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第二章 再会

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 ◇

「ランスロットくん、そこは強く」
「そっちの子は演技は上手だからもっと大きい声で」
「……本当は僕の仕事なんですけどね」
「だって気になっちゃって。でもみんなすごい。俺が言えばすぐ良くなってる」

 十月に入り、本格的に学園祭の準備が始まった。俺たち二年一組はこうして演劇の練習をする傍らでしっかり魔法の練習もしている。最初に演技のことで口を出したとき、俺の言う通りにしたら見違えるように良くなるって盛り上がっちゃって、結果俺がこうして演技の指導をしてるんだよ。
 もちろんセインくんと相談しつつ、流れや全体的なことに関してはセインくんが、個人的なものは俺が指示を出すようになってしまった。

 その間に役者じゃない人や今出番がない人は精霊たちと魔法の練習をしてる。俺が力を貸すって話になった後、万が一倒れたりしてはいけないと思って頑張ったんだよ。限界まで魔法を使っては回復するまで待つって言うのを繰り返した。少しは魔力の回復速度が上がったんじゃないかなと思う。

「精霊王直々に指導してくださっているのですから、意欲が上がっているというのもあるでしょうね」
「セインくん、火と水は同時に出せるようになった?」
「難しいですね。一応できなくはないのですが一瞬が限界です」

 セインくんは監督で魔法を使う機会はないけど、それでも良いから教えてほしいって言うからこうしてみんなの演技を見る合間に練習してる。

 いまは俺のクラスがステージを使える時間なんだけど、ステージに立っているのは「光の王子」であるランスロットくんと、そのパートナーにあたる……まあシンデレラ役の女の子、それから意地悪な継母と姉役の五人だけ。
 この五人は重要人物だから魔法より演技を優先。演技が出来るようになったらそこに魔法も合わせていって……と言うようになる予定。

 ある程度演技が出来るようになってからの方が進めやすいだろうと話し合った結果だねー。

「ヒロイン役の子。そのシーンは気付かれるかどうかくらいに声を震わせた方が良い。この気付かれるかどうかってところが大事だよ」
「気付かれないのなら不要ではないのですか?」
「ほんの少しの工夫が合わさることでガラッと印象が変わるんだよー。確かに今言った所だけ変えても大した意味はないんだけどね」
「なるほど……分かりましたわ。ありがとうございます!」

 役決めまでは演技とはいえ貴族令嬢が他のご令嬢にいじめられるシーンなんて嫌じゃないのかなって思ってたんだけど、王子役と同じくらい人気があった。この世界特有の妙な価値観。貴族制度以外は前世にそっくりで緩い所が多いってやつが見事に発揮されてる。

「ルー、こっちはどんな感じ?」
「順調ですよ。皆様が筋が良いのもあると思いますけど、ナギサ様の魔力は全属性でしょう?僕達は一つの属性しか使えないですからどうしても教え方が偏ったりします。ですが全属性のナギサ様が魔力を貸している形になっていますから、魔力そのものに魔法の使い方が染みついていると言うか……ナギサ様の魔力そのものが取扱説明書…みたいな?」
「取扱説明書って……」

 どんな例え?すごい独特じゃない?よく分からないけど順調そうならそれで良いかなぁ。
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