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第一章 転生
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「どうせ犯人を捕まえて復讐するまでは舞わないんだから大丈夫だよ。それまで魔力を温存しておけば魔力が尽きて死ぬことはないと思うし。それに、俺の魔力が歴代精霊王の中でも一番多いのは知ってるよねぇ?」
「もちろん知ってるよぉ? だけど心配するのは仕方ないでしょ? ナギサ様の決定なら文句は言わないけど……無理しないでねぇ?」
「うん」
俺の実力を一番分かっているはずの大精霊がここまで言うくらいに核を使った浄化は危険なんだよねー……でも生きてさえいればどうにでもなるし、枯渇寸前で倒れるくらいなら良いと思ってる。
「俺からの話はこれだけだよ。今日から四人に犯人の調査を命じる。でもそればっかりで他の精霊たちを蔑ろにはしないでねぇ? 時間はたっぷりあるんだから悟られることのないように緩やかな調査を。精霊を殺すことができる相手だから油断しないようにねー」
「分かりました」
「わかったよぅ」
「任せてくれ!」
「りょりょ、了解…しました……」
思い思いの返事に頷き、『じゃあ何か分かったら報告よろしくね。はい、解散』と言ってアルフォンスくんの眠る客間に足を運んだ。時間はたっぷりある、って言ったけど他の精霊が犠牲になる前になんとかしなきゃだからさ、実は密かに焦りを感じていたりもするんだよね……
呪いを掛けられたアルフォンスくんなら何か知ってるかな。
「入るねー」
「精霊王ナギサ様」
「あれ、起きてたのー?体の調子はどうかなぁ?」
「今は大丈夫です。このような姿で申し訳ありません。アルフォンス·ティルアードと申します。お目にかかれれて光栄でございます。二度に渡って救っていただいたこと、心より感謝申し上げます。僕が眠っている間などの話は全て聞こえていましたので」
おぉー、しっかりしてるねぇ。さすが王太子様だー。
「ナギサだよーよろしくねぇ。聞こえていたなら病気じゃなくて呪いだってことも知ってるよね。いきなりで申し訳ないけど呪いを掛けられた時のことは覚えてるー?」
「いえ。寝ている間に呪いを掛けられていたようで、重ね掛けされたのか二度目は偶然犯人が呪いを掛けるところを見かけました。動くことは出来なかったのですが……顔までは分かりませんでしたが、声と体格からして女性一人と男性二人なのではないかと思います」
「人間?」
「それどころではなかったので分かりません。ですが恐らく人間とエルフと魔族……精霊以外の全種族だと思います」
精霊以外の全種族? これはまた……三人だけかな。それとも他にもまだいる? 証拠としては不十分だね。でも呪いを掛けられた状況でここまで探れたのは純粋にすごいと思うよ。この子まだ十歳くらいだよねぇ?
人間の王族や貴族というのはしっかりしているものなのかなぁ……
「……分かった。情報提供ありがとう。しばらくは俺や精霊たちと一緒に暮らそうね。海中だけど宮の中には空気があるし、衣食住は保証できるよ。暇なら精霊と遊ぶか書庫もあるから読書してても良い。入られたら困る部屋は結界を張ってあるし見られたら困る本は禁書室に置いてるから好きに過ごしてくれていいよー。ただし、過度な運動は控えて出来る限り安静にしておくこと。まだ軽くしか浄化できてないからねぇ」
「はい。ありがとうございます」
「それと、体調が悪くなったりしたらすぐに教えてね。治してあげるから。呪いの浄化が進んできたら少しずつ運動量を増やそう。しばらく寝たきりで体力が落ちてるでしょ? 他にも何かあったら教えてね。したいこととかほしいものがあるなら俺に言って。俺に出来ることなら叶えてあげるよー。とにかく、遠慮する必要はないからそれは覚えておいて」
