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第二章 再会

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 ◇

「───それでね、アリス。明日の朝は一緒に散歩でも行かない?俺のお気に入りの場所があるんだよ」
「うん!」
「じゃあ今日はもう寝よ。明日は早起きになるからねー」
「私は起きられると思う。どちらかと言うと起きれないのはナギサの方でしょ」
「そんなことは……あるね。うん、寝よ」

 そんなことない、とは言えないかな。朝が弱いわけではないんだけど、やっぱり寝るのが好きだから出来るだけ長く寝ようとしてしまう。

 そうすると俺の方が起きるのが遅くなるよねー。

「おやすみ、ナギサ」
「おやすみ。……あのさ、眠くなったら全然寝ちゃっていいし俺の言うことに返事をしてもしなくても良い。だから寝るまでの間、少し聞いて」
「?うん」

 大人が五人はゆったり横になれそうな広さがあるベッドに二人で横になる。アリスがいる方とは反対側に体を向け、静かに目を閉じるともう何十年も何百年も前から考え続けていたことをアリスに話したくなった。
 これは俺がこの世界に精霊王ナギサとして生まれたころからずっと思っていること。そしてアリスと再会し、以前にも増して考えるようになったこと。

「『愛』ってなんだと思う?」
「それは言葉の意味……ってことじゃないよね」
「うん」
「愛かぁ……ちゃんと考えると難しいよね。……答えはないと思うけど、だからこそ私は分からないかな」

 至って真面目に、そして静かな声で話すアリス。辞書で「愛」を調べると、
 "大事なものとして慕う心"
 "特定の人を愛しいと思う心"
 などがある。でもそれって調べた人が本当に知りたいことじゃないと思うんだよねー。そんなことは誰でも知ってるでしょ。哲学の話になってきてるけど……

「話が飛び飛びになるかもしれないけどそれは気にしないでね?俺は「愛」は信頼だと思う。あくまでも俺個人の意見であって俺の考え方でしかないけどね。……信頼できる相手じゃないと好きにはなれない。信頼できるから好きになれる。あるいは愛があるから信頼できる、とか。まあ色々あるけど相手を信頼していて愛しているからこそ、相手を思ってその気持ちを隠す」

 大切に思うからこそ距離を取るってやつかな。

「私、ナギサは愛があるからこそ愛を隠すって言うところもあると思う。普段、愛を見せる相手がたくさんいるから、周りからするとそんな風には見えないかもしれないけど」
「自分も相手も、桁違いの権力や実力があって。愛しているけどいつか敵対するかもしれない。もしそうなった時にお互いの心を守るために愛を見せない、悟らせない。愛があることを気付かれるくらいなら徹底して嫌う。そう見せる。その愛情がどんな種類かは様々だけど、俺だったら愛を何が何でも隠し通したい相手に勘づかれたとしたら。その時は相手を憎むかな。探らないでほしい、自分に干渉しないでほしい、いつか自分が壊すことになるかもしれない存在と愛し合うのは本当に怖い」

 そんな風に思うだろうね。愛情があることは自分だけが知っていればいい。それが理由で相手にどんなに嫌われることになろうと憎まれることになろうと、絶対に愛を見せたくない。

「……力を持つ人ほど怖がりだったりするって、本当だね。ナギサは自分のことを冷酷とか冷徹って言うことがあるけど、本当の本当はすごく優しいよね。羨ましいな、ナギサにそんなに愛される人が」
「俺の話とは言ってないよー。俺の考え方ってだけで」
「それは同じようなものだよ」
「でも、愛があるから信じて待てるってこともあるのかな?いつか敵対する必要がなくなるその時まで。でも愛を隠したい時に相手は自分に愛があるって言われると信じられないんだよね。と言うより信じたくない」
「…………」
「ごめんね、急にこんな話して。俺が思ってたことを何も考えずに言っただけだから、色々と矛盾してたり何言ってるか分からない所があるかもしれないけどそこは見逃して?」
「ナギサ語を幼馴染であり親友であり恋人である私が理解できないわけない……ことはないけど、大体分かるから大丈夫!ちなみにナギサがいま話してた相手ってだれ?」

 だから俺のこととは一言も言ってないって。ツッコミどころ多いしその興味津々な顔やめてよ……

「どこで聞かれてるか分からないから言わない」
「んー、残念!」
「そうじゃないね」

 元気いっぱいに残念って言われてもねぇ……俺がその相手に愛を見せることは一生ないと思う。あるとしたらそれは俺が消滅するときだね。
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