【第2章完結】最強な精霊王に転生しました。のんびりライフを送りたかったのに、問題にばかり巻き込まれるのはなんで?

山咲莉亜

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第2章 亜麻色の光

21 逃げる精霊王

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「ほんと、いつも思うんだけどこの世界は日本? 地球? とそっくりだから良いよねぇ……前世の知識も役に立つし、貴族社会のくせに爵位以外の縛りはほとんどないしさー。でも前世なら絶対あり得ないようなこともあるから面白い。俺は精霊王に転生してすごくラッキーだったかも」

 なにせ勉強がはかどる。精霊王の宮には必ず書庫があるし、禁書室以外は保管されている書物も宮ごとに違う。それにね、宮が王都と同じくらい広いから逃げやすいんだよ。

 俺は今、精霊たちから逃げ回っている。昨日からずっと。なんでかと言うと、一昨日アリスと再会してから精霊達が俺から色々話を聞きだそうと追い回してくるんだよ。だから各地の宮を転々としながら読書してる。普通に勉強も兼ねているけど、この世界のことをもっと知っておきたいんだよねー。どうやら俺は転生前の記憶が一部欠けているみたいだから。

 最近は俺でも知らなかった、新事実を聞くことが多い。精霊王がそれでは駄目だからね。下位の精霊でさえ把握していることを精霊王が把握していないなんて王としてあり得ない。
 国や世界を揺るがすなにかが起こった時、一番動くことになるのは恐らく俺。仲間を守るためでもあるけど、なんの罪もない人が死んだりするのは俺達だって気分が良いものではないからさ。俺が動けば大抵のことは解決する。だからその時しっかり役に立てるよう学んでおきたい。

「ん、誰? 気付くの早くない? 結構頑張って気配消してたのになー」
「僕です。まだ逃げ回っていたのですか」
「ルー? なにしに来たの? ここは相性悪いでしょ」
「一応緊急事態ですので。王都で精霊が暴れようとしていると聞きましたから」
「一応って……普通にヤバめじゃない? なんでそんなことになってんの」
「三日経てばナギサ様の恋人の話も広まります。アリス様を妬んだ人間の女性達が悪口を言ったんですよ。それを偶然耳にした精霊が怒りまして。ナギサ様の恋人となった以上アリス様も仲間ですし、大精霊であるシルフ様のご息女でもありますから」

 シルフのこと、もう精霊は知っているんだねぇ。まあ俺の記憶は精霊に伝わることもあるし、時間の問題だと思ってたけどさ。今まで何年も隠し通していた割に知られるのが一瞬だったね。
 それにしてもアリスの悪口って、なに言ってくれてるの? ルーの言う通りアリスはもう仲間も同然だから不快なのは一緒だろうし、形だけ伝えに来たって感じだから俺も無視して好きにさせれば良いかなぁ? まあアリスは悪口や陰口程度で気に病むような性格でもないんだけど。

「念のため向かってください。見殺しにしても構いませんけど体裁を保つために。……まあそれも別にどうでも良いですが」
「聞こえてる聞こえてる。体裁もどうでもいいなら行く必要なくない? あーでも、人が死んだら傷付くのは言われた本人であるアリスか。……なんて言ってたの?」
「さあ? 僕は報告を受けただけですから詳細は分かりません」

 ……王都の方は騒ぎになってるね。元々耳は良いけど、風魔法を使えば国内の音くらいは大体全部聞こえるから便利で助かる。でもどうしよ、行こうかな? 行かなくて良いかな?

「んー……様子を見て決めよっか。ルーもついてきて」
「承知致しました」
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