「あの……なぜ僕のためにここまでしてくださるのですか? ナギサ様には何の利もないと思いますが……」
「別に利益なんて求めてないからさ。君を預かった以上ストレスなく過ごさせてあげたいのと、呪いである以上どんな形でも精霊が関わってるから。あとは、子供は元気が一番だからかな」
そう。ほんとに大したことではないと俺は思ってるよー。人間の子供一人養うくらい容易なことだからねぇ。
「でも……」
「……一番の理由は、俺にも大好きで大切な弟がいたからね。事情があってもう二度と会えないんだけど、君くらいの子供だと姿が重なるから。余計なお世話かもしれないけど……だから本当、気にすることはないんだよー」
「そうでしたか……そこまでおっしゃるのでしたら自由にさせていただきます。しばらくの間、どうぞよろしくお願い致します」
◇
「皆さんおはようございます。今日から一年間、新しくこのクラスに入ることになった方を紹介しますね。どうぞ入ってください」
「はじめまして。ナギサと言います、よろしくねー」
春になり、六年生は卒業し新入生が入学してきました。成績ごとにクラスが変わるこの学園の二年一組には僕、セイン・シュリーも在籍しています。何とか成績次席の友人に抜かされることなく、一年生から二年生へと進級した僕のクラスには新しいクラスメイトが入ってきました。
基本的には貴族、優秀なら平民も入学することが出来るこの学園で途中の学年から、しかもトップのクラスに入ってくる方はいないだろうと思っていましたが……教室に入ってきたのは聞き覚えのある声、顔……そして名前の人物でした。
漆黒の髪に輝く深い青の瞳。すらっと長い手足に高身長、それに見合わない小顔。男らしい低さがあるものの砂糖菓子のように甘い声。のんびりしていてマイペースながらもカリスマ性を感じる口調に、常にうっすら浮かべている笑み。この世の美辞麗句はすべて彼のものだと言わんばかりの魅力ある容姿。
常に肌身離さず持っている扇で口元を隠し、挨拶をするそのイケメンに男女問わず時が止まったかのように彼を見つめています。
……どこを取っても僕の知り合いのすごい方にしか見えないのですが。見間違いでしょうか、彼がこんなところにいるはずがないですよね……?
「彼は貴族ではありませんが皆さん仲良くしてくださいね。どうぞ、お好きなところに座ってください」
連絡事項を聞き、教室から出て行く先生を見送ると途端に教室が騒めきだしました。授業前のこの時間は大抵授業準備をして、先生が来るまで友人と世間話をする方が多いのですが今日はいつもと違いました。見たことがないほどの美貌を持つ新しいクラスメイトの話で持ち切り。誰もが遠くから様子を伺っています。
な・ぜ・か! 僕のとなりの席に座った彼を。
「久しぶりーってほどでもないけど驚いたかな、セインくん?」
「あの、僕の知っているナギサ様でお間違いないでしょうか……? それとも別人でしょうか?」
「たぶん間違いじゃないよー。君に俺と同じ名前の知り合いがいるなら別人かもしれないけど」
「僕の知り合いにナギサという名前の方は一人しかいませんね」
「だよねぇ。調べたから知ってるー」
調べられたのですね、僕は。そしてこの方は精霊王ナギサ様でお間違いないのですか。そうですか。
「な、なんでここにいるのですか!?」
「なんでって入学したからだけどー」
長い睫毛に縁取られたぱっちり大きな目を瞬かせておっしゃいますが、絶対にそう言うことじゃないと分かっていて面白がっていますよね!? というか、この学園は十五から二十歳の人が通う学園ですが……あなた何歳ですか? 失礼なので聞けませんが百や二百ではないでしょう?
