上 下
123 / 230
第二章 再会

50

しおりを挟む
「風属性の拘束魔法って使ったことある?」
「一応練習はしたけど、使う機会はないから上手く発動できないかも」
「感覚は分かる?」
「大体は。ごめんね、こんな中途半端で」
「大丈夫、気にしなくていーよ」

 物語の中で魔法を使う世界観だった場合、だいたい詠唱とか魔法陣を書くとか、なんか色々あるでしょー?この世界の場合はそれが想像することになるね。
 意外と想像力が大事なんだよ。頭にその魔法を使うところを想像して魔力を巡らせる。対象を指差すか手をかざすか、そんな感じの魔法を掛ける対象が分かりやすいようにした方が発動も上手く行くね。俺の場合はそういうのはいらないんだけどねぇ。そんなことしなくても魔法使えるし。

「ねえ、ナギサって魔法を発動するとき扇を使ってることが多くない?あれはどういう仕組みなの?」
「知りたいー?」

 企業秘密ですーとは言わないけど、知って面白いものでもないと思うんだよね。でも見てる側からすると興味深いのかも知れない。その辺りは俺じゃあ分からないからねぇ。

「知りたい!あ、もちろん言えないなら良いんだよ?」
「知られて困ることではないよ。この扇はね、精霊王の証なんだってー。証と言うより代々受け継がれている物と言った方が正しいのかな。精霊王って世界が生むんだけど、精霊王になるための基準ってのがあるんだよ。同じ強さになるように作られて、そこからは自分の努力次第だって聞いた。でもその基準に達していなかったら即消滅する」
「……精霊もドロドロした部分がありそうだね」

 そう、その通りだよね。強制的に作られて、世界の思う基準に達していなければ消滅してしまう。それが夫婦の間に産まれた子なら当てはまらないんだろうけどさ。

「でもその基準ってどうやって決めるの?」
「これはちょっと特殊な扇でねー?世界に作られたらまずはこの扇に自分の魔力を注ぐ。それで基準に達していなければそのまま魔力が全部吸収されて消滅」
「生まれたばかりの状態じゃあいくら精霊王でも抵抗のしようがない。それは当たり前だもんね」
「うん。まあでも、俺はちょっと違ったんだよね」
「違った?」

 あはは……俺自身もちょっと驚いたんだけど、今となっては笑い話かな。いや、あの時の俺からしたら冗談じゃないって感じだったんだけどー。

「俺、実は基準に達してなくて消滅しそうだったんだよ」
「え!?でも今は過去一の実力って言われてるじゃない」
「今はねぇ。生まれた瞬間、その本当に一瞬だけは過去最弱。消滅した精霊王を含めても一番弱かったんだけど、魔力を全部吸収される前にわざと魔力を暴走させた。つまり抵抗したわけだよ。で、その瞬間に覚醒しちゃったみたいで……」
「基準に達したってこと?」
「そんな感じ。長くなったけど、結局何が言いたいのかと言うとこれは特殊な扇ってことだね。だから厳しい基準で選ばれて精霊王になれた場合にはこれを受け継がれる。だから最初に精霊王の証って言ったの。これに自分の魔力を常時注ぎ続けて、魔法発動時にはこれを使うってこと。魔力の貯蔵庫でもあるんだよ」

 今までの精霊王は常に持っている訳じゃなかったらしい。俺の場合、魔力量を増やし過ぎて自分の中にあると危ないから常に扇に流してるって感じかなぁ。だから魔法は扇を操作して使えるんだよー。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

記憶喪失の転生幼女、ギルドで保護されたら最強冒険者に溺愛される

マー子
ファンタジー
ある日魔の森で異常が見られ、調査に来ていた冒険者ルーク。 そこで木の影で眠る幼女を見つけた。 自分の名前しか記憶がなく、両親やこの国の事も知らないというアイリは、冒険者ギルドで保護されることに。 実はある事情で記憶を失って転生した幼女だけど、異世界で最強冒険者に溺愛されて、第二の人生楽しんでいきます。 ・初のファンタジー物です ・ある程度内容纏まってからの更新になる為、進みは遅めになると思います ・長編予定ですが、最後まで気力が持たない場合は短編になるかもしれません⋯ どうか温かく見守ってください♪ ☆感謝☆ HOTランキング1位になりました。偏にご覧下さる皆様のお陰です。この場を借りて、感謝の気持ちを⋯ そしてなんと、人気ランキングの方にもちゃっかり載っておりました。 本当にありがとうございます!

幼女に転生したらイケメン冒険者パーティーに保護&溺愛されています

ひなた
ファンタジー
死んだと思ったら 目の前に神様がいて、 剣と魔法のファンタジー異世界に転生することに! 魔法のチート能力をもらったものの、 いざ転生したら10歳の幼女だし、草原にぼっちだし、いきなり魔物でるし、 魔力はあって魔法適正もあるのに肝心の使い方はわからないし で転生早々大ピンチ! そんなピンチを救ってくれたのは イケメン冒険者3人組。 その3人に保護されつつパーティーメンバーとして冒険者登録することに! 日々の疲労の癒しとしてイケメン3人に可愛いがられる毎日が、始まりました。

好きでした、さようなら

豆狸
恋愛
「……すまない」 初夜の床で、彼は言いました。 「君ではない。私が欲しかった辺境伯令嬢のアンリエット殿は君ではなかったんだ」 悲しげに俯く姿を見て、私の心は二度目の死を迎えたのです。 なろう様でも公開中です。

美しい姉と痩せこけた妹

サイコちゃん
ファンタジー
若き公爵は虐待を受けた姉妹を引き取ることにした。やがて訪れたのは美しい姉と痩せこけた妹だった。姉が夢中でケーキを食べる中、妹はそれがケーキだと分からない。姉がドレスのプレゼントに喜ぶ中、妹はそれがドレスだと分からない。公爵はあまりに差のある姉妹に疑念を抱いた――

美少女に転生して料理して生きてくことになりました。

ゆーぞー
ファンタジー
田中真理子32歳、独身、失業中。 飲めないお酒を飲んでぶったおれた。 気がついたらマリアンヌという12歳の美少女になっていた。 その世界は加護を受けた人間しか料理をすることができない世界だった

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

全能で楽しく公爵家!!

山椒
ファンタジー
平凡な人生であることを自負し、それを受け入れていた二十四歳の男性が交通事故で若くして死んでしまった。 未練はあれど死を受け入れた男性は、転生できるのであれば二度目の人生も平凡でモブキャラのような人生を送りたいと思ったところ、魔神によって全能の力を与えられてしまう! 転生した先は望んだ地位とは程遠い公爵家の長男、アーサー・ランスロットとして生まれてしまった。 スローライフをしようにも公爵家でできるかどうかも怪しいが、のんびりと全能の力を発揮していく転生者の物語。 ※少しだけ設定を変えているため、書き直し、設定を加えているリメイク版になっています。 ※リメイク前まで投稿しているところまで書き直せたので、二章はかなりの速度で投稿していきます。

処理中です...