94 / 241
第2章 亜麻色の光
20 大精霊の会議と戦いの予兆
しおりを挟む
◇
「シルフは認めるのか? 自分の娘だろ?」
「なんで知っているのですか」
「ナギサ様の記憶から知ったんだよぉ」
「なるほど、だから僕が既婚者で子がいることも知っているのですね。たしかに娘ですけど相手はナギサ様ですし、認めない理由がないでしょう」
精霊王に恋人ができた。それは精霊の中ではすぐさま周知のこととなった。なにせ精霊は情報が早い。よって、当事者の一人であるシルフのテリトリーである風の宮に大精霊四人は集まっていた。
二人はただの恋人とはいえ、間違いなく将来結婚するであろう仲だ。ナギサが知っているのか定かではないが、大精霊はこうして定期的に会議のようなものを開く。情報交換などもあるが大抵はナギサの話だ。
ナギサの未来の妻。それはつまりアリスが将来的に自分たちの主人になるということ。当人達が思う以上に精霊王の結婚というのは重大な話だ。
恋人ができました。はい、結婚します。……とはいかないのが精霊王というもの。アリスは学力面でも運動面でも、人柄や容姿だって十分にナギサに釣り合う。それでも大精霊は色々と把握しておかないといけないのだ。
「あのナギサ様が祝福をしたのですよ。親の贔屓目をなしにしても可愛くて優秀な娘ですが、ナギサ様は今まで精霊以外に祝福を与えたことがありません。それなのになんの躊躇いもなく祝福していたようですから、ナギサ様のお気持ちは疑いようがないとは思いませんか?」
「ぼ、ぼくもそう思う……」
「ナギサ様に限って一時の気の迷い、なんてことはないだろうしな!」
「そうねぇ。お互いに本気ならわたし達が言うことはなにもないよぉ」
「でしたらこの話は終わりですね。ルーが言うにはあのお方も認めておられるそうですし、近い内に皆でお祝いしましょう」
「う、うん……」
そもそも精霊王───自分達の主人が決めたことを配下である精霊がとやかく言う権利はないし、言うつもりもない。色々言っているが結局、自分達はナギサが幸せなら十分だと思っているのだ。
どこまでも精霊は精霊王たるナギサのもので、ナギサによって生かされているのだから。
◇
「どこまでも使えない奴らだな。ああも簡単に精霊王に見つかりやがって。せっかくチャンスをやったというのにそれを無駄にするとは愚かだな。まあ良い、奴らは捨て駒だ。人間の王弟? エルフの王妹? 魔王の右腕? だからなんだ。所詮は俺の口車に乗せられたあげく、作戦を失敗して捕まるような奴らだ。いずれこうなる運命だったのだろう」
まだまだ手段は残っている。精霊王を殺すための。
◇
「シルフは認めるのか? 自分の娘だろ?」
「なんで知っているのですか」
「ナギサ様の記憶から知ったんだよぉ」
「なるほど、だから僕が既婚者で子がいることも知っているのですね。たしかに娘ですけど相手はナギサ様ですし、認めない理由がないでしょう」
精霊王に恋人ができた。それは精霊の中ではすぐさま周知のこととなった。なにせ精霊は情報が早い。よって、当事者の一人であるシルフのテリトリーである風の宮に大精霊四人は集まっていた。
二人はただの恋人とはいえ、間違いなく将来結婚するであろう仲だ。ナギサが知っているのか定かではないが、大精霊はこうして定期的に会議のようなものを開く。情報交換などもあるが大抵はナギサの話だ。
ナギサの未来の妻。それはつまりアリスが将来的に自分たちの主人になるということ。当人達が思う以上に精霊王の結婚というのは重大な話だ。
恋人ができました。はい、結婚します。……とはいかないのが精霊王というもの。アリスは学力面でも運動面でも、人柄や容姿だって十分にナギサに釣り合う。それでも大精霊は色々と把握しておかないといけないのだ。
「あのナギサ様が祝福をしたのですよ。親の贔屓目をなしにしても可愛くて優秀な娘ですが、ナギサ様は今まで精霊以外に祝福を与えたことがありません。それなのになんの躊躇いもなく祝福していたようですから、ナギサ様のお気持ちは疑いようがないとは思いませんか?」
「ぼ、ぼくもそう思う……」
「ナギサ様に限って一時の気の迷い、なんてことはないだろうしな!」
「そうねぇ。お互いに本気ならわたし達が言うことはなにもないよぉ」
「でしたらこの話は終わりですね。ルーが言うにはあのお方も認めておられるそうですし、近い内に皆でお祝いしましょう」
「う、うん……」
そもそも精霊王───自分達の主人が決めたことを配下である精霊がとやかく言う権利はないし、言うつもりもない。色々言っているが結局、自分達はナギサが幸せなら十分だと思っているのだ。
どこまでも精霊は精霊王たるナギサのもので、ナギサによって生かされているのだから。
◇
「どこまでも使えない奴らだな。ああも簡単に精霊王に見つかりやがって。せっかくチャンスをやったというのにそれを無駄にするとは愚かだな。まあ良い、奴らは捨て駒だ。人間の王弟? エルフの王妹? 魔王の右腕? だからなんだ。所詮は俺の口車に乗せられたあげく、作戦を失敗して捕まるような奴らだ。いずれこうなる運命だったのだろう」
まだまだ手段は残っている。精霊王を殺すための。
◇
126
お気に入りに追加
604
あなたにおすすめの小説