「前に言っていたのはこういうことでしたか……」
「そーだよ。これでいっぱい勉強教えてあげられるよねぇ?」
「そう、ですね……よろしくお願いします……」
僕の反対に座っていたライバルの友人に紹介すると不愉快そうに眉をひそめました。
「おい、お前平民だろ? あまりこういう事を言いたくないが、ここは王立の学園だ。目上の相手に対する態度には気を付けるべきじゃないのか。礼儀や常識も知らないのか?」
「ランスロット!」
「ふふ、確かに俺は平民だねぇ。でもさぁ、名乗りもしない相手にそんなこと言われたくないんだよね。礼儀や常識って言うならまずは自分の態度から見直すべきじゃないかな。それではただの感じ悪い人だよ」
彼が本当は人間の平民ではなく精霊王だと知っている僕からするとランスロットの態度の方が許せません。知らなかったで済む相手ではありませんからね。なので咎めようとしたのですが、僕が咎める前にナギサ様が彼の言葉に答えました。相変わらず誰に対しても同じ態度で接するようですが、それが嫌な感じに見えないのが彼だと思います。ランスロットは違うようですが、ナギサ様の言う通りなので素直……ではないですがちゃんと答えることにしたようですね。
「……俺はランスロット・リーメント。リーメント公爵家の三男で二学年の成績次席。精霊の祝福は受けてないし契約もしていない」
「さっきも言ったけど俺はナギサだよー。精霊は……ルー」
「何ですか? 僕がナギサ様を祝福しているのではなくナギサ様が……」
「ルー? 言ったら駄目だからね」
………たしかに中位精霊様がナギサ様を祝福しているのではなく、しているとすればナギサ様が中位精霊様に、でしょうね。
「はいはい、分かりましたよ。僕は精霊王様に命じられた仕事をしてきます」
「はいはーい。それでえっと、何の話だっけ?」
「中位精霊の……祝福?」
実際には逆なのでしょうけど、ナギサ様が中位精霊に祝福を受けていると聞いた周囲で様子を伺っていた人たちは驚いたように彼を凝視しました。精霊に祝福を受けること自体ほとんどないのに、中位精霊の祝福と聞いたら驚かずにはいられないのでしょう。ナギサ様が精霊王だと知られたら一体どんな騒ぎになるか……
「俺は言われた通りに名乗ったぞ。今度はお前が態度を改めろ」
「何のために?」
いきなり惚けるナギサ様。ランスロットを手の平の上で転がしていますね。自分に反発してくる人間を面白がっているのでしょう。
「セインのために決まってるだろう!」
「へー。セインくんは俺に態度を改めてほしいの? どうしてもと言うのなら直すのも考えますよ、シュリー様?」
「お、お、おやめください! 僕はいつも通りで構いません! ランスロットもそれ以上言わなくていいです!」
ナギサ様より偉くなったつもりはないです! 彼に敬語を使われるなど、恐れ多すぎて絶対に無理です!
「なんでだ、こいつの態度が悪いんだぞ? 学園は社交界の縮小版のようなものだ。お前は筆頭公爵家の令息なんだからせめて敬語くらいは使うべきだろう!」
「僕が良いと言っているのです!」
「何の騒ぎですか? 授業を始めますよ」
ヒートアップしそうでしたがタイミング良く先生が入ってきたので言い争いはそこで中断。話の続きは放課後に、ということになりました。
「もちろん知ってるよぉ? だけど心配するのは仕方ないでしょ? ナギサ様の決定なら文句は言わないけど……無理しないでねぇ?」
「うん」
俺の実力を一番分かっているはずの大精霊がここまで言うくらいに核を使った浄化は危険なんだよねー……でも生きてさえいればどうにでもなるし、枯渇寸前で倒れるくらいなら良いと思ってる。
「俺からの話はこれだけだよ。今日から四人に犯人の調査を命じる。でもそればっかりで他の精霊たちを蔑ろにはしないでねぇ? 時間はたっぷりあるんだから悟られることのないように緩やかな調査を。精霊を殺すことができる相手だから油断しないようにねー」
「分かりました」
「わかったよぅ」
「任せてくれ!」
「りょりょ、了解…しました……」
思い思いの返事に頷き、『じゃあ何か分かったら報告よろしくね。はい、解散』と言ってアルフォンスくんの眠る客間に足を運んだ。時間はたっぷりある、って言ったけど他の精霊が犠牲になる前になんとかしなきゃだからさ、実は密かに焦りを感じていたりもするんだよね……
呪いを掛けられたアルフォンスくんなら何か知ってるかな。
「入るねー」
「精霊王ナギサ様」
「あれ、起きてたのー?体の調子はどうかなぁ?」
「今は大丈夫です。このような姿で申し訳ありません。アルフォンス·ティルアードと申します。お目にかかれれて光栄でございます。二度に渡って救っていただいたこと、心より感謝申し上げます。僕が眠っている間などの話は全て聞こえていましたので」
おぉー、しっかりしてるねぇ。さすが王太子様だー。
「ナギサだよーよろしくねぇ。聞こえていたなら病気じゃなくて呪いだってことも知ってるよね。いきなりで申し訳ないけど呪いを掛けられた時のことは覚えてるー?」
「いえ。寝ている間に呪いを掛けられていたようで、重ね掛けされたのか二度目は偶然犯人が呪いを掛けるところを見かけました。動くことは出来なかったのですが……顔までは分かりませんでしたが、声と体格からして女性一人と男性二人なのではないかと思います」
「人間?」
「それどころではなかったので分かりません。ですが恐らく人間とエルフと魔族……精霊以外の全種族だと思います」
精霊以外の全種族? これはまた……三人だけかな。それとも他にもまだいる? 証拠としては不十分だね。でも呪いを掛けられた状況でここまで探れたのは純粋にすごいと思うよ。この子まだ十歳くらいだよねぇ?
