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第一章 転生

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「大丈夫、全く問題ないよ……と言いたいところだけど、さいっあく!なんでぇ?全身痛いし頭痛いし吐き気がする………」

 これさぁ、魔力消費による症状なのー?精霊は風邪ひかないけど完全に風邪ひいた時の症状じゃない?ほんっと、勘弁してよー!熱はないけどさぁ!
 って言うか早く起きないと学校遅刻……じゃない、今日は休日だから父上の仕事が…でも今日は仕事ないって父さんが言ってたっけ……でもテレビの収録が…モデルの仕事………じゃなくて空手の大会……あ、そっか。体調悪いなら治癒魔法かければ良いんだった。

 や、違うそうじゃなくて…!あれ、待って。俺は死んだよね?でも転生したから……転生?そんな物語みたいなこと……

「ナギサ様ぁ!?だだ、大丈夫ぅ!?」
「……………」

 ………俺、いま記憶が混濁してたのかな……ウンディーネが治癒魔法かけてくれなかったら結構ヤバかったかも。

「ごめ、ん。ありがとウンディーネ」
「良いけど……どうしたのぉ?」
「いや、何でもないよー。ちょっと混乱しただけ」

 頭が割れるかと思った……なんで前世の記憶と混濁したの?しかも何の前触れもなく。…んー原因が分からないから考えるだけ無駄かな。それにしても、今思えば前世の俺は忙しい生活送ってたんだねぇ。家の仕事に公務に個人的な仕事、習い事に学校。いや、忙しすぎない?好きでやってたとは言え限度ってものがあるよねぇ?

 個人的な仕事っていうのはまあ人前に出る仕事だったね。俳優であり役者でありモデルであり声優でもあり。アイドルは拒否したからやってなかったけどねー。家の仕事と変わりがあったからやりやすかったんだよ。コネではなくスカウトだったけどさ。
 自分でも言うのもどうかと思うけど結構売れっ子。俺は何を目指してたんだろうねぇ?いや何も目指してないのか。将来は決まってたし。

「あ、ジェソンさんたち帰らないといけないよねー。転移魔法で送るけど良い?」
「は、はい。お願いします」

 じゃあ何かあったら教えてねって言ってそれぞれの住処や城に帰した。核を使った浄化が終わって半日くらい寝てたから今は昼前。たぶん今日の昼過ぎにはアルフォンスくんも王城に帰ることになる。静かになるかなぁ。

「俺も水の宮に帰るよ。みんなも帰っていいからねー。ウンディーネ、ルー、行こ」
「失礼します」
「じゃあねぇ」
「バイバーイ」

 ◇

「すみません、遅れました」
「いーよ。そんなに待ってないから」

 今日は約束していたようにみんなで遊びに行く。俺とセインくん、ランスロットくん、エリオットくんも予定が合ったので一緒に。
 あの断罪の日から早くも一週間。アルフォンスくんはすっかり元気になったのであの日の内に王城に帰った。また何かあったらすぐに言うよう言ってあるけどたぶん大丈夫。アルフォンスくんがいなくなったけど宮の中のにぎやかさは変わらなかったねぇ。最初は寂しそうにしてたのにいつでも会いに行けるからとか言って今ではもう気にしていない。

 夏休みに課題が出されるのは異世界でも変わらないらしく、二日くらいで全部終わらせてしまった。やっぱり夏休みだからか、海に泳ぎに来る人も多くて精霊たちもはしゃいでる。

 今日は王都で買い物でもしながらふらふらしようって話になってたかなー。

「そこは今来たばかりだって言うところじゃないか?」
「そう言う方がセインくんは気にするでしょ。少しだけ待ったのはほんとだし。それに今のは女の子とデートするときのセリフじゃない?」
「デートしたことあるのか?」
「逆にエリオットくんはないの?」
「そうだな。たしかにお前は精霊王ってことが国中に知れ渡ったがその美貌だからな、デートくらいするか」

 俺はデートしたことないよー。……この人生ではね。ああでも精霊たちと遊びに行ったりはするから一応デートしたことあるって言えるのかな?どうなんだろ。

「それより早く行くぞ。話をするなら店に入りたい。ここでは暑いからな」
「そうですね」

 たしかに暑いもんね。今日はお忍びだから貴族二人は高級だけどシンプルな装い、エリオットくんはお忍びも何もないし、俺はいつもとは違った服装をしていた。この世界、女性がズボンを履くという風習はあまりないみたいだけどブラウスなどのドレスやワンピースではない服も存在していた。男が着る服ならもう前世とほとんど変わらないね。

 服装的に目立たないと思っている彼らだが、まったくそんなことはない。セインは正統派王子様のような容姿でランスロットも美形な上に服装だけでは隠せない品の良さがある。エリオットは非常に整った顔立ちをしており、雑な話し方ではあるが育ちが良いのか仕草は綺麗。ナギサは言わずもがな。精霊王なのは誰もが分かるようになったし、そうでなくとも高位貴族である二人以上の品の良さを感じる。それに加えて顔もスタイルも声も良いとなれば注目を浴びないはずがなかった。

 目立つグループだがやはりナギサだけ格が違う。前世はモデルもやっていたので彼はこれでもファッションに詳しくてオシャレだ。それに容姿の良さも相まってかただの長ズボンに半袖ティーシャツというシンプル過ぎる服でも非常に絵になっていた。それこそマイペースに欠伸しているのを見て顔を赤らめる人が老若男女問わずそこら中にいるくらいには。
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