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第一章 転生

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「みんな準備できたね。普通にビーチで泳ぐのと水の宮の敷地内で泳ぐの、どっちがいい? 敷地内でも十分な広さはあるよ」
「こんな機会二度とないかも知れないから敷地内で遊ばせてもらわないか?」
「俺は賛成」
「僕も同じことを思っていました」
「そう? じゃ、中庭に行こっか」

 中庭って言っても陸じゃなくて海中なんだけどねー。この宮は敷地内で泳ぐなら空気があって呼吸できるし、かなり深い所にあるから魚や珊瑚が綺麗に見えるよ。
 海中は海中でも俺の結界の中だからねぇ。ここなら溺れる心配もない。
 結界内でも俺が招待しない限り見つけることすらできない宮は、魚もその存在が最初からないかのように壁をすり抜けて入ってくる。

 少し歩くと中庭に到着した。深さがあるにも関わらず太陽の光が届く透明度の高い海水、様々な小魚にカラフルで宝石の如く輝く珊瑚。いつ見ても同じ景色ということがないこの中庭は何度見ても幻想的で飽きない。
 事実、セインくんにランスロットくん、エリオットくんの三人は中庭の綺麗な景色に目を奪われていた。

「綺麗でしょ?」
「そうですね。こんなに素敵なものは中々見られません。……兄上たちにもお見せしたい……」

 後半は小声で呟いた、独り言のつもりだった言葉なんだろうけど俺には聞こえてしまった。そんなに気に入ってもらえたならこの宮を管理する俺としてはとても嬉しいねー。

 いつか招待してあげても良いかもね。

「鬼ごっこって知ってる? 俺もほとんどやったことないんだけど、それでも俺が知ってる遊びはこれくらいしかないんだよね」
「知ってますよ」
「じゃあ俺が鬼ね。範囲は中庭のみ、じゃあ逃げて」
「ちょっ、急すぎだろ!」

 逃げるように言って十秒のカウントを始めると急いで全員逃げて行った。それにしてもこの世界は鬼ごっこまであるのかぁ……過去に転生者でもいたのかな。さすがに似てるところが多すぎるよね、あとで調べてみよ。

「みんなおいでー」

 この宮にいる精霊たちを呼び出す。さっきはマカロンを作ってたけど、たぶんもう出来てるから暇してるんじゃない?
 それなら四人でやるより楽しいからみんな呼んだ方が良いよね。案の定暇していたみたいで、何をするか説明したら『王様から逃げろー!』とか言って、走るなり泳ぐなりして俺から離れて行った。

 中庭だけって言っても大分広さはあるんだよねぇ。精霊も合わせて二十人くらいかな? あまり早く捕まえてもつまんないから遊ぼ。

「じゃあ行くよー」
「……え!?」

 遊びだからね、魔法を使うなんて無粋なことはしないよ? だけど俺は泳ぎも走りも得意なんだよねー。遊びで無駄に体力を消費したくないから軽く走って追いかける。捕まえられないギリギリを責めて追えば反応が多種多様で本当に面白い。俺は鬼ごっこよりも反応を楽しむ方が好きだね。
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