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第一章

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「ねえ……ひとつ聞きたいことがあるんだけど、精霊王って本当に仕事はないの?みんなが知ってて俺が知らないことはほとんどないけど、記憶が欠けてる可能性があるから」
「き、聞いたこと……ない」
「おれも聞いたことないな!」

 ウンディーネやシルフも同じように頷く。課外授業の話の前に考えていたことを聞いてみたんだけどやっぱり知らないかぁ……

「アリサ様やローランド様の代に生きてた精霊はもういないしねぇ…なにか引っかかるんだけどなー」

 精霊王って他の種族と違ってかなり自由でしょ?実質全種族のトップは俺みたいなものになってるけど、なんの意味もなく強いだけの生き物を創るかな普通。世界が俺たち精霊を創って、その王を最強にしたのに理由がないとは思えないんだよねぇ。世界にとって必要な強さってことだよね。なのに仕事も役割も特になしだとおかしいでしょ。

 普通に考えれば何か裏があるとしか思えない。俺が転生者でなければ決定的な欠点も他人に劣るところもない。俺は転生者だから弱点があるけどさー……そう考えたらアリサ様やローランド様はこの世界にとって異質なんだよ。なんの意味もなく最強な生き物がいたら世界が壊れるでしょ?その人が暴走したら一瞬で終わりなんだよー?

 ……世界がそんな簡単なことも分かってないとは、とてもじゃないけど思えない。

 ◇

『そんなに最強なのはそなただけだよ、ナギサ。転生前だってそなたは異端だった。我はいつも同じ強さを持つ精霊王しか作らない。そこからどれだけ力を伸ばすかは本人の努力次第だ。そなたは努力の天才。天性の才能があるわけではないんだよ。唯一他と違うのは学ぶことを楽しみ、喜び、努力を苦と思わないその心だ』

 世界が会話出来るのは精霊王だけ。世界と直接の繋がりがあるのは精霊王だけだから。そのため、精霊王の考えていることはすべて世界に伝わっている。常に。
 ただ、ナギサは心を完全に「無」に出来るため、ナギサが嫌がれば思考を読むことは出来ないのでナギサの思考が伝わってくるのはナギサが心を読まれても問題ないと判断しているからだろう。たまに遮断されるときは大体ろくでもないことを仕出かす。

『自力で精霊王にも役割があるのだと気付いたのは、この世界が出来て以来そなただけ。どこをどう取ってもそなたは異常だ。どんな生き物にも弱点と言うものはある。転生前のそなたはすでに化け物以外の何物でもなかった。……転生したらしたでそれに拍車がかかり、化け物の範疇に収まらなくなった。…が、弱点ができただけまだマシか』

 優秀であれば優秀であるほど普通の人の気持ちが理解し辛くなるもの。だけどナギサは違う。努力をほんの少しでも苦と思うのならもっと常人だったはず。生まれながらの天才ではないから常人の気持ちも理解できる。だからこそ───

『──そなたほど、残酷な者は…いない』

 ◇
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