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第二章 再会

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「上手くまとまって良かったです」

 あの後、何度も話し合いを重ねて演目は「光の王子と小さなガラスの靴」に決まった。まあつまり「シンデレラ」だね。内容自体はシンデレラとほとんど違いがない。小さな子供でも知っているくらい有名な話だけど、これをアレンジして魔法を使うシーンを増やす。「光の王子と小さなガラスの靴」の世界は魔法が存在するという設定にする。

 裏方も魔法を活用する。二年一組は生徒数二十名ほど。成績でクラスが変わるから一クラスの人数もバラバラでね。シンデレラならちょうどいい人数って言うのもあって、これに決まったんだよ。

「取り敢えず九月いっぱいは役決めや個人の方の準備ですね。学園祭は十一月上旬、本格的な練習は十月からになるでしょう」
「三年一組も劇だな。「精霊王と囚われの姫」だそうだ」
「……精霊王?」
「ああ。お前をモデルにした話だ。前に言っただろ、この学園で教師生徒問わず一番人気なのはナギサ。二番目と大きく差をつけてダントツ一位の人気だからな。くくっ」
「笑い事じゃない、んだけど……」

 なんなの、「精霊王と囚われの姫」って。そこ普通は精霊王じゃなくて王子様じゃない?なんで俺がモデル?俺じゃなくてももっと王子様っぽい人がいるはずなんだけどねぇ。それに囚われの姫って…

「一応聞いておくけど、囚われの姫のモデルは…?」
「俺の妹だ。女子で一番人気は妹、学園内で……いや、うちのカフェの手伝いとかで知れ渡っているから国中か。この国で妹の顔を知らねえ奴はほとんどいないと思うぞ。贔屓目とかなしで」
「そうですね」
「え、うそ。もしかしてランスロットくんも知ってる?俺は顔知らないし多分すれ違ったこともないよ」

 聞いてみるとまさかの肯定。エリオットくんの妹ちゃんってそんなに有名だったんだね?え、ほんとに知らなかったんだけどー。

 この国で知らない人はほとんどいないって……一体どれだけ可愛い子なんだろうねぇ?エリオットくんのお母さんが経営するカフェは王室御用達で知名度が高いのは知ってるけど、それによって妹ちゃんまで有名になっているとは。

「そんなにすごい子ならなおさら、なんで俺の恋人役なの?題名を聞く限りだと恋愛ものだと思うんだけど、その認識で合ってるよねー?どう考えても釣り合わなくない?」
「恋人役で合ってるぞ。たしかに俺の妹は可愛いからお前と並んで霞まねえだろ。だが「霞まない」と言うだけで、お前以上ではねえな」
「逆に言うとナギサ様と並んで釣り合うのは彼女くらいということでしょう」
「気を使わなくて良いよー」

 だってそれは言い過ぎじゃない?俺はそんなに綺麗な顔をしているとも思わない。そりゃあ芸能活動が出来るだけあってマシな方だとは思うよ?だけどそんなの関係ない。なにせ前世も今世も俺の周りには美形しかいないからねぇ。今世ならセインくんやランスロットくん、エリオットくんもだし精霊たちも。他にも美形ばっかり。
 それに前世の俺は芸能人。芸能界には顔が良い人なんて掃いて捨てるほどいるからねー。そして極めつけは家族。両親揃って二十代前半くらいにしか見えないくらい顔が良かった。若々しすぎて俺や直人くんと兄弟に間違えられることも頻繁にあったくらいには。

 最後に直人くん。あれはもう国宝級で美形なんてレベルではなかったね。作り物のように左右対称な顔だった。俺はアイドル以外の芸能活動はほぼすべてやってたけど、逆に直人くんは顔良し声良しスタイル良しで売ってる大手アイドルグループのセンターだったからね?小学校六年生で。デビュー前だったけど将来的には確定してる。

 そんな美形に囲まれて育った俺の目が肥えるのも仕方ないでしょー。だから俺はそんなに自分の顔が良いとは思えないわけですよ。その代わり色々とスペック的な面には自信があるけど……
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