方はいりません ✈他社にも同時公開

美少女に転生して料理して生きてくことになりました。

ゆーぞー
ファンタジー
田中真理子32歳、独身、失業中。 飲めないお酒を飲んでぶったおれた。 気がついたらマリアンヌという12歳の美少女になっていた。 その世界は加護を受けた人間しか料理をすることができない世界だった

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

処理中です...