上 下
108 / 230
第二章 再会

35

しおりを挟む
「んー……良いんじゃないの?俺に異存はないよ。メルとルナは大人の姿になれるよね」

 メルとルナ、火の下位精霊と地の下位精霊は夫婦だ。同じ種族と言えど、属性が違う精霊が夫婦になることは珍しい。それでも、シルフのように他の種族と結婚したり、過去にも数えるほどしかない水と火の精霊が結婚するよりは珍しくないが。

 おれ、サラマンダーはありがたいことにナギサ様に大精霊の地位をもらっている。とは言っても、出世などではなく生まれた瞬間から決まっていたのだが。

 火の大精霊なら火属性の精霊を生むことができる。シルフが言ったメルと言うのはおれが作り出した精霊だ。下位精霊でありながら中位精霊をも圧倒できるほどの力を持っている。おれの腹心として動いてもらっている忠実で信頼のおける奴だ。

「練習開始はいつからになりますか?」
「そうだねぇ……劇の練習はもう少し先になるけど、魔法の練習は早めに始めた方が良いから……明日相談してみるよ。どんな風に教えるかだけ決めておいてくれるかなぁ?」
「はい」

 魔法は発動する際、自動的に魔法陣が展開される。精霊は生まれた時からナギサ様の記憶によって全ての魔法陣の構成を暗記しているが精霊が祝福、あるいは契約したパートナーはその魔法陣の構成を覚える必要がある。暗記しなくても発動は出来るが、威力やスピードは格段に落ちてしまう。

 逆に言うと精霊のパートナーがいて魔法陣の構成を覚え、コントロールが出来さえすれば誰にでも魔法が扱えるというわけだ。ただその構成を覚えることとコントロールすること、そして何より精霊とパートナーを組むのが大変だな。

 いくら大精霊と言えど精霊王には敵わない。努力次第で強さも変わるらしいがナギサ様は精霊王ということを差し引いても別格。なにせ努力を苦と思わないのだからな。

 人族でもエルフ族でも魔族でも精霊族でも。努力を苦と思う人の方が圧倒的に多いのは同じだ。楽しむなんて以ての外。前世のナギサ様も特別な環境で生きていたと知っているが、あの記憶が流れてきたときはかなり混乱したのを覚えている。
 転生前のナギサ様も努力を苦と思わない方だったが、転生後は異常だ。この一年、好きに過ごしていただけのように思えるが暇があれば魔法を行使していた。どれだけ練習すればあんなになるのか、おれには全く想像がつかない。

 だからおれ達大精霊が教えるよりナギサ様が教える方が良いと思ったがそれは面倒らしい。ナギサ様が面倒と言うのなら仕方ないな!
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

記憶喪失の転生幼女、ギルドで保護されたら最強冒険者に溺愛される

マー子
ファンタジー
ある日魔の森で異常が見られ、調査に来ていた冒険者ルーク。 そこで木の影で眠る幼女を見つけた。 自分の名前しか記憶がなく、両親やこの国の事も知らないというアイリは、冒険者ギルドで保護されることに。 実はある事情で記憶を失って転生した幼女だけど、異世界で最強冒険者に溺愛されて、第二の人生楽しんでいきます。 ・初のファンタジー物です ・ある程度内容纏まってからの更新になる為、進みは遅めになると思います ・長編予定ですが、最後まで気力が持たない場合は短編になるかもしれません⋯ どうか温かく見守ってください♪ ☆感謝☆ HOTランキング1位になりました。偏にご覧下さる皆様のお陰です。この場を借りて、感謝の気持ちを⋯ そしてなんと、人気ランキングの方にもちゃっかり載っておりました。 本当にありがとうございます!

幼女に転生したらイケメン冒険者パーティーに保護&溺愛されています

ひなた
ファンタジー
死んだと思ったら 目の前に神様がいて、 剣と魔法のファンタジー異世界に転生することに! 魔法のチート能力をもらったものの、 いざ転生したら10歳の幼女だし、草原にぼっちだし、いきなり魔物でるし、 魔力はあって魔法適正もあるのに肝心の使い方はわからないし で転生早々大ピンチ! そんなピンチを救ってくれたのは イケメン冒険者3人組。 その3人に保護されつつパーティーメンバーとして冒険者登録することに! 日々の疲労の癒しとしてイケメン3人に可愛いがられる毎日が、始まりました。

好きでした、さようなら

豆狸
恋愛
「……すまない」 初夜の床で、彼は言いました。 「君ではない。私が欲しかった辺境伯令嬢のアンリエット殿は君ではなかったんだ」 悲しげに俯く姿を見て、私の心は二度目の死を迎えたのです。 なろう様でも公開中です。

美しい姉と痩せこけた妹

サイコちゃん
ファンタジー
若き公爵は虐待を受けた姉妹を引き取ることにした。やがて訪れたのは美しい姉と痩せこけた妹だった。姉が夢中でケーキを食べる中、妹はそれがケーキだと分からない。姉がドレスのプレゼントに喜ぶ中、妹はそれがドレスだと分からない。公爵はあまりに差のある姉妹に疑念を抱いた――

美少女に転生して料理して生きてくことになりました。

ゆーぞー
ファンタジー
田中真理子32歳、独身、失業中。 飲めないお酒を飲んでぶったおれた。 気がついたらマリアンヌという12歳の美少女になっていた。 その世界は加護を受けた人間しか料理をすることができない世界だった

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

全能で楽しく公爵家!!

山椒
ファンタジー
平凡な人生であることを自負し、それを受け入れていた二十四歳の男性が交通事故で若くして死んでしまった。 未練はあれど死を受け入れた男性は、転生できるのであれば二度目の人生も平凡でモブキャラのような人生を送りたいと思ったところ、魔神によって全能の力を与えられてしまう! 転生した先は望んだ地位とは程遠い公爵家の長男、アーサー・ランスロットとして生まれてしまった。 スローライフをしようにも公爵家でできるかどうかも怪しいが、のんびりと全能の力を発揮していく転生者の物語。 ※少しだけ設定を変えているため、書き直し、設定を加えているリメイク版になっています。 ※リメイク前まで投稿しているところまで書き直せたので、二章はかなりの速度で投稿していきます。

処理中です...