上 下
68 / 236
第一章 転生

66

しおりを挟む
「ナギサ様ぁ、あそこまで言わなくても良かったんじゃない?」
「んー、あれくらい言わないと意味ないでしょ?」
「どれだけ言っても、そんなに急に変われるものではないと思うんだけどぉ……」
「だからこそだよ」

 そう簡単に直せることではないからこそ、あんな風に強く言ったんだよ。少し脅すくらいしないとどうせ後回しになってそのまま忘れられてしまう。だけど国や命の危機となれば早めに動こうとする人は少なくないはずだよー。

 国王であるジェソンさんとか、その辺りはちゃんとしてるからねぇ。精霊殺しの呪いの時のは手痛い失敗だったけど、普段は国民想いの王として人気が高い。精霊に頼りすぎ、というのは今までの国王にも非がある。

「ウンディーネ、ナギサ様の決定にあれこれ口を出すものではありませんよ。いつでもこの国から離れられると言ったのも、チャンスをあげると言ったのも、どちらもナギサ様の本心でしょう。事実でもあります。親である前にナギサ様は僕達の主であることを、忘れてはいけませんよ」
「……ごめんなさい。シルフの言う通りだったよ」
「気にしなくて良いよー。シルフもそんなに言わないであげて。別に悪気があったわけじゃないし、ウンディーネの意見を言っただけでしょ。俺が君達の主だというなら、臣下の意見を聞くのも役目の一つだよ」

 どっちの言うことも一理あるよねぇ。言い過ぎたとは思ってないけど。

 ……ふと思ったんだけどさ、精霊王って何かおかしくない? 大精霊には仕事があるのに精霊王はない。いや、書類仕事とかはあるんだけど、その中には大精霊四人に割り振ることが可能なものもあるから王の仕事量にしては少ない方だと思う。精霊を生むことは仕事に入るのかもしれないけど、それは彼らも一緒だよね。
 俺が知らないことがある? 過去の精霊王は知っていて俺は知らないこと。あるいは転生したことでそれまでの記憶の一部が欠けたか……

 大精霊達に聞く……は、却下だねぇ。知っていることがあるならすでに教えてくれているはずだし。だとすると機密事項? 守秘義務がある内容? 精霊王は他言無用な情報が結構あるし。

 それなら書庫の禁書室かあるいは……世界に直接聞くしかないか………あー、これがただの俺の想像でしかなくて、本当に今の仕事内容だけって説もあるよねぇ。判断材料に欠ける、かなぁ。

「……ナギサ様? 聞いておられます?」
「え、なに?」
「僕達の話、聞いていましたか?」
「ごめん、聞いてなかった。何の話?」

 急に顔の前で手を振られて驚いたけど、ずっと何かの話をしていたらしい。

「ナギサ様が通い出した学園は毎年冬休み中に、『全学年混合課外授業』と言うものがあります。王家の直轄領で三日間行われるのですが、ナギサ様は参加されるのですか? ナギサ様のご予定は僕達も早めに知っておく必要がありますので教えて頂けると助かるのですが」
「全学年混合課外授業? ……それが何なのか俺には分からないけど、学園の行事なら参加するしかないんじゃない? 別に参加しない理由もないし」

 どんな流れでこの話になったの? 俺が聞いていたまでの話から大分飛んでるけど。それと全学年混合課外授業ってなに? 三日間もあるの? 初めて知ったよ。

「分かりました。課外授業のことですが、将来有望な人材を探すためにあるそうですよ。王立学園ですからね」

 だからわざわざ王家の直轄領で三日間も過ごすっていう大規模な授業なんだね。いつから始まったのか知らないけど、きっと色々と考えられた上での行事なんだろうな。
しおりを挟む
感想 28

あなたにおすすめの小説

底辺おっさん異世界通販生活始めます!〜ついでに傾国を建て直す〜

ぽっちゃりおっさん
ファンタジー
 学歴も、才能もない底辺人生を送ってきたアラフォーおっさん。  運悪く暴走車との事故に遭い、命を落とす。  憐れに思った神様から不思議な能力【通販】を授かり、異世界転生を果たす。  異世界で【通販】を用いて衰退した村を建て直す事に成功した僕は、国家の建て直しにも協力していく事になる。

