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第二章 再会

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 桜井家と深真家は親同士が親友で昔から交流があった。私の産まれた深真家は日本屈指の大財閥で政界とも深い関りがあった。私は兄がいたから今思うと比較的自由に生きていたと思う。でもその時は様々な習い事や勉強が忙しくて幼いながらも心に余裕がなかった。人よりちょっと勉強や運動ができて、家もお金があって。そんな私に近づいてくるのは大抵深真との関わりを持ちたい下心丸出しの人たちばかり。
 その時はまだ七歳で、その歳にしては大人びている方だったかもしれない。心身ともに疲弊するばかりの日々にうんざりしてきたいたある日のことだった。

 その日は初めて親同士で交流のある桜井家の嫡男、桜井渚と対面する日だった。なんでも、学ぶことが大好きだそうで私と同じ七歳だが時には分刻みのスケジュールをこなしているそう。それで私と会える機会がなかったのだと言っていた。

「はじめまして、深真のお嬢様。私は桜井渚です。これから仲良くしてくださいね」

 まだ少年と言う年齢ではあるものの、すでに渚の作り物めいた顔立ちはそこにあった。正直、あまりの美しさに見惚れた。こんなに綺麗な人は見たことがない、これからも彼以上に美しい人は現れないと確信するほどに綺麗だった。もちろん今の渚と違って幼さからくる可愛さとかはあったんだけど、それを差し引いてもやっぱり綺麗だって言えるくらいだった。

 桜井家のことは習ったしお父さんたちからも話を聞いていたから知っていた。

 桜井家は皇族の傍系に連なる血筋だそうだが、ほぼ末席のようなものなのであまり公表されていない。知っている人もいたけど、皇族の血筋と言うことすら霞むほどに有名なこと。
 桜井家は大財閥。深真家も大財閥だけどそれは日本屈指という程度。桜井家は世界屈指のいや、「世界一」の大財閥と言って差し支えなかったと思う。

 世界中のメディアを手掛けていて、各国の首脳たちですら下手に扱えない存在。桜井渚はそんな家の次期当主であり、桜井グループの次期社長だった。

 おまけに渚は信じられないほどの顔の良さ。全員異常なまでに美形な一家だったけど、その中でも渚は群を抜いていた。成長していくにつれてその顔の美しさには拍車がかかっていくし、声だって少年らしい高さのものから、ちょうど良い高さだけど砂糖菓子に蜂蜜を一瓶まるごとかけたような甘い声に変化し。高身長でスタイル抜群で、他の人がやると絶対にだらしなく見えるような動作でもキラキラ輝いているような幻覚が見えるくらい優雅で。

 とにかく発するオーラが正常ではなかったの。
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