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第2章 亜麻色の光
24 挑戦するだけでも
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「それは……」
アリスは否定するかな。俺が前世から考えていたことも、そのために起こそうとしている行動についても。否定されて意思を曲げる気はないけど。
「すごく、良いと思うよ」
「……え」
「私ね、ずっと心配してたの。直人くんからも良く相談を受けていたし、お兄ちゃんもいつもナギサのことを心配していたんだよ。『渚は自分の人生を諦めているんじゃないか』ってね」
「……そこまで諦めてはなかったけど?」
「分かってる。でも周りからはそう見えたの。悲観するとは違う、だけど自分自身の人生にでさえも達観しているように。やりたいことを好きなだけやって思うままに生きている、周りにはそう見えているはずだとナギサは思っていたでしょう? 赤の他人ならそう見えるだろうけど、私のようにナギサの近くにいた人なら葛藤していることくらい分かっていたよ?」
冗談……ではないね。他人の口から聞くとこうも情けない話だとは思わなかったよー。たしかに学びたいことはなんでも学んで、興味を持ったことは自分が納得するまで調べ尽くして……そんな風に思うままに生きてたよ。でもアリスが言うのとは少し違って、そういうことは本当にやりたいって思ったからやってた。周りにそう見せかけるためだけではない。それは間違いない。
跡取りなら将来云々は関係なく、たくさん学んで良い。むしろその方が良いと思えたから縛り付ける必要がなかった。だからそこに関しては本当にやりたくてやってただけ。
「悩んでいるのは知っていても、背負うものの重さが違う私たちが無責任に口出しするわけにもいかなかった。だからずっと黙っていたけれど、ナギサが自分から変わりたいって言うなら応援するしかないよね!」
「気にしなくて良かったのに。むしろあの時の俺は理不尽なくらい口を出されて、怒られるくらいの方が効果もあったと思うよー?」
「うん、そうかもしれないね」
でもそういうのって後から気付くものじゃない? と首を傾げて言うアリス。たしかに、それも一理あるね。後は俺が言い出しにくい雰囲気を作っていた可能性もある。
「まあ要するにこれからは俺も頑張ろうかなって話。人間も精霊も、すぐには変われないから時間はかかるだろうけどね。自分の情けないところというか、黒歴史というか、そんな話をしちゃって恥ずかしいけど」
「うーん……私、いつも思うんだけど、ナギサはもっと弱点や不出来なところがあっても良いと思うの。完璧すぎてある意味不気味だよ? それが長所であるのは間違いないけれど」
「ひどくない? 俺は弱点を見せたらすぐに付け込まれる世界にいたんだから、それは仕方ないんじゃないの? 財閥もだけど、芸能界って恐ろしいところなんだよねぇ……たった一度のミスや失態で消えて行った人が何人いることやら。カメラが向いてるときは穏やかかもしれないけど、一度カメラが離れたらヤバいんだから。もはや二重人格だよ」
あと、俺にできることが多いのは単純に学ぶことが好きだから。スペックを上げるためにやってたわけじゃない。ついでに言うと、できないことは本当にどれだけ努力してもできないよ。たとえば料理とか。しっかり不出来な部分もある。
「で、そんな中一番成功していたのは誰だったかな。私は素の性格に見せかけ、実際には色々と計算して振舞うナギサの腹黒さが一番怖いと思うんだけど? かなり黒くないと生きていけない世界なのに、そんな人達ばかりの世界で一人だけ妬みや嫉みを簡単にあしらうのだから」
あしらうだなんて人聞きが悪いね、アリスは。俺はなにもしてないよー。悪評を広めるとか、仕事の邪魔をするとか、いじめをしてくるとか。そんな初歩的なことしかできない奴らのために俺がまともに動くわけなくない? 世の中にはもっと恐ろしいものがあるんだよ。そして俺はお話しをしただけであって、他にはなにもしていないからね?
それをそのままアリスに言うと、一度目を閉じて深呼吸した後、天使の笑みで後退った。解せないよね。
アリスは否定するかな。俺が前世から考えていたことも、そのために起こそうとしている行動についても。否定されて意思を曲げる気はないけど。
「すごく、良いと思うよ」
「……え」
「私ね、ずっと心配してたの。直人くんからも良く相談を受けていたし、お兄ちゃんもいつもナギサのことを心配していたんだよ。『渚は自分の人生を諦めているんじゃないか』ってね」
「……そこまで諦めてはなかったけど?」
「分かってる。でも周りからはそう見えたの。悲観するとは違う、だけど自分自身の人生にでさえも達観しているように。やりたいことを好きなだけやって思うままに生きている、周りにはそう見えているはずだとナギサは思っていたでしょう? 赤の他人ならそう見えるだろうけど、私のようにナギサの近くにいた人なら葛藤していることくらい分かっていたよ?」
冗談……ではないね。他人の口から聞くとこうも情けない話だとは思わなかったよー。たしかに学びたいことはなんでも学んで、興味を持ったことは自分が納得するまで調べ尽くして……そんな風に思うままに生きてたよ。でもアリスが言うのとは少し違って、そういうことは本当にやりたいって思ったからやってた。周りにそう見せかけるためだけではない。それは間違いない。
跡取りなら将来云々は関係なく、たくさん学んで良い。むしろその方が良いと思えたから縛り付ける必要がなかった。だからそこに関しては本当にやりたくてやってただけ。
「悩んでいるのは知っていても、背負うものの重さが違う私たちが無責任に口出しするわけにもいかなかった。だからずっと黙っていたけれど、ナギサが自分から変わりたいって言うなら応援するしかないよね!」
「気にしなくて良かったのに。むしろあの時の俺は理不尽なくらい口を出されて、怒られるくらいの方が効果もあったと思うよー?」
「うん、そうかもしれないね」
でもそういうのって後から気付くものじゃない? と首を傾げて言うアリス。たしかに、それも一理あるね。後は俺が言い出しにくい雰囲気を作っていた可能性もある。
「まあ要するにこれからは俺も頑張ろうかなって話。人間も精霊も、すぐには変われないから時間はかかるだろうけどね。自分の情けないところというか、黒歴史というか、そんな話をしちゃって恥ずかしいけど」
「うーん……私、いつも思うんだけど、ナギサはもっと弱点や不出来なところがあっても良いと思うの。完璧すぎてある意味不気味だよ? それが長所であるのは間違いないけれど」
「ひどくない? 俺は弱点を見せたらすぐに付け込まれる世界にいたんだから、それは仕方ないんじゃないの? 財閥もだけど、芸能界って恐ろしいところなんだよねぇ……たった一度のミスや失態で消えて行った人が何人いることやら。カメラが向いてるときは穏やかかもしれないけど、一度カメラが離れたらヤバいんだから。もはや二重人格だよ」
あと、俺にできることが多いのは単純に学ぶことが好きだから。スペックを上げるためにやってたわけじゃない。ついでに言うと、できないことは本当にどれだけ努力してもできないよ。たとえば料理とか。しっかり不出来な部分もある。
「で、そんな中一番成功していたのは誰だったかな。私は素の性格に見せかけ、実際には色々と計算して振舞うナギサの腹黒さが一番怖いと思うんだけど? かなり黒くないと生きていけない世界なのに、そんな人達ばかりの世界で一人だけ妬みや嫉みを簡単にあしらうのだから」
あしらうだなんて人聞きが悪いね、アリスは。俺はなにもしてないよー。悪評を広めるとか、仕事の邪魔をするとか、いじめをしてくるとか。そんな初歩的なことしかできない奴らのために俺がまともに動くわけなくない? 世の中にはもっと恐ろしいものがあるんだよ。そして俺はお話しをしただけであって、他にはなにもしていないからね?
それをそのままアリスに言うと、一度目を閉じて深呼吸した後、天使の笑みで後退った。解せないよね。
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