人間の王族や貴族というのはしっかりしているものなのかなぁ……
「……分かった。情報提供ありがとう。しばらくは俺や精霊たちと一緒に暮らそうね。海中だけど宮の中には空気があるし、衣食住は保証できるよ。暇なら精霊と遊ぶか書庫もあるから読書してても良い。入られたら困る部屋は結界を張ってあるし見られたら困る本は禁書室に置いてるから好きに過ごしてくれていいよー。ただし、過度な運動は控えて出来る限り安静にしておくこと。まだ軽くしか浄化できてないからねぇ」
「はい。ありがとうございます」
「それと、体調が悪くなったりしたらすぐに教えてね。治してあげるから。呪いの浄化が進んできたら少しずつ運動量を増やそう。しばらく寝たきりで体力が落ちてるでしょ? 他にも何かあったら教えてね。したいこととかほしいものがあるなら俺に言って。俺に出来ることなら叶えてあげるよー。とにかく、遠慮する必要はないからそれは覚えておいて」
「あの……なぜ僕のためにここまでしてくださるのですか? ナギサ様には何の利もないと思いますが……」
「別に利益なんて求めてないからさ。君を預かった以上ストレスなく過ごさせてあげたいのと、呪いである以上どんな形でも精霊が関わってるから。あとは、子供は元気が一番だからかな」
そう。ほんとに大したことではないと俺は思ってるよー。人間の子供一人養うくらい容易なことだからねぇ。
「でも……」
「……一番の理由は、俺にも大好きで大切な弟がいたからね。事情があってもう二度と会えないんだけど、君くらいの子供だと姿が重なるから。余計なお世話かもしれないけど……だから本当、気にすることはないんだよー」
「そうでしたか……そこまでおっしゃるのでしたら自由にさせていただきます。しばらくの間、どうぞよろしくお願い致します」
◇
「皆さんおはようございます。今日から一年間、新しくこのクラスに入ることになった方を紹介しますね。どうぞ入ってください」
「はじめまして。ナギサと言います、よろしくねー」
春になり、六年生は卒業し新入生が入学してきました。成績ごとにクラスが変わるこの学園の二年一組には僕、セイン・シュリーも在籍しています。何とか成績次席の友人に抜かされることなく、一年生から二年生へと進級した僕のクラスには新しいクラスメイトが入ってきました。
基本的には貴族、優秀なら平民も入学することが出来るこの学園で途中の学年から、しかもトップのクラスに入ってくる方はいないだろうと思っていましたが……教室に入ってきたのは聞き覚えのある声、顔……そして名前の人物でした。
漆黒の髪に輝く深い青の瞳。すらっと長い手足に高身長、それに見合わない小顔。男らしい低さがあるものの砂糖菓子のように甘い声。のんびりしていてマイペースながらもカリスマ性を感じる口調に、常にうっすら浮かべている笑み。この世の美辞麗句はすべて彼のものだと言わんばかりの魅力ある容姿。
常に肌身離さず持っている扇で口元を隠し、挨拶をするそのイケメンに男女問わず時が止まったかのように彼を見つめています。
……どこを取っても僕の知り合いのすごい方にしか見えないのですが。見間違いでしょうか、彼がこんなところにいるはずがないですよね……?