異世界で生きていく。
モネ
ファンタジー
目が覚めたら異世界。
素敵な女神様と出会い、魔力があったから選ばれた主人公。
魔法と調合スキルを使って成長していく。
小さな可愛い生き物と旅をしながら新しい世界で生きていく。
旅の中で出会う人々、訪れる土地で色々な経験をしていく。
3/8申し訳ありません。
章の編集をしました。

神に異世界へ転生させられたので……自由に生きていく
霜月 祈叶 (霜月藍)
ファンタジー
小説漫画アニメではお馴染みの神の失敗で死んだ。
だから異世界で自由に生きていこうと決めた鈴村茉莉。
どう足掻いても異世界のせいかテンプレ発生。ゴブリン、オーク……盗賊。
でも目立ちたくない。目指せフリーダムライフ!
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

異世界転生した時に心を失くした私は貧民生まれです
ぐるぐる
ファンタジー
前世日本人の私は剣と魔法の世界に転生した。
転生した時に感情を欠落したのか、生まれた時から心が全く動かない。
前世の記憶を頼りに善悪等を判断。
貧民街の狭くて汚くて臭い家……家とはいえないほったて小屋に、生まれた時から住んでいる。
2人の兄と、私と、弟と母。
母親はいつも心ここにあらず、父親は所在不明。
ある日母親が死んで父親のへそくりを発見したことで、兄弟4人引っ越しを決意する。
前世の記憶と知識、魔法を駆使して少しずつでも確実にお金を貯めていく。

ボッチの少女は、精霊の加護をもらいました
星名 七緒
ファンタジー
身寄りのない少女が、異世界に飛ばされてしまいます。異世界でいろいろな人と出会い、料理を通して交流していくお話です。異世界で幸せを探して、がんばって生きていきます。
能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?
火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…?
24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

お願いだから俺に構わないで下さい
大味貞世氏
ファンタジー
高校2年の9月。
17歳の誕生日に甲殻類アレルギーショックで死去してしまった燻木智哉。
高校1年から始まったハブりイジメが原因で自室に引き籠もるようになっていた彼は。
本来の明るい楽観的な性格を失い、自棄から自滅願望が芽生え。
折角貰った転生のチャンスを不意に捨て去り、転生ではなく自滅を望んだ。
それは出来ないと天使は言い、人間以外の道を示した。
これは転生後の彼の魂が辿る再生の物語。
有り触れた異世界で迎えた新たな第一歩。その姿は一匹の…

転生した体のスペックがチート
モカ・ナト
ファンタジー
とある高校生が不注意でトラックに轢かれ死んでしまう。
目覚めたら自称神様がいてどうやら異世界に転生させてくれるらしい
このサイトでは10話まで投稿しています。
続きは小説投稿サイト「小説家になろう」で連載していますので、是非見に来てください!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる