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第二章 再会

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「話を戻すけど、聞き出したいことってなに?」
「おまえ、本当に彼女はいなかったのか?彼女がいたなら妹と合わせても好きになられたりしないだろうが」
「まだその心配をしてたの?彼女はいなかったよ」

 同じような質問を一体何回されたことか……そんなに合わせたくなかったのなら、俺に会えるか聞く前に妹ちゃんに断りを入れれば良かったんじゃないのー?

「じゃあやっぱり会わせるのはやめ……」
「えー、それは困るなお兄ちゃん。私、春からずっと会いたいって言ってたよね?」
「っ!」
「……アリス。遅かったな」
「先生に呼び出されちゃって。そちらはお友達?」
「セイン·シュリーです」
「ランスロット·リーメントだ。よろしく」
「アリスと申します。いつも兄がお世話になっております」

 ベンチに座る俺たちに話しかけてきたのは茶色ではなく、亜麻色の長い髪と宝石のような瞳を持ったひとりの美少女だった。
 ガラス細工のように透明感があって良く通る綺麗な声も、明るい印象を受ける話し方も、普通ならくっつくくらいに近づかないと分からない微かな春の花のような香りも全部───

「あり、す………なんで……」
「久し振りだね、渚。元気にしていたかな?まさか私の事忘れちゃってたりしないよね?」
有栖ありす…?」
「あ、ちゃんと覚えていたようで良かったよ。そう、深真有栖みさなありすだよ」
「っ、有栖!」

 ────俺の、たった一人愛しい女の子だった。

 深真有栖は深真財閥のご令嬢。俺の幼馴染で家族のようなものだったけど、中学の卒業式の日に俺が告白して付き合うようになったんだよ。お互いの立場的にもちょうど良かったからそのまま婚約者になったんだけど、俺が死んだから会えなくなった。

 なのに、どうして……どうして有栖がここにいるの?

「なんで、なんで!?なんで有栖がここに…!?」
「──渚が死んじゃって、誰もが絶望したよ。桜井様ご一家もナギサの友人も、仕事上のライバルだった方も。世界中が大騒ぎなんてものじゃなかった。もちろん私もその一人だったよ。毎日を泣いて過ごしてた。だけどね、渚はそんなこと望まないかなって思ったら私も頑張らなきゃってなった。私は渚以外に考えられなかったから恋人を作らず結婚もせず生きて行こうと思っていたんだけど……」
「…だけど、なに?」
「二十三歳で死んじゃった。女の子を庇って轢かれちゃって……ふふ、渚と同じように誰かを庇って死ぬなんて、流石は幼馴染だと思っちゃった。後悔はしてなかったよ。女の子を助けることが出来たし、どうせ渚がいない世界で生きるのは辛いもの。でも気付いたら見知らぬ場所にいてね。色々あって私の家族は転生のことを知っているんだよ」
「………」

 やっぱり大騒ぎだったんだね。それは仕方ないけど、でも……

「なんか色々混乱してるけど…………ずっと一緒にいるって、約束したのに。なのに俺だけ先に死んじゃって、ごめん……ごめんね、有栖」
「渚が死んじゃって辛かったのは本当。でもそのことで責めるのはおかしいって分かってるよ。それとね?良い話と残念な話があるの。どっちから聞きたい?」
「残念な方」
「分かった。渚が死んだあと、直人くんは自分を責めてたよ。育ちが良いからグレるとは違うけどすごく荒れてた。日に日に衰弱していって見ていられなかった。お兄ちゃんもすごく心配してた」

 やっぱり……思った通りだった。直人くんには本当に申し訳ない。本当に、謝っても謝りきれないくらい…

「それから良いお話なんだけど、直人くんはちゃんと立ち直ったよ。渚の分まで頑張るって。それからの直人くんは本当にすごくてね、十八歳で継いだけどすぐに優秀なことで有名になった。それからのことは死んじゃったから分からないけど、直人くんのことはもう心配いらないよ」
「年齢が合わなくない?」
「時間の流れが違うみたい」
「そう……」

 そっかぁ。直人くん、良い社長になれたかな?きっと俺より良い跡継ぎだったと思うよ。直人くんは俺のことで少し劣等感があるようだったけどああいうタイプこそ伸びるから。
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