「彼は貴族ではありませんが皆さん仲良くしてくださいね。どうぞ、お好きなところに座ってください」
連絡事項を聞き、教室から出て行く先生を見送ると途端に教室が騒めきだしました。授業前のこの時間は大抵授業準備をして、先生が来るまで友人と世間話をする方が多いのですが今日はいつもと違いました。見たことがないほどの美貌を持つ新しいクラスメイトの話で持ち切り。誰もが遠くから様子を伺っています。
な・ぜ・か! 僕のとなりの席に座った彼を。
「久しぶりーってほどでもないけど驚いたかな、セインくん?」
「あの、僕の知っているナギサ様でお間違いないでしょうか……? それとも別人でしょうか?」
「たぶん間違いじゃないよー。君に俺と同じ名前の知り合いがいるなら別人かもしれないけど」
「僕の知り合いにナギサという名前の方は一人しかいませんね」
「だよねぇ。調べたから知ってるー」
調べられたのですね、僕は。そしてこの方は精霊王ナギサ様でお間違いないのですか。そうですか。
「な、なんでここにいるのですか!?」
「なんでって入学したからだけどー」
長い睫毛に縁取られたぱっちり大きな目を瞬かせておっしゃいますが、絶対にそう言うことじゃないと分かっていて面白がっていますよね!? というか、この学園は十五から二十歳の人が通う学園ですが……あなた何歳ですか? 失礼なので聞けませんが百や二百ではないでしょう?
「前に言っていたのはこういうことでしたか……」
「そーだよ。これでいっぱい勉強教えてあげられるよねぇ?」
「そう、ですね……よろしくお願いします……」
僕の反対に座っていたライバルの友人に紹介すると不愉快そうに眉をひそめました。
「おい、お前平民だろ? あまりこういう事を言いたくないが、ここは王立の学園だ。目上の相手に対する態度には気を付けるべきじゃないのか。礼儀や常識も知らないのか?」
「ランスロット!」
「ふふ、確かに俺は平民だねぇ。でもさぁ、名乗りもしない相手にそんなこと言われたくないんだよね。礼儀や常識って言うならまずは自分の態度から見直すべきじゃないかな。それではただの感じ悪い人だよ」
彼が本当は人間の平民ではなく精霊王だと知っている僕からするとランスロットの態度の方が許せません。知らなかったで済む相手ではありませんからね。なので咎めようとしたのですが、僕が咎める前にナギサ様が彼の言葉に答えました。相変わらず誰に対しても同じ態度で接するようですが、それが嫌な感じに見えないのが彼だと思います。ランスロットは違うようですが、ナギサ様の言う通りなので素直……ではないですがちゃんと答えることにしたようですね。
「……俺はランスロット・リーメント。リーメント公爵家の三男で二学年の成績次席。精霊の祝福は受けてないし契約もしていない」
「さっきも言ったけど俺はナギサだよー。精霊は……ルー」
「何ですか? 僕がナギサ様を祝福しているのではなくナギサ様が……」
「ルー? 言ったら駄目だからね」
………たしかに中位精霊様がナギサ様を祝福しているのではなく、しているとすればナギサ様が中位精霊様に、でしょうね。
「はいはい、分かりましたよ。僕は精霊王様に命じられた仕事をしてきます」
「はいはーい。それでえっと、何の話だっけ?」
「中位精霊の……祝福?」
実際には逆なのでしょうけど、ナギサ様が中位精霊に祝福を受けていると聞いた周囲で様子を伺っていた人たちは驚いたように彼を凝視しました。精霊に祝福を受けること自体ほとんどないのに、中位精霊の祝福と聞いたら驚かずにはいられないのでしょう。ナギサ様が精霊王だと知られたら一体どんな騒ぎになるか……
「俺は言われた通りに名乗ったぞ。今度はお前が態度を改めろ」
「何のために?」
いきなり惚けるナギサ様。ランスロットを手の平の上で転がしていますね。自分に反発してくる人間を面白がっているのでしょう。
「セインのために決まってるだろう!」
「へー。セインくんは俺に態度を改めてほしいの? どうしてもと言うのなら直すのも考えますよ、シュリー様?」
「お、お、おやめください! 僕はいつも通りで構いません! ランスロットもそれ以上言わなくていいです!」
ナギサ様より偉くなったつもりはないです! 彼に敬語を使われるなど、恐れ多すぎて絶対に無理です!
「なんでだ、こいつの態度が悪いんだぞ? 学園は社交界の縮小版のようなものだ。お前は筆頭公爵家の令息なんだからせめて敬語くらいは使うべきだろう!」
「僕が良いと言っているのです!」
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