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第二章 再会

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「じゃあ部屋に戻ろっ……え!?」
「っ!」

 軽く注意も終わったところで部屋に戻ろうとアリスの手を引いて歩きだそうとしたその時、俺とアリスは宙を歩くことになった。それは突然床が抜けたから。咄嗟にアリスを引き寄せたもののそこまで高さはなかったようで、魔法を使う間もなく地面に叩きつけられそうになった。が、その前にそのまま受け身を取ることで大怪我は免れた。

「ナ、ナギサ大丈夫!?」
「ん…受け身を取ったから大丈夫だよ。かすり傷くらい。それよりここはど、こ………」
「?私も分からないけど床が抜けたよね。この空間、隠し部屋か隠し通路?……あ、うん。ナギサが急に黙り込んだ理由が分かったよ」

 俺たち二人が落ちたところは床が崩れた先の落ちたところ、にしてはちゃんとした空間があった。ここも含めてすべての宮は初代精霊王のアリサ様が世界と相談しつつ造った物。俺でも把握しきれていないと言うのはそういうこと。

 なので状況を把握しようと辺りを見渡そうとしたとき、少し遅れて俺はようやく気が付いた。ここは隠し部屋だと。なぜならどこにも繋がっていない場所だから。そして抜けた床は元通りになっていて俺とアリスは閉じ込められている。床下の隠し部屋に電気なんてものは恐らくない。俺は光属性の魔力なんて持ってない。そもそも存在していない。

 つまり俺は何を言いたいのかと言うと…………ここは、暗くて狭い場所。

「………………」
「落ち着いて、ナギサ。大丈夫だから。転移魔法は使える?」

 優しく声を掛けてくれるアリスに頷き、一旦廊下に転移する。長距離を移動するには当然それだけの魔力がいる。多くの魔力を使う時は冷静でいないと魔力が暴走する可能性がある。だから出来る限り近く、それでいて明るい廊下に転移した。

「ね、もう大丈夫だよ。だから手を貸して?そんなに握りしめたら……ほら、血が出てるじゃないの」
「………ごめ、ん」
「謝らないでよ。悪いのはナギサじゃなくて…!」

 高所恐怖症、対人恐怖症、閉所恐怖症、暗所恐怖症。良くあるのはこのあたりだと思うけど、そう言ったものに恐怖を覚えるのは必ず理由があるものだと俺は思ってる。何の理由もなく怖いなんてことは中々ないでしょ。アリスが怒っている理由は分かってる。
 俺の弱点ってやっぱり、どれも前世に関わることばかりなんだけど。

 どの世界にもライバルの弱みを握ろうとしたり恨みを持つ相手を殺そうとする人はいる。それは俺も同じ。実際、精霊殺しの呪いの時は犯人を殺す気でいたし。

 桜井だって万能ではない。いくら俺でも六歳とかそこらでは無力のようなものだよ。いくら護身術を習っていても力や体格差ではどうしても敵わない相手がいる。幼い俺を誘拐して桜井の情報でも聞きだそうとしたんだろうね。六歳でも幼くても次期当主だから情報を持っていると思ったんだと思う。そしてそれは間違ってなかった。子供だから、いや子供じゃなくても同じだと思うけど監禁しておけば精神的に弱ると考えたのかなー。一週間くらい捕まってて、散々痛めつけられて、結局俺は口を割らなかったけど救出される頃には暗くて狭い所に恐怖するようになってた。

 痛めつけられることよりも俺にとっては監禁という環境の方が辛かったから。痛みはね、慣れてるんだよ。色々やってたから。でも監禁される経験は流石になかったわけで。俺が閉所暗所恐怖症になったのはそれが原因だね。毒の時ほど精神崩壊はしなかったよー?ただ、しばらく眠れなかっただけ。

 アリスが怒っているのはその犯人たちだろうね。とっくに死んでるだろうけどさ。跡取りをそんな風にされて一族が黙ってるはずがないんだし。
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