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第一章 転生

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「……すごいことになってますね」

 僕、水の中位精霊ルーは、同じ中位精霊で風属性のランと一緒に遊びに行っていました。遊びに行くと言ってもお互いの近況報告くらいのものなので昼過ぎには終わり、ちょうど今ナギサ様の管理する水の宮に帰って来たところです。ところが宮に帰っても誰の声もせず、どこに行ったのかと探していると中庭の方からはしゃぎ声が聞こえてきました。

 何があったのかと思い、中庭を訪れてみるとナギサ様とナギサ様のご学友、精霊たちで遊んでいた──ということです。

 そこで見たのはやはりナギサ様の異質さ。この世界では魔法で精霊王の右に出る者はいないので、ナギサ様は世界一強いと言っても過言ではありません。ですがそれだけ。精霊王だからと言って頭が良いわけでも運動が出来るわけでも、容姿が良いわけでもありません。

 過去の精霊王お二人は見目麗しく優秀だったとお聞きしていますが、あくまでも常識の範囲内。対してナギサ様は断言できるほどに異質。容姿はこの世の美辞麗句をすべて並べても足りないくらいですし、知識量は書庫の書物をたくさん読んだから、で済まされるレベルではないです。魔法の腕は超一級品。発動スピードも規模も魔力量、魔力の回復速度、効果などすべてにおいて。
 それにナギサ様は魔法を使わなくてもお強いです。剣の腕前だけでなく弓や、扱いが非常に難しいと言われている銃だって扱える。身体能力に関しても言うまでもなく追いつける人は皆無。ご自分の実力は分かっておられるようですが、それでもまだ僕からしたら謙遜しているように思えてしまいます。

 弱点らしい弱点のないお方。強いて言うならマイペースすぎることと極度の甘いもの好き。……怒ると尋常じゃなく恐ろしいのもありますか。

 実際今も皆様を楽しそうに追いかけまわしているようですが、やはり足がお速い。本気ではないのは見て分かりますがそれでも速い……というか、身軽ですね? あの、いつものことですが改めて見ると動きが軽すぎますね……?

 優秀でいらっしゃるのは臣下として喜ばしい限りではありますが、いかんせん『優秀』のレベルではないのです。一種の化け物でしょうか。ナギサ様の親にあたる世界にとっても彼は脅威なのではないかと思います。世界、などという普通なら手も足も出ないであろうお方でも、ナギサ様だけは下手に扱うことが出来ないのでしょうね。多少の(この場合はかなりの)問題を起こしても口を出さないところから思うに、大間違いではないはずです。

「まあ僕は遠慮しませんけど」

 僕が止めなければナギサ様はどこまでも自由に過ごされますので。彼を止められる方は朴以外にいないでしょうし。
 ……と、まあ『優秀』を軽く超える精霊王様ではありますが、同年代(?)のご友人と楽しそうにしておられる内は大丈夫でしょう。

 ナギサ様はいつも疲れておられる。これはご本人ですら気付いていないのだと思いますが原因は恐らくナギサ様が眠る度に見ておられる夢。
 なぜだか分かりませんが、いつも同じ夢を見ておられるようなのです。時々その辺で寝ておられるときに寝言を聞きますが、その言葉がいつも同じ。それが何なのか僕には分からないのですが、表情からして幸せな夢なのだろうとは思います。でも幸せな夢だからこそ起きた時に辛い、と言う感じでしょうか?

 僕にはどうすることも出来ませんが、ナギサ様には早く伴侶をお作りになってほしいところです。疲れを癒して頂きたいのと彼を制御してほしいのと、ついでにたまには仕事をするように言ってほしいので。ナギサ様は愛する相手の言うことは基本聞くタイプだと思いますし。そもそも伴侶をお作りになるかすら分かりませんけど……
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