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第一章 転生

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「海の中……? そんなデタラメ、信じるわけがねェだろうが!」
「信じてくれないのかー」

 まあそんな気はしてたから良いんだけどね? いきなり海中にいると言われて信じる人の方が少ないだろうし。ちゃんと空気があって呼吸できるから尚更。

「王様! こんな奴ら早く追い出してー!」
「そうだね。早めに何とかしないとウンディーネが殴りかかってきそうだよー」
「心が真っ黒だしね!」

 精霊は穢れを嫌う。犯罪者なんかは心が穢れているのがほとんどなので、元々精霊の祝福を受けていたとしてもその力で悪いことをしようとすればいつの間にか祝福が消えてるなんてことも少なくない。

 強い精霊ほどその傾向も強いからつまり、俺が精霊の中でも一番穢れを嫌っているということになる。悪事に手を染めてたりすると雰囲気から穢れを感じるんだよね。遠くから見ても不快ですぐにでも排除したくなっちゃう。だから俺たち精霊の心の平穏のためにも、この国は穢れを完璧にとは言わないから出来るだけなくしてほしい。

 今回の件でその思いが強くなったから、そろそろ自分でも動いてみようかなーって思ってる。人間を装ってできるだけ上の立場に行きたいんだよね。そうすれば半年前の呪い(仮)のことも分かるかもだし。まあ身分は低くても何とかなるだろうけど。

「まあまあ、ちょっとだけ我慢してね」

 ルーよりは弱いけど同じく中位精霊であるリーを宥める。

「それで、君たちは人身売買のことを自首するつもりはあるかな?」
「自首だァ? そんなことするわけねェだろうがよ!」
「今すぐ自首するのなら減刑を申し出てあげるけどどうする? どっちにしても君たちが牢屋行きなのは確定事項だよー」

 そう伝えると馬鹿にしたように下品に笑い出した。この精霊に囲まれている状況で随分と余裕があるんだねぇ。見知らぬ場所でこんな風に堂々としていられるんだから拍手を送りたいよ。結局、自首をするつもりはないらしいね。まあいいよ。俺もさっきからずっと不快だったし正直なところ減刑は嫌だったんだよね。

「分かったよ。じゃあ騎士団のところに連れて行くね、証拠と一緒に」

 奴隷オークションの手続きみたいな書類をひらひらと見せると彼らの目の色が変わった。そして一斉に玉座に座る俺の方向かってきて奪おうとする。だけどね……?

「……こっちに来るな」

 俺が簡単に渡すわけないでしょ?

 距離が縮まれば縮まるほど、穢れた気配も近づいてくる。穢れを嫌う精霊の王がそれに耐えられるわけない。話すこと自体は普通にしているけど、どうしても嫌悪感が溢れ出してしまうんだよね。精霊も楽じゃないなと思う。さっき浄化したばかりなのにここまでって、一体どれだけ悪事を働いたのかなぁ?

 言葉と同時に扇を閉じるとまるで透明な壁にぶつかったかのように跳ね返され、そのまま後ろに倒れた。それもそうだよね。俺が結界を張ったんだし。これでもすこーし怒ってるんだよ。
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