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第一章 転生

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 さっきまでの騒ぎとは一転、会場はシンと静まり返った。突然の俺の登場に驚いたのかなー?あとすこーしだけ圧?

「ナ、ナギサ……様…」

 辛うじてそれだけ言うとジェソンさんも黙り込んだ。俺は別にこの状況をどうにかしようと思って出てきただけなんだけどねぇ。そんなに過剰に反応しなくても良いんじゃない?

「ねー、ここにいる全員、なんで誰も魔法を使えなかったかちゃんと理解してる?あ、心配しなくても君たちに危害を加えるつもりはないよ?ただ忠告しておこうと思ってねぇ」
「パニックになっていた、精神が落ち着いていなかったからですか?」
「そう、そうだよ。理由はあと二つある」

 王弟殿下、ジェフリーさんだったかな。やっぱりこの人はちゃんとしてるみたいだねぇ。

「魔法は精霊の力。祝福でも契約でもその力は精霊のものなんだから練習もなく使えるはずがない。一つ目の理由はそれ。二つ目は今回のことをいましめにしてもらおうと思ったんだよ」
「戒め…?」
「うん、戒め。君たちは精霊の力に頼り過ぎなんだよ。俺たちがこの国から手を引けば一瞬で侵略されるくらいにはねぇ。さっきみたいなことが起こってもすぐに対処したりその対策をしたり。君たちはもっと自分たちの力で国を発展させるべきだ。今日のことは偶然だったけどいずれ同じようなことを体験してもらおうと思っていたから俺たち精霊は手を貸さなかったんだよー。
俺たちに頼るなとは言わないけど頼り過ぎず、自分たちの力で何かすると言うことをそろそろ覚えな。まだ俺たちはこの国から離れない。チャンスはあげるけどあまりに変化がないようなら考え直すからね?
………俺が言いたかったのはそれだけだよ」

 クレアちゃんに言ったのと同じようなことを告げると重々しい空気が流れた。時間的に夜会はお開きだろうし、そろそろ帰ろうかな。

「俺はもう帰るよ。俺が言ったことは人間族に限らず、王族だけに言ったことでもない。この場にいる全員に向けた言葉だから他人事だと思わないことだよー。良く考えてみてねぇ」

 じゃーね、といつも通り手を振って退場する……と見せかけてナイジェルの姿になって、バレないようにクレアちゃんたちの所に戻った。これでも一応今は男爵令息ですからねぇ。先に退場しちゃうと後が怖いんだよー。

 しばらく呆然としていたけどハッと我に返ったジェソンさんはお開きの言葉をかけて各自解散となった。

「ナイジェル……あんた派手にやりすぎじゃないのかい?」
「なんのことでしょう?私はずっとここで大人しくしておりましたよ。それにしても精霊王様は帰るのが早いですね。大精霊様たちだってまだいらっしゃるのに」
「君の特技は惚けることなんだね。よく分かったよ」
「心外ですねぇ」

 口調が少し戻っているよと指摘されたので気のせいでしょうと返しておいた。我ながら完璧(?)な返しだね。
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