前世で八十年。今世で二十年。合わせて百年分の人生経験を基に二週目の人生を頑張ります

京衛武百十
ファンタジー
俺の名前は阿久津安斗仁王(あくつあんとにお)。いわゆるキラキラした名前のおかげで散々苦労もしたが、それでも人並みに幸せな家庭を築こうと仕事に精を出して精を出して精を出して頑張ってまあそんなに経済的に困るようなことはなかったはずだった。なのに、女房も娘も俺のことなんかちっとも敬ってくれなくて、俺が出張中に娘は結婚式を上げるわ、定年を迎えたら離婚を切り出されれるわで、一人寂しく老後を過ごし、2086年4月、俺は施設で職員だけに看取られながら人生を終えた。本当に空しい人生だった。 なのに俺は、気付いたら五歳の子供になっていた。いや、正確に言うと、五歳の時に危うく死に掛けて、その弾みで思い出したんだ。<前世の記憶>ってやつを。 今世の名前も<アントニオ>だったものの、幸い、そこは中世ヨーロッパ風の世界だったこともあって、アントニオという名もそんなに突拍子もないものじゃなかったことで、俺は今度こそ<普通の幸せ>を掴もうと心に決めたんだ。 しかし、二週目の人生も取り敢えず平穏無事に二十歳になるまで過ごせたものの、何の因果か俺の暮らしていた村が戦争に巻き込まれて家族とは離れ離れ。俺は難民として流浪の身に。しかも、俺と同じ難民として戦火を逃れてきた八歳の女の子<リーネ>と行動を共にすることに。 今世では結婚はまだだったものの、一応、前世では結婚もして子供もいたから何とかなるかと思ったら、俺は育児を女房に任せっきりでほとんど何も知らなかったことに愕然とする。 とは言え、前世で八十年。今世で二十年。合わせて百年分の人生経験を基に、何とかしようと思ったのだった。

神々の仲間入りしました。

ラキレスト
ファンタジー
 日本の一般家庭に生まれ平凡に暮らしていた神田えいみ。これからも普通に平凡に暮らしていくと思っていたが、突然巻き込まれたトラブルによって世界は一変する。そこから始まる物語。 「私の娘として生まれ変わりませんか?」 「………、はいぃ!?」 女神の娘になり、兄弟姉妹達、周りの神達に溺愛されながら一人前の神になるべく学び、成長していく。 (ご都合主義展開が多々あります……それでも良ければ読んで下さい) カクヨム様、小説家になろう様にも投稿しています。

憧れのスローライフを異世界で?

さくらもち
ファンタジー
アラフォー独身女子 雪菜は最近ではネット小説しか楽しみが無い寂しく会社と自宅を往復するだけの生活をしていたが、仕事中に突然目眩がして気がつくと転生したようで幼女だった。 日々成長しつつネット小説テンプレキターと転生先でのんびりスローライフをするための地盤堅めに邁進する。

神に異世界へ転生させられたので……自由に生きていく

霜月 祈叶 (霜月藍)
ファンタジー
小説漫画アニメではお馴染みの神の失敗で死んだ。 だから異世界で自由に生きていこうと決めた鈴村茉莉。 どう足掻いても異世界のせいかテンプレ発生。ゴブリン、オーク……盗賊。 でも目立ちたくない。目指せフリーダムライフ!

みんなで転生〜チートな従魔と普通の私でほのぼの異世界生活〜

ノデミチ
ファンタジー
西門 愛衣楽、19歳。花の短大生。 年明けの誕生日も近いのに、未だ就活中。 そんな彼女の癒しは3匹のペット達。 シベリアンハスキーのコロ。 カナリアのカナ。 キバラガメのキィ。 犬と小鳥は、元は父のペットだったけど、母が出て行ってから父は変わってしまった…。 ペットの世話もせず、それどころか働く意欲も失い酒に溺れて…。 挙句に無理心中しようとして家に火を付けて焼け死んで。 アイラもペット達も焼け死んでしまう。 それを不憫に思った異世界の神が、自らの世界へ招き入れる。せっかくだからとペット達も一緒に。 何故かペット達がチートな力を持って…。 アイラは只の幼女になって…。 そんな彼女達のほのぼの異世界生活。 テイマー物 第3弾。 カクヨムでも公開中。

若返ったおっさん、第2の人生は異世界無双

たまゆら
ファンタジー
事故で死んだネトゲ廃人のおっさん主人公が、ネトゲと酷似した異世界に転移。 ゲームの知識を活かして成り上がります。 圧倒的効率で金を稼ぎ、レベルを上げ、無双します。

クラス転移から逃げ出したイジメられっ子、女神に頼まれ渋々異世界転移するが職業[逃亡者]が無能だと処刑される

こたろう文庫
ファンタジー
日頃からいじめにあっていた影宮 灰人は授業中に突如現れた転移陣によってクラスごと転移されそうになるが、咄嗟の機転により転移を一人だけ回避することに成功する。しかし女神の説得?により結局異世界転移するが、転移先の国王から職業[逃亡者]が無能という理由にて処刑されることになる 初執筆作品になりますので日本語などおかしい部分があるかと思いますが、温かい目で読んで頂き、少しでも面白いと思って頂ければ幸いです。 なろう・カクヨム・アルファポリスにて公開しています こちらの作品も宜しければお願いします [イラついた俺は強奪スキルで神からスキルを奪うことにしました。神の力で学園最強に・・・]

処理中です...